第27話 弟、父はラスボスです
招待された貴族達が道を開けて、父を先頭に中央に向かって歩いていく。
側から見たら俺のお披露目会よりは、ボスの紹介に近いのだろうか。
きっと今頃各々下の方にキャラ紹介テロップが流れ出ている気がする。
「ダミアン様お飲み物です」
「クララ、ありがとう」
クララの顔を見ると少し緊張が解れた。
乾杯に使うジュースを受け取ると、笑顔でお礼を伝える。
「何か間違えたことでもしましたか?」
なぜか視線は俺に集まっていた。
家族達だけならまだわかるが、招待された貴族達も俺を見ている。
乾杯の挨拶は父がやると言っていた。
特に俺がやることはなかったはず。
飲み物を受け取る順番でもあったのだろうか。
考えれば考えるほど不安になってくる。
中身はアラサーのおじさんだが、みんなから一斉に視線を集める機会がない。
だって、俺童貞だったからな。
正直言って怖い。
俺は咄嗟に兄の後ろに隠れた。
「兄しゃま、僕悪いことをした?」
「くっ……」
兄は唇を噛んで必死に耐えていた。
あれ?
何か間違ったことをしたのだろうか。
「ダミアン、こっちだ」
「えっ……」
父は俺を睨みつけながら、引っ張ってきた。
あの様子だとすでにやらかしているのだろう。
明日にはダークウッド公爵家の次男が、お披露目会で問題を起こしたと、貴族界で話題になるかもしれない。
「パパごめ――」
すぐに謝ろうとしたら、俺の体がふわりと浮いた。
もう一度父の顔を見ると笑みを浮かべている。
いつもの悪役顔はなく、いつもと比べて優しい顔をしていた。だが、周囲はそう思っていないんだろう。
ところどころ女性の黄色い声ではなく悲鳴が聞こえてくる。
「ダミアンは何も悪くないぞ」
ああ、俺が女性だったら絶対今惚れているだろう。
それぐらいイケメンのオーラが飛び散っている。
今も何かモワモワと出ている気がする。
「ははは、ダークウッド公爵よ。息子を可愛がって魔力が漏れ出ているぞ」
突然声が聞こえたと思ったら、明らかに王様を思わせるような風貌の男性がいた。
服装が他の貴族と違うのと、マントの中にはなぜか殿下もいた。
「ああ、つい俺の我が子に変な目を向けるやつが多くてな」
「みんなお前の魔力でやられているではないか」
周囲を見渡すとみんな片膝立ちで頭を下げていた。
いや、この状況は王族の登場で頭を下げているに違いない。
俺は急いで挨拶をする。
「本日はお忙しい中、足を運び頂きありがとうございます。ダークウッド公爵家次男のダミアンと申します。こんなところでの挨拶申し訳ありません」
父に抱きかかえられているため、しっかり挨拶できないのは礼儀がなっていないと怒られるだろうか。
それも全部父のせいなので問題はない。
決して俺は悪くないからな。
チラチラと父を見るとなぜか撫でられた。
今日は人前だから優しいのか?
「ほう、これは視線が集まるのは仕方ないな」
いや、視線が集まっているのは絶対あんた達のせいだろう。
俺はただ挨拶をしただけだからな。
「ちょっと俺にも抱かせてくれないか?」
王様は手を広げていたため俺も手を広げる。
「うぎゅ!?」
父はさらに強く抱きしめて向きを変えた。
「我が子、次男ダミアンが貴族としてデビューする」
「はぁ!」
えっ、何これ。
乾杯の挨拶ってタラタラと話すやつではないのか?
これじゃあ、本当にボスが手下に話す感じになってしまう。
すでにみんな頭を下げているからな。
我が父はやっぱりラスボスなんだろうか。
「パパこれでいいの?」
「ああ、もう挨拶が終わったからあっちにいくぞ」
そう言って俺は父に抱きかかえられたまま連れて行かれた。
───────────────────
【あとがき】
「どっ……どうしたら破滅フラグが折れるんだ……」
ゆるふわキュルルンのカシューナッツが助けを求めているようだ。
▶︎★★★評価をする
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ブックマークする
「こっ……これは……!?」
選択肢の投票が行われた。
「★★★評価をよろしくお願いします!」
どうやら★★★評価をすると破滅フラグが折れるようだ。
「BLフラグは……?」
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