きっと、これからも

 度重なる調査と、入念な作戦会議を経て、ついにこの日がやってきたのだ。

 中央公園で取引していたエルフを検挙した日から数えて、一週間。


 シィナとの出会いの日々から数えれば、二週間目となる。


 その日は朝から、警察局、魔法薬取締局ともに慌ただしかった。

 かねてから公安が目をつけていた反政府組織〝エッジズニックス〟を一斉検挙できるチャンスだ。

 失敗はゆるされない。


 そんな中、緊張感のない少女が一人……。


「おー。あたし、出動服なんて、初めて着たよ」


 黒い出動服を着たシィナは、鏡の前に立ち、新鮮そうに目を輝かせていた。


 ふだん、マトリは指定の制服を着ることはない。今回は警察局との共同作戦のため、彼らと同じ出動服を着ることになったのだ。


「どうよ。あたし、けっこう似合ってると思わない? ねえ、レオン?」


「……出動服を着てるんだから、ちゃんと気も引き締めたらどうだ」


 作戦前だというのに、まるで緊張感のない相棒に、レオンは頭を抱える。



「いいか。これは大事な作戦なんだ、〝尻尾の鈴〟はぜったいに外してから行けよ!」


「はいはい、わかったにゃー」




 ――――

 ――――――――


「シィナ……、お前ってやつは……」

 その光景を見て、わなわなと目をヒクつかせるレオン。


 シィナの潜入はうまくいった。だが、気ままな猫はそのまま作戦通り動いてくれやしなかった。

 というか、彼女はちゃんと作戦を理解してもいなかったのだ。


 機動隊の突入を待つなんてしゃらくさいと、シィナは勝手に現場突入をきめてしまった。


 レオンが現場に到着した頃には、すでに現場は死屍累々。

 メインホールには、惨憺さんたんたる光景が広がっていた。


〝エッジズニックス〟のメンバーたちは、全員、フロアにぐったりと倒れている。天井のライトも壁際のスピーカーもボロボロだ。



「まったく、難儀な相棒を持ったもんだ……」


  この二週間、シィナにさんざん振り回されてきた。きっと、これからも、そんな日々が続くのだろう。


 レオンは、深くため息をついた。

 だがその顔は、どこか痛快なようでもある。



 とにかく、あとのことは警察局の方々に任せよう。


 彼らの邪魔にならないよう、さっさとシィナを連れ出さないといけない。

 レオンはステージに向かうため、鼻っ柱を折られたエルフたちを、ひょいと跨いでいった。

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