第48話 弟、学園イモマッチョ定食を食べる
「んー、とりあえずみんなでどうにかするしかないのか」
「ダミアンが自ら面倒なことに首を突っ込むから悪いんだ」
「ごめんなさい」
俺よりも実年齢が30近く下の兄に怒られてしまった。
結局解決策は思いつかず、オリヴァー、イザベラ、フェルナンとダンスをしてその場から逃げるという方向性になった。
さすがに一回しか踊らないのも、他の貴族達に怪しまれるのだろう。
教員であるオリヴァーとダンスをしても良いのかと疑問に思った。
だが、俺がダンスが苦手なことを見せることで教員がサポートしていると思わせる作戦らしい。
そうすることで教員と踊っても問題はないと。
俺としてはさらに婚約者ができるのを遠ざけることになるが、ここは兄に任せるしかないようだ。
無力なおっさんはただ従っていれば問題ない。
何事も流されることは大事だからな。
「それより早く食べないと冷めちゃうね」
俺は少し冷たくなったイモマッチョを口に入れる。
少し冷たくなったことで、食べにくいイモマッチョも噛み切りやすくなる。
ただ、中の液体がさらにドロっとするため、口から溢れ出て食べにくいのが難点だ。
噛みやすさを選ぶか、中の液体が口から出ないのを選ぶか。
どちらも食べにくいが、癖になる濃厚さがある。
学園の食堂で出されているのは、家で食べるやつよりも少しさっぱりしていた。
やはり実家のやつは良質なイモマッチョを食べていたのだろう。
それにしてもなぜかみんなの視線が俺に集まっていた。
フェルナンやオリヴァーだけではなく、他のテーブルにいる男子生徒達ばかり俺を見ている。
「何かあったの?」
「あっ……ああ」
「ダミアン様が綺麗に食べないからですよ」
そんな俺の口元をクロが一生懸命拭っていた。
実家にいた時も、イモマッチョを食べる時はクロが口を拭く担当だった。
クロなしでイモマッチョはもう食べられないだろう。
「クロちんありがとね」
俺がお礼を言うとめんどくさそうな顔をしていた。
だが、耳が少し赤くなっているところを見ると嬉しいのだろう。
こういうところが、体が大きくなっても可愛いやつだ。
そもそもクロも俺よりかなり実年齢が下だから子どもみたいなものだ。
俺が再びイモマッチョを食べ始めると、フェルナンの手は止まっていた。
あれだけ嫌だと言っていたのに、食べたいのだろうか。
「美味しいよ?」
食べながら話してしまい、口から白い液体がドロっと出てきた。
「くっ……」
フェルナンは必死に堪えていたが、急に立ち上がってどこかに行ってしまった。
食堂に来たのに、まだ半分も食べずに残していた。
「お腹が痛かったのかな?」
「ああ、そうだな。いや、あいつのためにもそうしてやれ」
「昔のオリヴァー様を思い出しますね」
「おい、俺はもうちょっとスマートだったぞ」
「どちらも変わらないわよ」
俺の知らないところで、どんどん話が進んでいるようだ。
会話に入れない俺はその後もイモマッチョを啜ったりと美味しく食べていた。
気づいた時には周りにいたはずの男子生徒達は減っていた。
どうやら俺は食べるのが遅いようだ。
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