第3話 幼女、懐かれる

「にしてもこの子どうしよう…」


 私は助けを求められて幼女とマジックステッキを持って宿まで走ってきた。


 そして今、部屋でこの子をどうするべきかで悩む。


 親がいるのならそこまで連れて行けば良い。


 まずこの子が起きてくれないと何も始まらないので起きるまでひたすら待つ。


「ん…ん…あ…」


 目を覚ました。

言葉も発している。


「大丈夫?」


「誰…?」


 私を見て疑問を抱く。

私は知らない他人なのでそうなるのも無理はない。


「私はイナミ。貴方は?」


 一先ず私の名を名乗る。


「…シャノン」


 この子はシャノンと名乗った。

自分の名前は分かるらしい。


「お家とか分かる?お父さんやお母さんとか分かる?」


 聞けることは聞いておこう。

シャノンの安全が今が1番大事なのだから。


「お家って…何?お父さん…お母さん…って何…?」


 どうやらそれは分からないらしい。

もしかしたら記憶喪失かもしれない。


「まずいな…」


 それが分からなければシャノンを無事に帰してあげることができない。


「お腹…空いた…」


 どうやらお腹を空かしているみたいだ。


「大丈夫だよ。買ってあるから」


 シャノンはあの光る箱の中に入っていたのでもしかしたら空腹状態かもしれないと思い、私は事前に宿に入る前に食べ物を購入していた。


「はいこれ食べて」


「うん…」


 シャノンは手を震えさせながら食べ物を手に取りゆっくりと口にしていく。


「…美味しい」


「良かった!」


 シャノンは小声で味の感想を言う。


「明日さ。シャノンのお父さんとお母さん、探しに行かない?」


「…」


 シャノンは固まってしまう。

恐らく親の存在が何なのかを知らないので何を探しに行くのかが分からないのだろう。


「じゃあさ!私とお散歩に行かない?」


「…うん」


 シャノンは頷いてくれた。

シャノンとお散歩に行くとして私は街の人にシャノンについて聞いていこう。


「それじゃあ一緒に寝よっか」


「…」


 シャノンはまた固まってしまう。

私が何者なのかは容姿と名前ぐらいしか分かっていないので怖がってしまっているのだろう。


「じゃあ…これ、読んであげる」


 私は食べ物のついでにシャノンに読み聞かせてあげる用に買ってきた絵本の表紙を見せてあげた。


「…読んで」


 シャノンは興味を持ったからか私に読み聞かせを要求した。


「じゃあ読むよ。昔々あるところに…」


 私はシャノンでも聞ける様にゆっくりと絵本の読み聞かせを始めた。

聞いてくれるだろうか?


「それで…どうなるの…?」


 シャノンは興味津々に私の朗読を聞いてくれている。

良かった。喜んでくれているみたいで。


「…でしたとさ」


 読み終わった頃には既にシャノンは眠っていた。

シャノンの可愛い寝顔を見ながら隣で私も眠る。


 次の日


「なくなってる…」


 私は昨日の光る箱がある森までシャノンを連れてきたが、光る箱はその場から既になくなっていた。


「ここ…どこ…?」


 シャノンはこの場所に疑問を抱く。


「覚えてない?シャノン、昨日ここにいたんだよ」


「…知らない」


 シャノンに聞いてみるが反応はこれだった。

多分、そういったところの記憶もないのだろう。


「ここ…怖い」


 シャノンは怖がってしまう。

いかにもモンスターが出そうな場所なので無理はない。


「じゃあ…街に戻ろっか」


 この森に何か手掛かりがないか詮索したいが、シャノンが怖がっているので今はそれどころじゃないだろう。


 なので私たちは一旦、街に戻ることにした。


「すみません。この子について何か知ってませんか?」


「知らないねぇ...」


「ありがとうございます」


 街の人々にシャノンについて何か知ってないか色々聞いてはみたが皆知らなかった。


「そう見つからないか...」


 光る箱から出てきた幼女なんて私は初めて見たのでどうしていけば良いかが全く分からない。

シャノンは記憶がないのでどこに帰してあげれば良いか分からないし、何せ私はこの子にとって何者になれるかすら分からない。


「お腹…空いた」


「あーお昼だもんね。何か食べよっか」


 気付けば昼。

シャノンはお腹が空いてくる頃合いだろう。

私もお腹が空いているので2人で何か食べるとしよう。


 私とシャノンはレストランに来た。


「食べて」


「ありがとう…」


 私とシャノンは注文した料理と2人で食べる。


「美味しい…」


 シャノンは美味しそうに食べてくれている。


「良かった!」


「ありがとう…」


 シャノンは私を見たりしつつ、料理を食べる。

私もシャノンと一緒に料理を食べながら昼を過ごす。


 そしてお会計を済ませて2人で外に出た。


「お姉ちゃん、ありがとう…」


 シャノンはそっと私にお礼を伝える。


「良いよ!今はシャノンが元気になってくれるなら私はそれで嬉しいから」


「…」


 シャノンは私に寄り添ってくる。


「どうしたの?」


 気になったので聞いてみる。


「お姉ちゃん…優しい…」


「あ、ありがとう」


 なんだか懐かれる。

シャノンみたいな可愛い子に懐かれるのは正直嬉しい。


 するとそこで。


「キャー!モンスターよ!」


 街にモンスターが入ってきてしまったらしく、街の人々は叫ぶ。


「大変だ!」


 モンスターが暴れてしまうと街が大変なことになってしまうのでそれを阻止する為に私はマジックステッキを出す。


「…行かなきゃ」


 シャノンが小声で呟く。


「シャノン、危ないから下がってて!」


 私は危ないのでシャノンを止めようとするがシャノンは前に出る。


 そして。


「いくよ…」


 シャノンはマジックステッキを出した。


「マジックアンドチェンジ!」


 シャノンは変身した。

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