ピース

今日君が僕の家に残していった、作りかけのパズルを捨てた。


途中まで作って「どうしてもピースが合わない」って拗ねてたっけ。


ねぇ、あれからどれくらいの時間が経ったろう?

戸棚の奥、埃をかぶったパズル1つ捨てることも出来なくて。


君と別れてから、柔らかい毛布、車の助手席、二人掛けのソファー、どれもすぐに君の香りは消えたのに、どうして未だに最後に見た君の泣き顔だけ、心の中から消えないんだ。


手を離したのは僕なのに、あの日泣いた君を抱き締めることも出来ず、見送ったのは僕なのに、どうして今さらこんなにも胸が苦しい。


もしまた誰かと出会って恋をして、一緒になったとしても、心の中にあるこの穴は消えないのかもしれない。

それはものすごく失礼で、哀しい事なのはわかっているけど、どうしても、自分ではどうにも出来ない。


泣くには時間が経ちすぎて、忘れるにはまだ記憶が鮮やかで、ただただ時間に押し流されてくような日々を過ごしている。


もう君とは戻れない。

僕の気持ちだけがあの日に置き去りの迷子のよう。

迎えに行って、せめて抱きしめられたらいいのに。


どうしても合わなかったピース。

君の面影。


もう届かない。


「君の事を今でも好きです。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る