第7話 決着をつける

「またその格好…」


「笑いたきゃ笑えば?」


 アリシアは変身した私の格好見て笑いそうになるが、今の私からすればそんなのどうだって良い。


 今はシャノンの為にどうアリシアと戦っていくかだ。


 アリシアとは勇者パーティーにずっと一緒にいたのでどういった魔法をどの狙いで使用するかはある程度頭に入っている。


 つまり想定内通りに戦えばアリシアに勝てる可能性はあるが、油断はできない。


 何故ならアリシアは勇者パーティーから追放されて今、どんな手でも使ってくるからだろうからだ。


 シャノンの為、軽はずみな気持ちにはなれない。だからこそ、私が出せる全力で戦う。


「じゃあ…行くわよ!」


 アリシアは私に向けて火魔法を放ってきた。


 とりあえず私はそれを避ける。

アリシアが使う火魔法の威力は分かっている。避ければ良い場所も想定しているからそこに狙って私は交わす。


「ちっ…もう1回!」


 アリシアは舌打ちをして雷魔法を私に向かって放つ。

これも私は勇者パーティーにいた頃からアリシアが使う場面を何度も見てきたので交わす。


「これはどうよ!」


 怒ったアリシアは私に向かって水魔法を私に放つ。


 私は避けてジャンプし。


「使わせてもらうよ」


 その水魔法の上に乗る。


 そして風魔法を使い。


「な、何よ!?」


 水魔法をアリシアの方に向かわせて飛ばす。


「キャー!」


 慌てたアリシアは避ける。


「今度はこっちの番だから」


 私はマジックステッキから火魔法を放ち、続けて水魔法、風魔法、雷魔法を放つ。


「え…嘘…そんなに魔法を…」


 実はマジックステッキからは連続して魔法を放つことが可能だ。

魔法使いが使う魔法より威力は下だが。


「ちょっ…待ってよ!待ちなさいよ!」


「終わりだよ…」


 魔法はアリシアに向かって走っていく。

が。


「え…?」


 魔法はアリシアの目の前で止まった。


「どういうことよ…?」


 アリシアは疑問を抱く。


「この魔法、全部当たったらアリシア多分大怪我するよ?だからここで止めたの。もうやめようよ。アリシア、貴方は私には勝てない」


「生意気に…!」


「魔法だって私の服の力がないから今そんなに強くないでしょ?」


 そう。

今のアリシアの魔法は勇者パーティーにいた頃と比べて私の変身後の服の機能が使われていない為、その頃に比べて魔法の威力は下がっている。


 そして、私はアリシアの魔法を使う狙いなども把握しているからアリシアと私で1対1の戦いをするならば私の方が強い訳だ。


 アリシア本人は自信満々だったが、今のアリシアが私に勝てる訳がない。


 しかし、ここで勝てるからとはいえ魔法をアリシアに当てるとアリシアが大怪我をしてしまうので流石にそこまではしたくなかったので私は魔法をアリシアの目の前で止めておいた。


「そ…そんな…この私が…」


 アリシアは今までにない絶望した顔をしている。

今まで自分の魔法が強かったのは私の服の機能のお陰だったことを今ここで目の前で見て知ってしまったからだろう。


「あんたなんか…私がいないと何もできないくせに…」


「その言葉、アリシア自身に向けて言えるんじゃないの?」


「くっ…」


 アリシアは何も言い返せない。


「終わりにしよう。これ以上争っても意味ないよ」


 本気を出せば私が勝てるができればこれ以上争ったところで何か意味があるとは考えられない。


 潔くシャノンは私が連れて行くのを認めてほしい。


 が。


「何よ…あんたじゃ…あんたなんかじゃ…」


 アリシアは悔しそうにしている。


「このお姉ちゃん怖いしイナミお姉ちゃんに酷いこと言ったみたいだから嫌い!」


 シャノンは、はっきりと言ってしまう。


「私が?そんな証拠どこよ!」


「イナミお姉ちゃんから聞いたよ。イナミお姉ちゃんに役立だずとかクビとか言って勇者パーティーから追い出したって!」


 シャノンは私が以前話した内容をそのままアリシアに伝えた。


「そんな…」


「全部話しちゃった…」


 周りに言うつもりは元はなかったのだが、シャノン相手だから話したくなってしまってしまった。

そのことは素直に打ち明けた。


「ふざけんじゃないわよ!よくも…よくも!」


 アリシアは完全に怒っている。


「まぁ…シャノンもこう言ってる訳だし私が連れてって良いでしょ?」


「はぁ!?ちょっと…本当に良いの?ねぇ私の方が強いわよ?」


 アリシアはシャノンを説得しようとする。


 けれど。


「怖いから嫌だ!イナミお姉ちゃんが良い!」


 シャノンはアリシアの説得を断る。


「イナミお姉ちゃんは好き!」


「ありがとう。シャノン」


 シャノンが私の方へ来ようとしたその瞬間だった。


「こうなったら最後の手段に出るわ…!」


 アリシアはシャノンの手を掴んだ。


「え!?」


「イナミ!この子がどうなっても良いの!?」


 アリシアはまさかのシャノンを人質にとった。


「アリシア…嘘でしょ!?」


「イナミお姉ちゃん!」


 シャノンは怖がっている。


「さぁ…大人しくこの子を私の元に連れて行かせるって言ってくれるならこの子の命は助けてあげるわ。どうする?」


 アリシアはシャノンを掴みながら私に聞いてきた。


「シャノン!」


「イナミお姉ちゃん!」


 どうすれば良い?


 私はシャノンは助けられるのか?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る