第8話 シャノン、助けたい

「シャノン!」


 シャノンがアリシアに人質にとられてしまった。


 どうやらアリシアはそこまでして私からシャノンを取りたいらしい。


「どうする?」


「卑怯な…」


 シャノンは大事だし私が大事に連れて行ってあげたいが、アリシアに人質にとられてしまうと私はどうして良いかが分からなくなる。


「心配しなくてもこの子は私を尊敬してくれるはずだから大丈夫よ」


「そうかな…?」


 アリシアのことだ。

シャノンをどんな風に扱うかなんか想像ができない。


 反省してなさそうだし、下手すれば私がされたことをシャノンにもしてしまう姿が予想つく。


「決めなさい。この子を助けたいんでしょう?それなら選択はもう決まってるはずよね」


「…」


 どうするべきだ?

私は選択を間違えれない。


 シャノンには幸せになってほしい。

でもアリシアのところにだけはついて行くのは嫌だ。


 私は悩んだ。

今までも悩む機会はあったがこんなに選択を迫られて悩むのは久しぶりだろう。


「ま、その気があるなら変身を解きなさい」


 アリシアから変身を解くように言われる。

私が変身したままだとシャノンを助けられるかもしれないからだと思っているからだろう。


「…」


 私は無言で変身を解いた。


「そうよ。それも置きなさい」


「…」


 私は持っていたマジックステッキを床に置いた。


「ははは…決めたのね?」


「…」


 変身は解いたがアリシアに何も言えない。


「どうしたのよ?決めなさいよ」


「イナミお姉ちゃん助けて!」


 シャノンは私に助けを求めている。

余計に辛くなってきてしまう。


「私は…」


 息を呑み込み私は答えを出そうとする。


「イナミお姉ちゃん!嫌だ!助けて!イナミお姉ちゃん!」


「私は…!」


 シャノンの助ける声が耳に入る。


「選びなさいよ!」


 ここで全てが決まってしまう。


「私は!」


 答えを出そうとしたその瞬間だった。


「あれれ〜?なんだか面白そうなの見つけちゃった〜」


 誰かが現れた。


「何よ!?今大事なところなのに!」


 アリシアが振り向くとそこには。


「私も混ぜてくれちゃっても良いんじゃないかな〜?」


 黒い魔法少女がいた。


「誰よあんた!」


「イナミ〜久しぶりぃ」


 黒い魔法少女はアリシアの問いに無視して私に話しかけてきた。


「あぁ…うん。久しぶり」


「あんた知り合いなの!?」


 アリシアは私とこの黒い魔法少女に繋がりがあるかどうかを聞く。


「うん…学生の頃の同級生」


「クノアだよ」


 クノア、私の学生の頃の同級生の魔法少女だ。

強いのだが戦いながら暴れる癖があるのでうっかり味方に攻撃したり建物を破壊してしまったりとかなりお騒がせな魔法少女だ。


 学生の頃は大人しかったのだがあることがきっかけでこうなってしまった。


「あれぇ?勇者パーティーは?」


 クノアは私が勇者パーティーに入ってたところまでを知っているのでどうしたのかが気になったのか聞いてくる。


「…追放された」


 追放された事実は変わらないのでクノアに素直に話す。


「そう。きゃっきゃっきゃ!イナミったら〜相変わらずだね」


 クノアは手を叩きながら笑ってる。

好きなだけ笑うと良い。


「どうでも良いわ。下がってなさい」


「そう?イナミが困ってるけど?」


 クノアはアリシアの方に来る。


「な、何よ!どうせ私の方が強いわ。これからこの子は…」


 アリシアがシャノンを掴んだまま何か言おうとしたがここでまさかの。


「おい!その子をどうするつもりだ!」


「なっ…騎士!?」


 騎士がアリシアの前に現れた。


「この辺りで騒ぎが起きていると聞いた。どういうことか説明してもらおうか?」


 騎士はアリシアに何をしていたのかを問う。


「えっと…この子は私のパーティーにいて…ねっ?」


 アリシアがシャノンを見ながら聞くが。


「違うよ。このお姉ちゃん、私を掴んで連れて行こうとしてたの」


  シャノンは騎士に本当の話をした。


「なっ…よくも言ってくれたわね!」


「ほう…どういうつもりかしっかり聞かせてもらおうか」


 騎士はアリシアを睨む。


「ひぃっ!助けなさいよ!仲間でしょ!?」


 アリシアは私に助けを求めてくる。

が。


「嫌だよ。追放したのはそっちでしょ?今の私は仲間じゃないし何より今のアリシアの行動は全く擁護できないから助けない。ちゃんと反省してね」


 正直、アリシアは魔法使いとしては強かったと思う。

が、私を追放したりシャノンを連れて行こうとしたのは全く偉いとは思わないので今回、私はアリシアは助けないことにした。


 これでアリシアも変わってくれると良いのだが。


「その子は放せ!」


「い、嫌よ!」


 アリシアは嫌がる。

けれど。


「シャノン、イナミお姉ちゃんのところに戻りたい!」


 シャノンは私のところに戻りたがる。


「そうか。ちゃんとした場所があるのだな。ほら、行くんだ」


「ありがとう!」


「いやぁぁぁ!」


 シャノンは私のところに戻ってきた。


「覚えときなさいよ!」


 そうしてアリシアは騎士に連れて行かれた。


「助かったよ。クノア…あれ?」


 クノアは既にいなくなっていた。

多分、騎士にシャノンのことを伝えてくれたのはクノアだったと思うのでちゃんとお礼が言いたかった。


「イナミお姉ちゃん怖がったよ〜」


 シャノンは私の方に来て泣く。

アリシア相手だったのだ。怖かっただろう。


「もう大丈夫だからね。一緒に宿に行こっか」


「うんっ!また絵本読んでね〜」


 シャノンを安心させる為に一緒に宿に向かったのだった。


 そしてその日の夜


「今日の…」


 私は新聞を読んでいたするとそこには。


「えっと…勇者とヒーラーが食い逃げ…え!?」


 私が追放された勇者パーティーにいた勇者とヒーラーが食い逃げして騎士に捕まった記事が新聞に取り上げられていた。


「…私、何も知らない」


 あの勇者パーティーのメンバーとは完全に縁を切ろうとここで決めた。

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