精霊流し

僕が長崎に行った日は精霊流しの日だった


17時前には遠くから爆竹の音がして、潮風に乗った火薬の匂いを追いかけて街を歩いた


しばらくして日も落ちると街を通る舟の数は増え、爆竹の音が街を充たす


大きな音


沢山の人が行き交い、たまに上がる打ち上げ花火が空を染める


でも、


静かだ。


まだ日も沈まぬ夕暮れの街

大きな舟を見つけて写真を撮った。

隣に居た老婆も写真を撮っていたが、時折手に持ったハンカチで目を拭っていた。

老婆は泣きながら写真を撮っていた。

言葉なく、独り、何枚も、何枚も…


歩道橋の上、目を赤くして静かに舟を見送る少女


舟に掲げられた故人の遺影…


精霊流しは初盆を迎える家々が、故人の為に舟を流す行事だそうだ。


だからだろうか?

沢山の人、行き交う人いきれ、街を充たす爆竹の音

それでもなぜだか、街は静かなんだ。


コンビニでビールを買ってベンチに腰掛け封を切った。


目の前を左から右へと舟が進む


見送る警官の誘導灯が、音もなく点滅していた。


僕はこうして一体何を送り出しているのだろう?


今はそっとファインダー越しに、もう一つの目を閉じた。

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