第39話 腐人、楽しかった推し活 ※視聴者視点

「いやああああ、パパさん推しになっちゃうよおおおお!」


 私は乙女ゲームをプレイしながら掲示板にコメントを残していく。


==================


785.貴腐人

パパさんかっこいい!

顔面国宝だわ!


786.汚超腐人

まさかの父が一番好感度が高いとは誰も思わなかったよね?


787.腐マキラー

いつも睨んでいたのに、ここにきて視聴者殺しのスマイルよ。


787.腐死鳥 

今まで親子カップリングは義父×息子まではいけたけど親子もいいのね。

このなんとも言えない愛がいいわ!


788.麻婆豆腐

新たな沼よね!

本当の親子カップリングの作品って他にもあるかしら?


789.貴腐人

私も見たことないわ!

あー、これは完璧に推し変だわ。


790.汚超腐人

私もパパ推しになったわ!


791.蝶々腐人 

あのー、このパパって悪役令嬢のイザベラの過去にも少し出てくるわよね?


==================


 私は急いで今までメモしてきたノートを見返す。


 このゲームは常にどんなことが起きたのかをメモしておかないと、常に勝手にAIが物語を作ってしまうため忘れてしまう。


 悪役令嬢編の時もみんなで情報共有をしていたはず。


「えーっと、確か学園に通っている時に……えっ、父親が暗殺される!?」


 まさかの出来事に困惑を隠せない。


「推しの父で、新しい推しが死ぬってどういうこと……」


==================


792.貴腐人

私も確認したけど確かに過去に暗殺されていました。

しかも、内容がサラッとしか書かれていないためわからないです。


793.腐マキラー

AIが学習しているゲームだから、未来は変えられるんだよね?


794.腐死鳥

きっとできるはず!

ルート変更もできるから、このままパパさんを死なせない方法を考えよう。


795.麻婆豆腐

パパさんが死ぬのはいつ頃?


796.貴腐人

悪役令嬢が二年生のときだから……


797.汚超腐人

ダミアンが入学した後ってことだよね?


798.蝶々腐人

それならダミアンをデレデレにさせて、学園に付いて行かせる方法はないかな?


799.腐死鳥

学園って全寮制だよね……。

屋敷を学園の近くに作らせるってことだよね?


800.腐マキラー

そんなことできるのかな?

かなりめちゃくちゃな攻略ルートにならない?


801.汚超腐人

パパを諦めて他の攻略者に……。

いや、パパも含めてダミアンをぐちゃぐちゃにして欲しいの!


==================


「あー、わかる!」


 パパ×ダミアンもめちゃくちゃ良かったが、貴腐人の私だからこそ全てのカップリングが見たい。


 この際なら顔がわかる範囲なら100Pでも大歓迎だ。


 リアル大乱闘になるがそれも楽しいだろう。


 それには情報を集める必要がある。


「今日から情報収集だあああああ!」


 私は気合を入れて今までプレイした時に書いたノートを取り出した。


――ピンピピピピピンポーン


 こんな時にいつもの隣の部屋からの苦情チャイムが鳴った。


 私がはしゃいでうるさいのがいけないのはわかっている。


 でも勝手に声が出るから仕方ない。


 それに隣の家から声が聞こえないから、そこまで近所迷惑になっていないはず。


 いつものようにドアにある覗き穴を覗く。


「また今日も真っ暗だよな」


 毎回見るたびに外が真っ暗で何も見えないことが多い。


 私は気になってドアを開けると、そこには珍しく知らない男が立っていた。


「いつもうるさくして――」


「ずっと目を合わせていたのにやっと開けてくれたね」


 ニヤリと笑う男が不気味に思えた。


 何を言っているのかわからないが、早くドアを閉めた方が良いだろう。


「気をつけます」


 私は急いでドアを閉めた。


 ただ、隙間から男の手が入ってきた。


「痛いなー。僕の心はずっと痛いのになー」


「誰か助けて――」


「うるさい子は嫌いだよ」


「何これ……」


 急にお腹の痛みを感じたと思ったら、だんだんと寒くなってきた。


 体を動かそうとしても動かない。


 あれ……。


「私まだ推し活をしないといけないのに……」


「へー、君の好きな人はこの人なんだ」


 画面では推し達が楽しそうに朝食を食べていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る