第11話 シャノン、恋の悩みを聞く

 私、イナミ

今日も掲示板から依頼の紙を探す。


「どれにしよう?」


 私にもできてシャノンにもできそうな依頼を探す。

色々な依頼の紙が貼られているのでどれにしようか迷ってしまう。


「シャノンは〜」


 シャノンは多分何も考え紙を剥がそうとする。


「こら〜」


 とてつもない巨大なモンスターとの戦いとかだったりしたら大変なので私はシャノンにそっと話しかける。


「ごめん〜」


 シャノンも分かってくれたみたいなので一旦後ろに下がってくれる。


「さて気を取り直してっと…おや?」


 私は気になる依頼を見つけた。


「恋の悩みを聞いてください…か」


 依頼文にはそう書いてあった。

これは恋の悩みを聞く依頼だろう。


「これにしようかな」


 私はこの依頼主に対して報酬金が欲しいだけではなく、単純な気持ちで話を聞いてみたくなった。

シャノンもシャノンなりに良い案を出してくれるかもしれない。


「どんな依頼?」


「恋の悩みを聞く依頼だよ」


「恋って何?」


 シャノンは恋の意味を知らなかった。

確かにシャノンはまだ知らなさそうだ。


「恋っていうのはね…うぅん…」


 説明するのが難しい。


「簡単に言えば誰かを凄く凄く好きになっちゃうってことかな?」


「へー」


「なんか誰か見たらキュンってしちゃったことってシャノンにはないかな?」


「分からない」


 まだシャノンには早い話だったか。


「イナミお姉ちゃんは恋ってしたことあるの?」


「私はね…まぁ…あるっちゃあるけど…」


 私は、学生の頃に恋に当てはまりそうな経験をしたことがある。

シャノンを見ているとその相手を思い出してくるので守りたくなってきてしまうし、心が引き寄せられてしまう。


「そうなの〜?」


「もう昔っちゃ昔の話だよ。シャノンもいつかできるかもね。恋」


「うん!私もいつか恋、してみた〜い」


 シャノンは恋について興味を持ったみたいだ。

シャノンは一体誰とどんな恋をするのだろうか?

私はそれが今から楽しみだ。


「じゃあ、行ってみよっか」


「うんっ!」


 私は依頼の紙を剥がして依頼主の元へと足を運んだ。


「すみません。掲示板から来ました」


 場所は依頼主の家だったので、その家のドアをノックする。


「こんにちは。どうぞ。お入りください」


「お邪魔します」


「お邪魔しまーす」


 依頼主はドアを開けてくれたので私とシャノンは家の中に入る。


「掲示板、読んでくれたんですね」


「はい。恋の悩みって言いますと…どういったのでしょうか?」


 早速本題に入る。

恋の悩みでも告白したいとか一緒にデートしたいとか色々存在するが、一体どんなのだろうか?


「私には好きな方がいるんです。職場も同じなので既に会話したりもしています」


「ほう」


 依頼主の恋する相手は同じ職場で働く同僚らしい。

続けて聞いていこう。


「そうなのですがその方は…」


「その方は?」


 依頼主は続きを言おうとするが固まってしまう。

どういった相手なのだろうか?


「…言いますね」


 息を飲み込み、その相手が誰なのかを言おうとする。


「その方は…私と同じ…女性…なんです」


 依頼主の恋する相手は女性だった。


「そうなんですね」


「笑わないんですね」


 私自身も女性であるが女性が好きな同性愛者だ。


「笑わないですよ。私も…そうですから」


 勇者パーティーにいた頃、街で綺麗な女性を見かけたのをが気にしていて見ていたところをアリシアに見られ、そのせいで周りから笑われた経験があるので、この依頼主の気持ちはよく分かる。


「ありがとうございます。だからこの気持ちは打ち明けた方が良いのか…それとも心の中でそのままにしておくべきなのかで悩んでいまして掲示板に頼りました」


 依頼主が依頼をした理由はよく分かった。

つまり恋を打ち明けるか言わないままにしておくか迷っているということだ。


「イナミお姉ちゃん、女性が女性を好きになるのって何かあるの?」


「あぁそっか…シャノンは恋をまだよく知らないんだもんね」


 シャノンはまだそこまで恋をよく分かっていないので気になっているのだろう。


「女の子が女の子を好きになると笑う人、中にはいるんだよね」


「そうなの?それでも2人が幸せになれるなら良いんじゃないかな?私はありだと思う!」


 シャノンは女性同士の恋はありだと答えてくれた。


「そっか…そうだね…」


 シャノンは私の仲間だからというのもあるが、私はそれで悩んでいた頃があったのでシャノンの今の一言で感動してしまった。


「私、この子は言ったみたいに女性同士でも恋はして良いと思います。なので、自分の恋に正直になってみてくだだい!」


 私は依頼人の恋の悩みに対して自分なりの案を出した。


「はい…分かりました。私、これから自分の気持ちに正直になって告白します!」


 どうやら依頼人は告白をする決意をしたらしい。


「ありがとうございました。これ、報酬金です」


「ありがとうございます。頑張ってください!」


 私は報酬金を受け取り、依頼人の恋を応援した。

この恋、叶うと良いな。


 そうして数日後


「今日はどの依頼に…」


 私は掲示板を見ていると。


「イナミお姉ちゃん!あれ!」


「あれは…?」


 先日の恋の悩みを相談してきた依頼人が女性と手を繋いでいるのをシャノンが見つけた。


「良かった…」


 いつか私も誰かとあんな関係になれたら良いなとこの日、思った。

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