第9話 シャノン、草むしりをする

 私、イナミ

勇者パーティーを追放された魔法少女だ。


 金の為、一緒についてきたシャノンの世話をする為に掲示板の依頼を日々こなしている。


 今日はどんな依頼が待っているだろう?


「えっと…今日の依頼はっと…」


 私は掲示板の紙から今日はどんな依頼の紙が貼られているかを探す。


 この掲示板に貼られている紙から1枚選んで剥がして依頼を決める。


 依頼が終われば紙に書いてある依頼主のところに行き報告をして金を貰えば依頼達成だ。


「イナミお姉ちゃん、良いのあった?」


 シャノンが私に良い依頼があったかどうかを聞いてくる。


 シャノンもついて来るので、年齢的にそんなに難易度が高くないのを選ぶのが良いだろう。


「よし、これだ!これならシャノンもできそうだよ」


 私は草むしりの依頼の紙を剥がした。

建物の前にある雑草をむしる依頼だ。


「草むしり?」


「雑草っていう草をむしる依頼だよ。私がするのを見てたら分かるし、シャノンもできると思うよ」


 シャノンは自分にできる依頼がどうかを分かっていない。

なので、私はシャノンに自信をつけてあげようとする。


「分かった!イナミお姉ちゃんが言うならやってみる!」


 シャノンは自信を持ってくれた。

これなら一緒に依頼を進めていけるだろう。


 そして目的地の建物の前に私たちは到着する。


「じゃあ始めよっか。見ていてね」


 私はシャノンに手本を見せてあげた。

実際に草むしりの手本を見るとシャノンは分かるかもしれないと思ったからだ。


「やってみる!」


 シャノンは私の手本を真似して草むしりをしてみる。


「上手だね!」


 シャノンは私の手本が参考になったからか上手に草むしりをこなす。


「じゃあ私も…」


 私も続けて草むしりをする。


 で、どんどん雑草が減っていく。

はずだった。


「イナミお姉ちゃん…雑草いつなくなるの…?」


「そろそろなくなるはずなんだけど…」


 むしってもむしっても雑草が減らない。


 こんなことあるだろうか?


「イナミお姉ちゃん、お腹空いた…」


 シャノンがここで空腹になってしまった。

これは流石にまずい。


「待っててシャノン!私、今買って来るから!」


「ありがとうイナミお姉ちゃん…」


 急いで私は近くの店でシャノン用の食べ物を購入し、戻ってきた。


「シャノン!」


 するとそこでまさかの事態になっていた。


「イナミお姉ちゃーん!」


 雑草の量が明らかに増えていて先程まで何もなかったところにまで雑草が生えてきてしまっていた。


「どうなってんの!?」


 こうなってくると明らかにおかしい。

何かがここで起きているに違いない。


「どこか…どこか…」


 私は雑草の周りで何が起きていないかを確認した。

もしかしたらこの辺りに何か手がかりがあるかもしれないからだ。


 するとそこで。


「大丈夫…大丈夫…」


「雑草が動いてる!?」


 動く雑草を見つけた。


「あ、気づかれた!?」


「うん。分かるよ」


 雑草は人間みたいな姿に変化した。


「誰?」


「オイラはザーソー。雑草を増やすモンスターだ!」


 ザーソーと名をと名乗った。

雑草を増やしまくるモンスターらしい。


「オイラは雑草を生やしまくることこそが生きがい!だからこそ雑草を生やしまくる!」


「何その生きがい!?」


 今までに数多くのモンスターと戦ってきたが、雑草を生やすことが生きがいのモンスターは初めて見た。


「マジック…いや…」


 変身して倒そうと思ったがザーソーはそこまで悪いモンスターには見えなかった。

もしかしたら話せば分かるかもしれない。


「あのさ。どうして雑草が好きなのかな?」


「よく聞いてくれた。雑草のこの色…この形、オイラは雑草を見る度に自然と笑顔になってくる…あぁたまらない…」


 ザーソーは雑草の魅力を語ってくれた。


「それならさ。探してみない?雑草好きで周りに雑草生やしても喜んでくれそうな誰かを」


「お前探してくれるのか!?」


 なんだかこのままにしておくのも可哀想だしザーソーも話せば良いモンスターだと思うので雑草を喜ぶ誰かを探すことを決めた。


「うん。そっちの方がザーソー的にも良いでしょ?」


「あぁっ!オイラ、人間はいつも話すら聞かずにモンスターな理由だけで倒そうとしてくるから嬉しいぞ…」


「そっか」


 確かにモンスターってだけで私みたいに話を聞かずに倒す人間は沢山いる。

私が入っていた勇者パーティーにいた皆もそうだった。


 でも、モンスターも話せばザーソーみたいに分かってくれるモンスターもいるので話してみるのもありだったりする。


「どうやって探そう…」


 私はどうやって探せば良いかを考えた。


 すると、ある案を思い浮かべた。


「あれを使おう!」


「あれってなんだ?」


「ついて来て!」


 私はザーソーをよく利用しているあれが置いてある場所に向かった。

シャノンもしっかりついて来てくれた。


「これ!掲示板だよ」


 掲示板、依頼を書いて貼れる掲示板だ。

ここにザーソーを必要としてくれる誰かを探すとしよう。


「これに書いて…できあがり!後は待つだけだよ」


 紙に依頼文は書いた。

後は待つだけだ。


 すると。


「おや?」


 誰かが私が書いた紙を興味津々に眺めていた。


「どうかしましたか?」


「これ、貴方が書いたの?」


 その誰かは私に聞いてきた。


「はい…」


「最高の依頼よ…そのザーソーって子、家で使わせて!」


 まさかのザーソーに興味を持ってくれた。


「はい!喜んで!」


 そうして。


「生やすぞ!」


 雑草は広大な広場に雑草を沢山生やす。


「良かったね。ザーソー、雑草好きに見つかって」


「あぁ…オイラの居場所はここにあった!」


 雑草はかなり喜んでいる。


「イナミお姉ちゃん、ザーソー幸せそう!」


 シャノンはザーソーが広場に雑草を生やす光景を見ながら拍手している。


「そうだね。私たち、良いことしたかも」


「だねっ!」


 そうして私たちはここで金を支払った後、草むしりの依頼人の元に行き報酬を貰い、宿に向かったのだった。


 話し合いで解決するのもありだろうとこの日、思ったのだった。

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