4 ルナを守るため変身しなきゃ

勇太は、今度こそ白い天井を見た。病室である。


「お目覚めになりましたか」


看護師さんがいた。胸も大きい。ちょうど、布団をかけてくれていた。


勇太が転生した瞬間も横にいた人だ。名前はキミカというようだ。


「ああー、すっきり」


「すごい回復力ですね・・」


勇太は、早くも死にかけた。女神様が生き返らせくれたが、まだ新しい身体は修復途中だったようだ。


無茶をして倒れても、その甲斐はあった。この世界のルナを助けられた。


今しがた、警察に電話をして確認した。


花木ルナは冤罪が晴れて解放されていた。罪を捏造したやつも、白状した。


花木ルナは、勇太が眠っているときに病室に来たそうだ。


枕元にメモ書きが置いたあった。


『ありがとうございました。 花木ルナ』


彼女も被害者なのに、お礼が残してあった。



男女比1対12の世界ならハーレムとか考えたのは一瞬。


前世ルナと同じ顔のパラレルルナを見つけてしまった。


どうせモテないけれど、せめてルナとは仲良くなろう。


パラレル体と呼ぶが、勇太の前世で見た顔も5~6人はみつけた。


早くもルナ、梓に遭遇した勇太は楽しみにしている。


親友・今川薫、幼馴染み山根純子の名前と顔が、パラレル勇太の記憶を探る限りではない。


この世界の2人も探してみたいのだ。



希望はある。新しい身体が高性能。


「おお、傷が塞がってる。女神様がくれた回復力って、チートクラスじゃね?」


なぜか傷跡は、ものすごい盛り上がっている。抜糸もしていない。


なんにせよ、早く退院する。


そして、月曜日から学校に通いたい。


勇太は自分の評価が低い位置でスタートするのも気にしない。



この人生を儲けものと思っている勇太は、過去に縛られたくない。


新天地も考えたが、やはり他人と分かっていても放っておけない人がいる。



ルナと梓だ。


ルナは変なとこで有名人なのだ。前世は年が離れた兄がいたが、今世は双子。


その双子の妹がとびきりの美人。比較されているらしい。


もうひとつは、もちろん従姉の梓。


前は妹だったし、今度も気持ちの中では妹だ。


転生した今日は5月10日の金曜日。梓が勇太と同じ高校に入学して1ヶ月。


その短期間に、パラレル勇太の馬鹿は梓と関係ある後輩数人に迷惑をかけている。


希少な男子だからと顔を見に来た女子に、落胆された。


みみっちい報復に、ぶつかったりしている。


前世で見覚えがある1年女子のペンケースも壊している。


「やらかしてるよ俺」


梓絡みの人に早く謝罪する。


梓の人間関係がおかしくならないよう、修復せねばならない。


勇太は呟いた。


「女神様、俺は平凡でいいって言ったよね・・」



◆◆

ところで、今の勇太は入院中だ。



◇◇勇太◇◇


病院編?

何のことだ。


ああ、分かってる。看護師さんとのウフフな接触だろ。


いい人と出会えた。


戸惑いが大きすぎて落ち着かず、夜中に病棟の自販機のとこ行った。


そしたら看護師のキミカさんに、早くも3度目の遭遇。横のベンチに座って休憩中だった。


話し相手を頼んだら、えらく喜ばれた。自分が男子に声をかけられたのは初めてだそうだ。


自分がブス? 俺は色白で可愛いと思う。


笑顔を見せてくれて、何だか懐かしい感覚に癒やされた。


こんな魅力的な人を放っておく、この世界の男子どもはおかしい。


ん? なにキミカさん、声に出てた? 気にすんな。


ジュースでも買ってあげようかと思った。お礼したいって言うと、リクエストがあった。


「ハグしてくれたら疲れが取れるかな。あ、無理しないでね・・」


俺ははっきり言ってくれた方が助かるタイプ。


22歳のキミカさんをハグした。


色白のキミカさんが顔を真っ赤にした。


だけどな、ここで気付いたんだよ。この人も俺の前世で心当たりがある人だった。


山口キミカ。前世で入院してたときの看護師長さんだ。


今は22歳だけど、前世では58歳だった・・


梓が前世と4年ずれて生まれてるし、こんなケースもあるか。


いずれにせよ、転生して最初に会った人。


電話番号とLIMEを聞いたら教えてもらえた。


前世界の入院中には、看護師さんに世話になった。仕事を越えて励まし続けてくれた。


感謝を言葉では言い尽くせない。


生き返って声が出せるから言ったよ。

「キミカさん、お仕事大変でしょうけど、頑張って下さい」


そんな当たり前の言葉を言っただけで、うるうるしてた。



俺らの話声で、キミカさんの同僚が2人駆けてきた。


一晩中、休憩になった人に話相手になってもらった。回復力がすごくて、夜1時から目が冴えてんだもの。


こんなフツメンデブなのに連絡先を聞かれた。計5人の連絡先ゲット。


パラレル世界、恐るべし。



優しくしてもらえるから、こういう場所で過ごしたい。


だけどルナと梓の件がある。それに前世で断念した高校卒業も果たしたい。


今は土曜日の早朝。一刻も早く退院するために、身体の検査をしたら問題なしだった。


引き留める医師を振り切って退院した。どうせ調べても何も出ない。


回復力の元が女神印だから。


妥協案として、血液を300CC提供した。結果に応じた精密検査を日を改めてやる。


この辺は男子の意見が通りやすい。


帰りにも、看護師さんに連絡先を聞かれた。美人3人分追加。


こんな都合のいい世界なのに、ルナの顔がちらついて遊ぶ気になれない。


ま、女遊びなんて知らねえけどね。


タクシーで家に帰ると梓と葉子さんが出迎えてくれた。家でもLIMEが鳴りまくっている。


キミカさん達から食事のお誘いがばんばん来てた。男の希少性ってすげえ。


「ユウ兄ちゃん、それって何なの。私には電話番号しか教えてくれてないくせに」


思い切りLIME画面を見た梓が、今度は鬼の形相になった。


なぜか梓とハグしたあと、LIMEのIDを交換した。


あまり浮かれてもいられない。次は叔母と金の話をしないといけない。


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