第41話 弟、ファザコンになりました

 皆さん、今日も元気でお過ごしでしょうか。


 ゆるふわカシューナッツ系男子ことダミアンは元気にしております。


 さてさて、ついに俺が学園に行く日がやってきました!


 あれから月日が経ち俺も成長した。


 カシューナッツ系男子からピスタチオ系男子になった。


 良い成長だ!


「ダミアン元気で過ごすんだぞ」


「ちゃんと食べるんだぞ」


 今日も相変わらず頭上には選択肢が浮いています。


 行ってきます!

 パパとママと離れたくないよ!

▶︎本当に学園に通わないといけないかな?


「本当に学園に通わないといけないかな?」


「くっ……」


「ダミアン!」


 俺は両親に熱い抱擁をされる。


 あれからファザコンとして成長した俺は貴族界でも有名になった。


 あのダークウッド公爵家当主がデレデレの息子ってだけで貴族達にしたら珍しい話だったらしい。


 だから王様があんなに笑っていたのだろう。


「ダミアン様行きますよ!」


「クロちんは寂しくないの?」


「ええ」


 両親はキリッとした目でクロを睨んでいた。


 クロは獣人の影響もあり、かなり大きく成長した。


 それはもうびっくりするぐらいの成長の速度だった。


 身長は俺よりも50cm以上大きいし、股間には龍が住んでいる。


「この人でなし!」


「俺は獣人です」


「うわー、せこいな」


 俺への接し方もお見事。


 立派なツッコミ役になってくれた。


「お二人ともダミアン様を甘やかせないでください。密かに引越ししようとしていることは知っていますよ」


「なっ!?」


「えっ、あなたそうなの?」


 クロから聞いていたが、両親は俺が学園に行くタイミングで一緒に住むところを変えると言っていたらしい。


 まさか本当に付いてくるとは誰も思わないだろう。


 母は聞いてなかったのか、父を問い詰めている。


 俺が転生してから、本当に二人とも穏やかになった気がする。


 前までは悪役っぽかったが、今はその面影はだいぶ減った。


「じゃあ、向こうで会えるなら待ってるね!」


 仲良く言い合っている二人に手を振って、俺とクロは馬車に乗った。


 クロは俺の従者として一緒に学園に行くことになっている。


 はじめは獣人を従者に連れて行くことに反対された。


 だが、責任は自分で取ると啖呵切ったら認めてもらえたのだ。


 俺の本音を話せるのはクロしかいないため、クロがいなくなったら自分を見失いそうなのだ。


「学園まで距離はあるかな?」


「辺境地なので数日はかかりますよ」


「ここからが戦いになるのかー」


 悪役令嬢代表である姉が婚約破棄されるのは、学園に通っている時だからな。


「俺はいまだにダークウッド公爵家が破滅するとは思わないけどな?」


「俺もそう思うけど、前世の記憶がある俺が言うんだぞ?」


「それも本当かわからないだろう」


「もおー、クロちん意地悪になったな!」


 俺はクロの頭をクシャクシャと撫でる。すると、ちょうどそのタイミングで馬車が大きく揺れた。


 姿勢を崩した俺はそのままクロの上に倒れる。


「びっくりしたな……顔が赤いけど大丈夫か?」


 クロの顔は赤く染まっていた。


 度々過度なスキンシップをすると、クロは照れて顔を赤くすることが増えた。


 俺の中では相変わらず可愛い犬という認識だ。


「ダミアン様重いです」


「はぁん!? 俺のどこが重いんだよ!」


「あっ、軽いの間違いでしたね」


 クロは俺を持ち上げて、反対の椅子に座らせた。


 尋常じゃない成長速度を見せたクロとは違い、俺の体はあまり大きくならなかった。


 身長は160cmあれば良い方だし、股間もカシューナッツ系からピスタチオ系になったぐらいだ。


 人型になったクロの龍よりも、かなーり小さい。


 男としては惨めだが、体の大きさに比例していると思えば仕方のないことだ。


「兄さんと姉さんは元気かな?」


「元気だと思います。お二人とも学園で会えるから良かったですね」


「まさか兄さんが教員になるとは思わなかったけどね」


「公爵家の跡取りになるまでの約束でしたっけ?」


 兄は学園を卒業すると同時に学園の教員となった。


 なんでも歴代の生徒の中でもかなり優秀だと言われている。


 それに俺が入学するまでの一年の間、姉の監視者がいないためどうするか迷っていた。


 その時に視聴者アンケート機能を使ったら、兄に先生になるように頼むように出てきた。


 兄はそのまま受け入れて先生になったのだ。


 学園を卒業してから、忙しいのか帰ってくることも減り会うのを楽しみにしている。


「はぁー、二人に会うのが楽しみだな」


「そうですね」


「相変わらず兄さんと姉さんのことになると冷たいな」


「そんなものですよ。俺の従者はダミアン様なので……」


 ちゃんと誰に仕えているのかは、しっかりと理解しているようだ。


 なんやかんやで俺はこの世界を満喫していた。

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