第23話 弟、選択肢を間違える

 たくさんある衣装から次々と出されていく。


 タキシードみたいな貴族服から、半袖半ズボンの幼稚園児のような衣装まで様々だ。


「どれにするんだ?」


 俺はもちろんシンプルなものを着たいが、選ぶのに何か理由があるのだろうか。


 多くの選択肢から聞かれるからイベントかと思ったが、頭上にはいつもの選択肢が現れない。


「どれも捨て難いわね」


 母は嬉しそうに見比べていた。


 ただ、父からの視線の圧力が気になってどれを選んで良いのかわからない。


 これは明らかに試されているのだろう。


「んー、どれにしようかな」


 俺は悩む振りをして選択肢が出てこないかと待ってみる。


 よく見ると頭上に矢印のようなものが出ていた。


 そこに意識を向けると選択肢が出てきた。


▶︎視聴者アンケートを取る

 ????

 ????


 どうやらこっちから視聴者に助けを求めることが可能なようだ。


 それに文字化けしているところは、まだ機能として使えないのだろう。


 俺はそのまま"視聴者アンケートを取る"に意識を向けた。


『今から視聴者アンケートを取ります』


「えっ、なにこれ?」


「ダミアンどうしたの?」


 どうやら母には声が聞こえなかったようだ。


 それに時間も停止していない。


 きっと俺だけにしか聞こえない仕様になっているのだろう。


『視聴者アンケート確認できました』


 キチっとしたタキシードスタイル

 煌びやかな貴族スタイル

▶︎ゆるふわ可愛い園児スタイル


 どうやら三択に絞られた様子。


 この中ならタキシードスタイルが一番良いだろう。


 俺はタキシードに指を差そうとしたら、急に指先が動いた。


「僕はこれが良いかな」


 何と指を差していたのは、半袖半ズボンの園児スタイルだった。


『アンケートの結果以外からしか選べません』


 どうやらいつもいきなり出てくる選択肢システムと似たような仕組みらしい。


「じゃあ、この色に合わせて衣装を準備しましょうか」


「ああ」


 どうやらただ色を合わせるだけで、俺に好みを聞いてきたらしい。


 突如出てくるのはイベントとしての選択肢。


 俺から出すのはミニゲームのような選択肢なんだろう。


 物語りに変化はないが、イラストや反応が変わる。


 それだけでもプレイしている視聴者はよりゲームを楽しむことができる。


 そういう仕組みになっているのだろう。


 結局は自分で選んだ方が良かったってことだね。


「お披露目会って何をするんですか?」


 俺が一番気になってたのは、お披露目会がどういうものなのかということだ。


 単純に何かをお披露目するだけなんだろうか。


 それとも何か他に目的があるのか。


「お披露目会は貴族の仲間入りを知らせるものなのよ。大体5歳から7歳の間にやるけど、ダミアンのお披露目会はずっとやってなかったのよ」


「そうなんだ。でもそれと僕って関係あるのかな?」


「お披露目会って婚活パーティーでもあるからね。みんな娘や息子の婚約者を探すために必死になるのよ」


 父を見るとものすごい鬼のような形相で俺を睨んでいた。


 ああ、この見た目だと婚約者が見つからない可能性があるということか。


 だからお披露目会を今までやらなかった。


 少しでもカッコいい姿に成長しないと、婚約者として選ばれないからね。


 きっと父は俺が成長して、少しはかっこよくなると思ったのだろう。


 ただ、俺の見た目ってゆるふわキュルルルのカシューナッツ系男子だ。


 自慢できるところは一つもないからな。


 一つ上の殿下や兄と比べて男らしさは足りない。


 せめて今後の成長に期待ってところか。


 それだけで婚約者が見つかるとも思わないが……。


「僕がちゃんと婚約者をみつければいいんですね! 精一杯頑張ります!」


 俺の言葉に父は鬼から悪魔の顔になった。


 何か選択肢を間違えたのだろうか。


 怖くなった俺はクロとともに急いで部屋を後にした。


「俺の息子を夫にも婿にも出さんぞ!」


 部屋に残された父は沸々とした怒りの感情で何かを言っていた。


 きっとお披露目会に向けて意気込んでいるようだ。

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