第17話 ヤクザ、愛しいのダミアン ※父親視点
「ダミアン様は才能の塊ですね」
「ああ、俺達を怖がらないだけでもすごいのに全く魔力に影響されないからな」
頭をぶつけてからダミアンは少し変わった。
俺達は気持ちに魔力が連動すると言われている。
ダークウッド公爵家は魔力の中に、相手を恐怖にする力がある。
それを制御するためにも、俺はいつも睨んだ顔になってしまう。
その結果、様々な人を怖がらせてしまうがダミアンを見るとつい緩んで魔力を放ってしまう。
その結果、いつもダミアンを震えさせていた。
だから俺はダミアンに嫌われていると思っていた。
それが頭をぶつけてから全く変わったのだ。
以前のダミアンなら絶対に震えていた。
それはそれで可愛かったが、今はケロッとした顔をしている。
今朝もオリヴァーと寝ていたと聞いて俺の感情は揺れ動いた。
それと同時に魔力が解き放たれたが、ダミアンはオリヴァーを庇おうとしていた。
まさかあんなに芯の強い姿を見れるとは思いもしなかった。
「それにしても可愛いですね」
「んぁ!?」
「あっ、別に変な意味ではないですよ」
そんなこと言われなくてもわかっている。
ダミアンはこの世界で一番可愛い我が子だ。
変な男が寄りついたら、すぐに毒で始末してやる。
イザベラからは第一王子を警戒した方が良いと聞いたが、王族には手が出せないことが悩みだ。
やるなら毒殺が一番良いだろうな。
そのためにもここで売っている花が必要になる。
それにダミアンは有毒植物が好きと言っていた。
有毒植物が好き=父が好きとも言える。
それを考えるだけで口元がピクピクしてしまう。
いかんいかん、魔力をちゃんと制御しないとダミアンを驚かせてしまう。
そろそろ話が終わったタイミングでダミアンに声をかけるが返事が返ってこない。
「おい、ダミアン……おいどこだ!?」
きっと今朝みたいに"パパしゅき"と言って、出てくると思ったがどこにもいない。
店内を探しても見つからないのだ。
「ボス、ひょっとしたら裏口から出たかもしれないです」
確か裏口は危険管理区域になっていたはず。
この街は昔から魔物が住み着いた街と言われている。
以前は立派な街として機能していたが、魔王の侵略によって街は壊滅した。
それを国王の命令でダークウッド公爵家が管理している。
だから、街の中は安全区域と危険管理区域とに分かれている。
ダミアンが綺麗な街並みと言っていたから、すぐにあげることも可能だ。
元々ある侯爵領は今は弟が管理しているから、特に問題はない。
俺は花屋および危険管理区域を担当している手下と共にダミアンを探すことにした。
「おーい、ダミアン!」
「ダミアンさまー!」
声を上げるがダミアンの声は返ってこない。
魔物の反応は感じ取れるが、人間は全くわからない。
「あれ? ボスこんなところでどうしたんですか?」
声をかけてきたのは冒険者の男だった。
冒険者と呼ばれる魔物相手を得意とする人にも、公爵家からの依頼として定期的に魔物の処理を頼んでいる。
「俺の息子を見なかったか?」
「息子ですか……?」
「ああ、こうゆるゆるってしてふわふわな可愛い男の子だ。瞳がキュルルンとして――」
「それならさっき見ましたよ。声をかけて――」
「貴様! 俺のダミアンに声をかけたってどういうことだ!」
俺は冒険者に掴む。
つい感情が爆発した影響か、冒険者は俺の魔力に当てられて震えていた。
「ボス、今はそれどころじゃないですよ」
手下に止められて再びキリッと睨みつける。
これで魔力は止められるだろう。
「それでダミアンはどこに行ったんだ?」
「びっくりして走って逃げていきました」
この冒険者も中々人相が悪いからな。
きっとびっくりしてダミアンは逃げたのだろう。
その選択は間違いではない。
男は何をやるかわからんからな。
小さな男の子が好きな男もこの世に存在する。
『ギャウ!』
そんな中、魔物の鳴き声が聞こえてきた。
きっとダミアンに何かあったはずだ。
俺はその声を頼りに危険管理区域の奥深くまで走った。
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