バディ結成

「二人がバッタリ出会っていたなんて、これは運命的なバディかもしれないわね」


 ふふ、と笑ってマリアは言う。


「どうも! あたし、シィナ。よろしくにゃ。あ、苗字はないんだ。獣人って家の名前とか持たない家系が多いからね」


「……レオン・マクスヴェインです。よろしくおねがいします……」


「レオン君、仕事はシィナちゃんから教わって。一応、彼女のほうが先輩だからね」


「マリア長官!? こんな女の子から仕事を教われって、そんな無茶な……。

橋の欄干に登ったり、猫耳や尻尾にピアスなんか差してたり、とてもじゃないですがまともな公安職員には思えませんよ!」


「うんにゃ、橋の欄干に登ったらダメとか、尻尾にピアスはダメとか、そんな決まりは公安手帳の規則には載ってないよ? ねえマリア」



 なんと長官のことを呼び捨てにしている。マリアも気にしていない様子だ。

 ……甘い。甘すぎる。

 世を正すべく公安機関がこんなことで良いのか。



 困惑するレオンに、マリアが優しく言い聞かせるように言う。


「二人がバディになることはもう決定事項なの。長官である私が決めたことです。いわば長官命令。従ってくれるわよね、レオン君?」



 命令――その言葉にレオンは反応する。


 そうだ、自分は公安に忠義を尽くすべくここにいる。

 たとえどんな理不尽な命令でも、受け入れなければならない。そういうものだ。



「……わ、わかりました。これから彼女とともに職務に励みます」


 レオンは改めて少女に向き直り、頭を下げた。


「失礼しました。あらためて、ご指導ご鞭撻よろしくおねがいします。シィナ先輩」


「『シィナ先輩』? うわ、なんかそう呼ばれるの、変な感じだにゃあ」


 シィナは照れくさそうに尻尾をくねらせた。尻尾の動きに合わせて鈴が鳴る。


「先輩っていったって、たった半年だよ。それに君の方が年上なんだし。あたしのことは呼び捨てでもいいけどにゃ」

「いや、年齢は関係ありません。少しでも就任が早ければ先輩です」


「敬語だって使わなくていいけど?」

「先輩に敬語使うのは当たり前です」


「まったく、新人クンは気難しいヤツだにゃあ」

「義に堅いのは当然、公安職員なんですから」



「ふふ。二人がうまくいきそうでよかったわ」

 どうしてそう見えたのか、マリアは穏やかな笑顔で言うのだった。

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