第13話 シャノン、メイドになる・後編

 前回、依頼でメイドになることになった私とシャノン


 順調に依頼をこなしていたが、まさかのクノアがメイド喫茶の客としてこの店に来た。


 さぁ、私はどうなってしまうのか?


「イナミ〜え?ここで働いてるの?」


 クノアは可愛い子がいる店が好きで色々な店を巡っているみたいなことを言ってた覚えがあるのでこの店に来るのも納得はする。


「はい…掲示板の依頼で助っ人みたいな感じで…」


 相手はクノアでも今の私はメイドなので敬語を保つ。


「そっかそっか。じゃあこの茶とケーキを…」


「かしこまりました」


 クノアのことだからウケを狙ってメニューに存在しない何かを注文してそれに困る私の反応を見たりして楽しんでくるかと思いきや、普通に注文してきたのでメモを取る。


「以上で宜しいでしょうか?」


 メモを取り終えたのでクノアに注文はこの内容で大丈夫かどうかを聞く。


「あぁ待った待った。まだ大事な注文が残っているから」


「大事な注文?」


 クノアの大事な注文とは何だろうか?

気になるので聞いてみる。


「貴方に萌え萌え。貴方に萌え萌えを!」


 クノアは楽しそうに注文してきた。

まさか私がこれをするとは思ってなかったので焦りそうになったが、しっかりとメニューに記載されているので恥ずかしくてもするしかない。


 シャノンみたいに可愛くできるかどうか心配だけれどやってみよう。


「はい。ではいきますよ」


 私は息を飲み込み。

そして。


「貴方に〜?萌え萌えっ!」


 やってみせた。

さぁ、クノアの反応はどうだ?


「あぁ〜…イナミ可愛い!うんそうだね…可愛い!」


 クノアは手を叩きながら絶賛した。

どうやら良かったみたいだ。


「あの子も可愛いね」


「本当ね」


 それを見ていた別の客も私に注目する。


「そうなんです。イナミお姉ちゃんは可愛いんです!」


 何故かシャノンがここで出てくる。


「じゃあ私は持ってきますので」


「ゆっくりで良いから〜私は待ってる。けっけっけ」


 クノアは椅子で座って待ってくれるみたいだ。


 そして。


「お待たせいたしました。どうぞ」


 私はクノアの元に茶とケーキを置いた。


「ほんと。ありがとね。イナミはしっかりしてる〜」


「ありがとうございます」


 私はクノアに向けて礼をして次の客が来るのを待つ為に、再び待機した。


 するとそこで。


「キャー!」


 外で叫び声が聞こえた。

一体何があったのだろうか?


「ちょっと見てきますね」


 私は何かあったらこの店も大変なので一旦外に出て周りを見ることにした。


 そこにはなんと。


「この街を支配しに来た!」


 水属性を持つゴブリン、ウォーターゴブリンが街に入って来てしまった。


「まずい!」


 このままでは店にいる客どころかこの街にいる皆が危ないので私はマジックステッキを使い、変身しようとした。


 が。


「ちょっとちょっと。何しに来てんのかな?」


 クノアが店から出てきた。


「クノア!?」


「会計は済ませた。だから今から私が戦っちゃうよ」


 クノアがマジックステッキを持った。


「だからイナミは…」


 クノアが店の方を向いている。


 多分、この流れはクノアがウォーターゴブリンと戦うので私は店にいる皆を守ってほしいということだろう。


「…分かった。クノア、気をつけて!」


 クノアが心配だが、クノアならウォーターゴブリンを倒せそうな気がしたのでここはクノアに任せて私は店に戻ろうとした。


「あ、くれぐれもどっか破壊とかはしないでね。クノアならよくやっちゃうから」


 戻る前に事前にクノアがよく戦ってる最中に何か破壊したりしない様に言ってから店に戻った。


「分かってるって」


 クノアはさっと返事をしてからマジックステッキを持った。


「私もね。イナミ含めた皆守りたくなっちゃうから…いくよ?」


「おう?」


 ウォーターゴブリンの前でクノアは。


「マジックアンドチェンジ!」


 こう言い放ち、黒い服を着た姿に変身した。


「けっ。魔法少女かよ?俺の敵じゃあないな」


「そう?」


 ウォーターゴブリンはクノア相手に余裕の態度を見せる。


「魔法少女の魔法なんか俺には通用せん!」


「分かったよ?じゃあ」


 そうするとクノアは速くウォーターゴブリンの前まで移動して。


「え?」


「これで倒すよ!」


 クノアは魔法を使って戦うのではなく、マジックステッキを棍棒みたいにして振ってウォーターゴブリンに攻撃を始めた。


「ちょ!?ちょ!?魔法は!?」


「今は必要なし!けっけっけっ」


 クノアは楽しそうにウォーターゴブリンに攻撃を続ける。

この状況でクノアはずっと笑顔なので側から見たら恐怖でしかないだろう。


「分かった!出ていくから!」


 ウォーターゴブリンは参ったのかクノアから逃げようとした。


「よし、じゃあ最後に」


 クノアはウォーターゴブリンにマジックステッキを向けた。


「え?」


 ウォーターゴブリンは困惑している。


「くらえぇ!」


 クノアはマジックステッキからビームをウォーターゴブリンに向けて放った。


「これなら最初から普通に倒されたかったぁ!」


 ウォーターゴブリンは倒された。


「ふぅ。イナミ〜終わったよ」


 クノアは変身を解除して私の元に来た。


「おかえり…あ、おかえりなさいませ。ご主人様」


 気付けば私の口調がいつもの口調に戻っていたのでメイドとしての口調に戻す。


 で。


「イナミお姉ちゃん、終わりだよ」


 色々あったが、依頼は無事に達成できた。


「あ〜終わった」


「お疲れ様でした」


 依頼主が報酬金を渡してきた。


「大活躍でしたね。来てくださった皆さん、笑顔になったましたよ」


 どうやら客の皆は楽しんでくれたみたいだ。


「ありがとうございます。それなら嬉しいです」


「いつか依頼関係なしにこの店で本格的に働いてみませんか?」


「メイドか…」


 メイドとしてここで働く。

その選択肢もありかもしれない。


 けれど。


「私はまだ依頼とかこなして決めていきたいです。シャノンは?」


 私は今すぐ決めるのではなく、色々な依頼をしながら決めたいと思っていた。

シャノンはどうなのかも知りたいのでシャノンに聞いてみる。


「シャノン、ゆっくり決めてきたい!」


 シャノンも私と同じみたいだ。


「分かりました。まだ掲示板に依頼の紙を貼るかもしれませんのでもしまた何かあればよろしくお願いします。今日はありがとうございました」


 依頼主は理解し、頭を下げて礼を言った。


 そして宿の部屋にて。


「イナミお姉ちゃん!おかえりなさいませやって〜」


「おかえりなさいませ。ご主人様〜」


 私とシャノンの2人でメイド喫茶ごっこをする様になった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る