第14話 弟、ダークウッド公爵家は極道
「いらっしゃい!」
扉を開けるとそこには楽園――。
いや、極道の世界が広がっていた。
店員も強面で目つきが鋭い。
俺が間に入ったらヤクザに誘拐された子どもに見えなくもない。
ただ、店に入った時には挨拶をしてくれたため、しっかりした人ではあるのだろう。
「ボス、どうされたんですか?」
あれ?
これは本当にダークウッド公爵家は極道の家系なんだろうか。
「息子を連れてきた」
「こちらがダミアン様ですか。お会いできて光栄です」
どうやら俺のことは知っているらしい。
顔は怖くても思ったよりは良い人のようだ。
「はじめまして、ダミアンです」
頭を下げて挨拶をする。
なぜか視線を感じると思い顔を上げると、二人して俺を睨んでいた。
普通に自己紹介したのが不味かったのだろうか。
見た目はゆるふわキュルルン。
中身はアラサーのおじさん。
その名もダミアン!
みたいな某アニメのような自己紹介をした方が良かったのだろうか。
「ああ、ボスが惚れ――」
「それ以上言ったら絞め殺すぞ」
「あっ、はい」
花屋の手下が何かを言おうとした瞬間に、父の威圧が強くなった。
手下も急な威圧にビクビクとしている。
「大丈夫でしゅか?」
俺が心配すると驚いた顔をしていた。
ダークウッド公爵家の子どもでも、さすがにそれぐらいは心配する。
父を見るとやはり俺を睨んでいた。
「ダミアンは少し花を見ていてくれ」
「わかったよー!」
何か大事な取り引きがあるのだろう。
俺は一人で店内を回ることにした。
「ここにあるのってほぼ有毒植物だよね?」
店内にあるのはトリカブト、ヒガンバナ、スイセンなどがあった。
アジサイとかはないため、ちょうど同じ時期に咲く花なんだろうか。
花を見るだけで、何かできるわけでもないためつまらなかった。
触って手が荒れたそれどころではないしね。
ぼーっと店内を歩いていると、何か黒い物体が動いたような気がした。
ついて行くと外の扉に繋がっていた。
どうやら裏口から逃げたようだ。
俺もそーっと後ろを追いかけていく。
表通りは綺麗なお店が多かったが、裏通りはどこか汚れていた。
悪いものには蓋をするという言葉が合うような環境だ。
スラム街とは言わないが、貧困地域なのは見てわかる。
「おい、君はどこから来たんだ?」
突然、男に声をかけられた。
振り返るとそこには汚れた服を着ていた怪しい男がいた。
手には大きな剣を持っている。
その先からは血がポタポタと垂れている。
確実に人を殺した後だと見てわかる容姿だ。
次は俺の番なんだろうか。
急いで向きを変えて走り出した。
周囲には細い道がたくさんある。
俺はそこを潜り抜けるように、とにかく奥へ奥へと向かった。
「はぁ……はぁ……」
息は上がっているがまだまだ逃げられる。
「おい!」
そんなことを思っていると突然声が聞こえてきた。
足を止めるとそこにはさっき見かけた黒い物体である犬がいた。
汚れているのか体はボロボロだ。
俺はゆっくり近づくと声をかける。
「ここがどこだかわかる?」
うん……。
とりあえず死に物狂いで逃げてきたら迷子になっていたのだ。
「ここはスラム街だぞ? 何でお前みたいなキラキラしたやつがいるんだ?」
「へっ……!?」
「そんなにスラム街で驚くことはない」
いやいや、驚くところはそこではない。
黒い犬が普通に言葉を話している方が驚きだ。
どうやら異世界の犬は普通に話すらしい。
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