第25話 兄、自分のできること ※オリヴァー視点
図書室で勉強をしていると、イザベラとクララが困った顔でやってきた。
「オリヴァー兄様いいかしら?」
「イザベラ、どうしたんだ?」
いつも元気なイザベラが珍しく落ち込んでいた。
「ダミアンに言い過ぎたの」
「言いすぎた?」
そういえば、今日はイザベラとダミアンでダンスの練習をすると聞いていた。
きっとうまくいかなかったのだろう。
俺と練習した時もたくさん転けていたからな。
毎回俺の方に倒れてきて天国を見ているようだった。
ふわふわな髪から良い匂いが香っていたのを今でも覚えている。
「お披露目会をやらない方が良いって言っちゃったの」
「あー、それはダミアンをみんなに見せたくないってことだよね?」
イザベラは大きく頷いていた。
いつも俺とイザベラはダミアンがあまり人の目に触れないようにしていた。
最近は殿下が遊びに来ることが増えたため、その意識は減っていたが、お披露目会はそうはいかない。
何度もダミアンに会いに行っては、お披露目会をしないようにと声をかけたが逆に火をつけてしまったようだ。
その結果強く言ってしまったと。
そろそろ俺はダークウッド公爵家を離れて学園に行ってしまう。
今もその勉強が忙しくてダミアンに会う時間は減ってしまった。
その間に俺ができることは何だろうか。
大事な弟を守るために出来ることを考えておく必要がある。
「父様のところに一緒に行ってみようか」
俺はイザベラの手を引っ張って父の元へ向かった。
ダークウッド公爵家の決定権は、全て父が持っているからな。
父の一言で全てが変わる。
――トントン
「父様、オリヴァーです」
「入れ」
「失礼します」
俺はイザベラとともに部屋に入ると、父は仕事をしていたのかずっと資料を見ていた。
お披露目会の準備も忙しいのか、目の下も黒くなっている。
「こんな時に何しにきたんだ?」
ギロリと睨む姿に俺とイザベラは体が硬直する。
父の魔力は歴代ダークウッド公爵家の中でも高い方だ。
そんな人物に魔力を放たれたら動けなくなるのは当たり前だ。
「ああ、すまない」
魔力を放っていたことに気づいたのだろう。
少し体が楽になってきた。
ただ、さっきよりも顔が鬼のように怖い。
俺も目つきが悪いと言われて眼鏡で隠すようになった。ただ、父はそれを余裕で超えている。
「ダミアンについてです」
「ダミアンがどうした?」
俺は単刀直入に聞くことにした。
「お披露目会を本当に行う予定ですか?」
「ああ、貴族に必要なことだからな」
「毎日無茶して、ダンスの練習をやっているのは知っていますか?」
「俺がそんなことを知らないと思っているのか」
「うっ……」
再び強い視線と共に魔力が飛んでくる。
イザベラもさっきから魔力に当てられて、ずっと震えている。
このままではイザベラも魔力の影響で寝込むことになりそうだ。
「お時間を取って申し訳ありませんでした」
俺は父に頭を下げると、イザベラとともに部屋に戻ることにした。
もうお披露目会を中止にすることはできないようだ。
なら、俺達の手でどうにかするしかないのだろう。
「イザベラ、この後話し合いをしようか」
「わかりましたわ」
それなら俺達ができるのはダミアンにちゃんと踊らせて、しっかりお披露目会を成功させる。
俺達ができるのはそれぐらいしかなさそうだ。
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