第1-3 ▲ □ 始まりの異世界

 

「エリス様、いえ勇者様。僕、いえわたくしオサーナはあなた様をお慕い申し上げております。笑うと太陽のように眩しいその笑顔、魔物が襲ってきても瞬時に対応し撃退して見せたその圧倒的な力。村人一人一人から信頼されているそのカリスマ性。寡黙でやさしい、とっても頼りになる僕の未来の旦那様」


 勇者様の好きな所を語るならば最低5日はいる。それぐらい僕は勇者様のことが大好きだ。小さい頃から勇者様は「愛してる」「大好き」「結婚しようね」何度も何度も求婚してきた。


 なんと本当に両思いなのだ。


 幼馴染に生んでくれた両親と神様には毎日感謝の祈りを捧げている。


 子供の頃から祈りを欠かさなかった為か俊足の身体強化魔法が使えるようになった。


 この力さえあれば勇者様は僕の事を放って置かないだろう。ピンチの時にこの魔法を使ったら。


(((勇者様危ない((カキーンバコンキラッ))あなた様の後ろは妻のわたくしにお任せください)))


(((ありがとうオサーナ、君のお陰で僕は快適に旅ができるよ。結婚しよう)))


「なんつっっっっって!!!」


 勇者様の誕生日を期に、僕たちはパーティーを結成し、魔王討伐の旅に出る事となった。


 もうこれ婚前旅行だよね?楽しみすぎるんだが。


 本当は2人きりが良いんだけど、あの2人は荷物持ちで連れて行く。


 邪魔にならないよう僕達夫婦の役に立って欲しい。


 勇者様だってホントは今すぐ僕と結婚したいはずなのに、世界を救う大事な使命があるから仕方ないよね。


 僕は我慢出来る妻だから。


 世界を救ってからだって遅くない。


 子供もいっぱい欲しいね♡へへへへ、あ、鼻血。


 勇者様は年を重ねる度にお顔は凛々しくなっていき、眩しすぎてとても直視できない。


 その眩しすぎる存在故に、遠巻きに眺める事しか出来なかった。僕はそれだけでも充分幸せだよ。


 しかし、一緒に旅に出るんだ。


 勇者様の隣を歩く。そして一緒に寝食を共にする。


 想像だけで何杯でも飯が食える。


 旅先での健康管理も妻の役目。


 手元には勇者様の生活リズムや一日の行動を記した管理表(3650冊)、似顔絵(2000枚)、僕と勇者様交換日記(妄想3000冊)がある。


 これさえあれば大抵の事なら解決できるし今後は堂々とチェックができる。見れる。触れる。素敵。


「明日なんて言わずに今から出発したい。」


 そうやって悶々としているとジミーがやってきた。


「おまたせ・・・はいこれ今日の・・・」


 ジミーは日課である勇者様の管理表を見せ僕はそれをひったくる。


「今朝の勇者様はパンを2枚に果物のジュースを飲んで歯を磨いてからトイレに1回行ったんだ、時間は30秒、色はどうだったの?」


「いや、いつも言ってるけどそこまでは無理だって」


 勇者様健康管理係を任命してあげたのにその重要さがジミーにはまだ理解できていないようだった。


「濃い茶色だったらどうすんのよ!脱水症状かもしれないじゃない」


「朝ジュース飲んでたし暑くないから大丈夫だよ」


 あーほんと使えない、万が一、いや億が一勇者様の身に異変があったら対処ができないじゃない。


「まあいいか、その後、着替えて、じゃあ今頃は・・・」


 今朝の行動パターンから勇者様が今何処に居るかを計算する。


「そろそろ僕は戻るから」


 また当たり前のように帰ろうとしている。


「ちょっと待って、ジミー何でいつも大事な所は書いてないの!朝起きた時の勇者様のユウシャサマ(隠語)は元気だったか教えなさい!勇者様のおち」


 最も重要な情報を聞こうとしたその時


「だめよオサーナちゃん?今日はもう寝ましょうね?」


 耳元でナーの声がして、バキンと鈍い音が聴こえたかと思うと意識が無くなり目の前は真っ暗になった。



□ナーの日記

王都歴新月の11日


今日はいい天気(^_-)-☆明日はみんなで王都に出発(^_^)/

でもオサーナチャンは今日も暴走気味( ̄д ̄)フー

いくらエリス君がカッコいいからってこのまんまじゃきらわれチャウゾ! (^^♪ナンチャッテ

幸いエリス君はオサーナちゃんの暴走に気が付いてナイみたいダケド(^_-)-☆

いつかヘマしそうデ気が気じゃ無いヨォ(T_T)

どうしてくれるんダ!(笑)

デモでも二人の事応援してるカラネ!(^ε^)-☆Chu!!

皆でガンバッテマオーを倒しチャオ(≧▽≦)オー


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