月の悪魔の影。偉大な英雄の伝説

第11章

10年前

ドラゴンショア

- 王女の誕生日おめでとう

大勢の金持ちたちが声を張り上げ、グラスを鳴らして王女を祝福した。

グラスの音はヘンリー王国最大の船の宴会場に響き渡った。

- ありがとう

父親に隠れて、控えめに少女がささやいた。

当時のエスミンは、特に大勢の見慣れない大人たちの前では、とても内気で恐がりな少女だった。

- 誕生日おめでとう、エスミン。

父親がそう言うと、少女はただうなずいて礼を言った。

しかし、王女は王国の要人の前ではリラックスする必要を感じなかった。

エスミンは自分に注意を向けるため、父親のドレスの裾を引っ張り、小さな声でささやいた。

- パパ、デッキを散歩していい？いい匂いがする

- もちろんだ、

父親は娘の脇の下を持ち上げ、額にキスをして散歩に行かせた。

船内の雰囲気は陰鬱で、犬が吠えるような強い風が吹いていた。

- 雨が降りそうで、最悪なことに嵐が近づいていた。

エスミンの娘は、父親をあまり怒らせないように、友達とうまくいっていないことを話さなかった。

"お父さんと二人きりになりたい............。"

- ねえ

子供じみた声に姫は気を取られたが、振り向かずに無視することにした。

- お前に言ってんだよ、ブス

- そう、この醜く傲慢な女！王女で父親の一人娘なら、何をしても許されると思ってるの？違うわよ、この売春婦！......。

エスミンは男たちの群れからの侮辱を無視し、後ろ向きに歩き続けた。

- 私たちよりも上だと思っていることを否定しないの？はい、女王様？

王女の無知に耐えかねた男子の一人が、腐ったトマトをつかんで彼女の背中に投げつけた。

哀れな少女はよろめき、転びそうになったが、すぐに立ち直り、誇らしげに歩き続けた。

少年たちはさらに怒り、彼女にトマトを投げつけ、叫び始めた。

- お前は売春婦の娘だ！

- お前は成り上がりだ！

- 兄弟姉妹のように死ね

- お前の兄弟姉妹のように死ね。

- 兄弟姉妹のように死ね、売春婦！

友人たちの猛攻撃を無視して、エスミンは一人の少年に突進し、片手で髪をつかみ、もう一方の手で顔面を平手打ちした。

- 離せ、この野郎！

と叫んだ。彼の友人たちは何が起こったのかすぐには気づかず、気づいたときには彼女は反動で両側から抱きつき始めた。

- このイカれた売女め、汚いアバズレめ

少年は鼻血を拭いながら甲板から立ち上がった。

- 放して！あなたが始めたのよ！お父さんに言うわよ！私はあなたの未来の女王よ

エスミンは悲鳴を上げて逃げようとした。

- 黙れ

少年は血だらけの手を拳に握りしめ、エスミンの腹を殴った。

- お前は異常だ！お前の父親はある日売春宿に行って子供を産んだだけだ！娼婦の母親は運がよかった！自然の過ちだ！貴族がお前のような者を 王位につけると思うか？哀れな父親がお前を王位につければ、我々は蜂起する。

少年は言い終わると、2、3歩後ずさりしながら駆け寄り、再び少女の腹を蹴った。

少女の腹を蹴った。

その強烈な一撃で、小貴族の友人たちはエスミンを落とし、彼女はどさりと倒れた。

- 気をつけよう、落としちゃった。

- ごめんなさい、傲慢な顔でムカついたの

エスミンは胃のあたりに激痛が走り、吐き気が襲ってきたが、あまりの激痛に声も出せず、悲鳴も上げられなかった。

- どうして？

彼女は苦しそうに呟き、その日食べた血のついた食べ物をげっぷで吐き始めた。

- ああ、気持ち悪い。

- ああ、看守に見つかる前にここから出よう。

少年たちはそう言ってエスミンを残し、談笑しながら歩き出した。

"なぜ俺はティフォンなんだ？なぜ生まれてくる兄弟や姉妹がいないんだ？なぜママなんだ？僕は一生ひとりぼっちなの？ "

エスミンは、自分の苦しみと不公平の理由がわからず、自分の嘔吐物の中に横たわって泣いた。なぜ彼女は誰からも愛されなかったのか。母の愛も友情も知らない彼女が、なぜすべてに耐えなければならないのか。そんなことを考えながら、彼女は無期限に意識を失った。

彼女が正気に戻ったのは、何かが船をノックし、かろうじて聞こえる悲鳴が助けを求めていたからだった。

- 助けて...助けて、お願い、死にそうなの...お願い。

エスミンは胃の痛みに耐えかねて立ち上がり、船の端まで歩いて下を見た。そこには、樽につかまって瓶で船を叩いている少年の姿があった。

少年は濡れ、疲れ果て、かろうじて生きていた。彼女が彼を見つけたのは幸運だった。