第8話 弟、睡眠場所を求めて
「ダミアン様起きてください」
クララの声で俺は目を覚ました。
どこかその声は焦っているような気がした。
「んー」
まだ眠たくて目が開けられない俺は体を横に向けた。
「ダミアンおはよう」
「うへっ!?」
そこにいたのは昨日急に手を繋いできた殿下だった。
なぜか俺のベッドに腰掛けて、ニヤニヤとこっちを見ている。
相変わらずキラキラしていて眩しい。
「朝の挨拶は?」
「おはようございます?」
「そうだね」
殿下は俺の頭を優しく撫でた。
どこかペットになった気分がした。
――パタン!
「勝手に部屋に入るとはどういうことですか?」
部屋に入ってきたのはイザベラだった。
いやいや、君も俺の部屋に勝手に入ってきているからな。
彼女もまだ着替えていないのか、パジャマを着ている。
時計を見るとまだまだ朝食を食べるにも早いぐらいだ。
「私が婚約者の弟の部屋に遊びにきてはダメなのかな?」
「いや、それは――」
「年近い婚約者の部屋に忍び込むよりは良いだろう」
そのまま受け取ると俺の部屋に忍び込んだことになる。
それはそれで怖い。
ただ、今の俺は話よりも眠気が勝っている。
「おやしゅみ」
俺が再び布団に包まると、なぜか殿下も一緒に入ってきた。
せっかくの安眠を邪魔する気だろうか。
彼は満面の笑みで俺を見ている。
あまりにもイケメン過ぎて、ドキッとしてしまった。
男にはそこまで興味はなくても、あまりにもイケメンだと俺でもドキドキしてしまう。
俺は体の向きを変えると誰かに見られているような視線を感じた。
目を開けると、そこには般若のような顔になった姉がいた。
きっと婚約者である殿下が、俺と一緒に寝るのが嫌なんだろうか。
「姉様も一緒に寝ますか?」
とりあえず声をかけてみた。
だが、般若はさらに変化していき、閻魔のような顔になっていた。
「あっ、あなたは何を言っているのかしら!」
ああ、これは完璧にやらかしたやつだろう。
俺は急いでベッドから降りると、扉に向かって走った。
「朝は散歩が一番ですね!」
とりあえずここは逃げるのが一番良い選択だろう。
俺はすぐに部屋を後にした。
「はぁー、眠い……」
いざ、廊下に出たものの眠気が再び襲ってくる。
隠れて寝れる場所を探す。
「あっ、ここなら大丈夫か」
それは昨日来た屋敷の中にある図書室だった。
本がたくさんあるため、隠れるには適している。
それに部屋自体が縁にあるため、人がたくさん来る場所でもなさそうだ。
「はぁー、眠いのに朝から――」
「ダミアンも朝から勉強かな?」
「兄しゃま!?」
窓際には本を片手に日差しに当たっているオリヴァーがいた。
こんな早い時間から彼は勉強しているのだろうか。
「兄しゃまは朝からえらいですね」
「ん? 俺はこれが日課だからな」
どうやら朝から勉強するのが日課なんだろう。
たしかに屋敷の中にいても兄に会うことはない。
会っても食事の時ぐらいだ。
俺は兄の隣に椅子を持って行く。
椅子が大きいから重い。
「あっ……」
急に軽くなったと思ったら、兄が椅子を運んでくれた。
「一緒に勉強するか?」
「んーん。寝ているところを邪魔されたから眠たいの」
さっきからずっとあくびが止まらない。
ちょうどオリヴァーがいるところが、暖かそうで寝るには心地良そうだった。
椅子を隣に置いてもらうと、そのまま座って目をつぶる。
日差しの暖かさに全身の力が抜けていく。
「ダミアン?」
俺はオリヴァーにもたれるように眠ってしまったようだ。
ぼやけた視界と全く働かない頭。
そんな中でも、俺の頭上には選択肢が出ていた。
▶︎兄しゃま好き
一緒に寝よ
気持ちいい
選択肢1は目つきが悪くても、兄として嫌いではないから問題ない。
日差しが当たるこの場所なら選択肢2や3も回答としては合っている。
どれが選ばれても特に問題はなさそうだ。
兄しゃま好き
▶︎一緒に寝よ
気持ちいい
「一緒に寝よ……」
俺はそのまま気にせずに寝ることした。
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