★1 ブタの一生は醜く続く
タイトル:ブタの一生は醜く続く
キャッチコピー:整形男子×ボランティアお嬢様。出会いは八月の七夕に
作者:だいこん
URL:https://kakuyomu.jp/works/16818093081636931552
評価:★1
【あらすじ】
鎧を纏った青年と、黙っていれば清楚な女の子のお話です。
【拝読したストーリーの流れ】
本作の作者であるだいこん様は、以前に批評させて頂いた『このラブコメは糖度の低いラブコメです』の作者でもあります。
仙台での七夕は8月に行われる。
そんな真夏の七夕まつり。SNSで知り合った彼女とデートをしていた主人公「鰐淵銀平」は、偶然マッチングアプリで知り合った彼女「ユミコ」と鉢合わせをしてしまう。しかも、「ユミコ」の隣には別の男がいた。
「銀平」と「ユミコ」、お互いの浮気がバレて当然修羅場に……。
結果、彼女たちは「銀平」から離れて、残されたのは叩かれた頬の痛みだけのハズだった。
「悪い事をしたのは自分なのだから仕方ない」と、そう自虐する「銀平」に声を掛けたのは、彼の怪我を心配したヒロイン「真田芽衣」だった。
人を疑う事を知らない、底抜けにお人好しなお嬢様の「芽衣」と知り合い、彼女は別れ際に「次に会う事があったら聞いて欲しい話がある」と言って去って行く。
その翌日、バイト先で偶然再会した「芽衣」の話とは「ボランティアに興味はないか?」という事だった……、といったお話でしょうか。
【タイトル・キャッチコピーの批評】
タイトルは悪くはないとも思うのですが、個人的には微妙にも感じてしまいました。
「ブタ」とは、「醜い容姿に生まれた主人公」を指すものだと思います。作中でもそれは非常に良く表現されていますので、「整形してもブタはブタ」という事を揶揄しているタイトルだと思いますね。
作品内容を示し、「ブタ」という強い言葉が「キャッチ」にも繋がるのではないかと思います。
ただ、懸念点もあるのではと思います。
それは「初見ではコメディ作品に受け取られかねない」という事ですね。私は本文を読むまで「コメディ作品」だと思っておりました。
コメディを期待した読者は、本作の雰囲気に馴染むまで時間がかかるのではと思います。
続いてキャッチコピーですが、こちらは「主人公とヒロインの属性、そして最初の舞台の説明」ですね。あまり良いとは感じませんでした。
まずは『整形男子』と『ボランティアお嬢様』という属性に特に魅力を感じません。この言葉だけで本作に興味を持つ読者は少ないのではと思います。
そして『八月の七夕に』という言葉ですが、こちらは「疑問から感じる興味」はあると思います。七夕といえば、一般的には7月ですからね。
ですが、その疑問は第1話の冒頭で早々に明かされてしまいます。「キャッチ」としては機能するかも知れませんが、この言葉に惹かれて読み始めた読者は落胆してしまうかも知れないと思ってしまいました。
【キャラクターの批評】
キャラの造形は良いと感じたのですが、前作に比べて問題点も多いと感じます。
主人公は浮気をする、ある意味「クズキャラ」としても描かれていますが、その性根は善良でもあります。
まずはココですね。恐らく「浮気をするクズキャラ」という時点で受け入れられない読者もいると思います。
性根が善良であったり、主人公の「暗い過去」などもありますが、それらを描写されればされるほど、まるで「言い訳」のようにも感じてしまいました。
「本当は良い奴なんだ」「実はかわいそうな奴なんだ」と、自己弁護をしてしまっているように映ってしまいます。
そして「ユミコ」と「SNSで知り合った彼女」などは説明不足に感じました。特に「SNSで知り合った彼女」に関しては第5話時点ではほとんど語られていません。
彼女たちと主人公の関係が分からず、その為に感情移入や納得感が阻害されていると感じます。
ここは「構成」の問題ですね。(後に語らせて頂きます)
ヒロインに関しても、基本的には非常に魅力的なキャラに描かれていると思いますが、1点だけ問題もあると感じました。
それは「主人公とのやり取りが強引に感じる」という事です。
「彼女に叩かれて、崩れたリップを血だと勘違い」して主人公に話しかけたヒロインですが、「血ではない」と判明したら安心して「名乗り」始めます。
いや、名乗らないでしょう。
そしてヒロインは「友達とはぐれた事に気付く」のですが、これも強引ですね。
後の展開で友人たちは「15分ほど離れた駅にいる」という事が判明するのですが、気付かなかったのはおかしいでしょう。
場所にも疑問を感じます。後にスマホで連絡を取るのですが、はぐれた事に気付かなかったヒロインはともかく、友人たちは「ヒロインを置いて、連絡する事もなく駅に移動した」という事になってしまいます。……イジメでしょうか?
主人公とヒロインの会話も「初対面にしては馴れ馴れしすぎる」と感じましたが、これはお話の都合上仕方ない部分ですね。ヒロインの設定が浮世離れしているので許容範囲だとは思います。
ただ最初の出だしが「ご都合感が強かった」せいで、ここにも違和感を感じてしまいました。
【文章・構成の批評】
文章は前作と同様に、ほとんど言う事がありませんね。
読みやすく、キャラの心情や設定の深みを自然と感じさせてくれる高品質な文章です。
ただ第1話で2点だけ、問題もありましたので指摘させて頂きます。
まずは「誰のセリフか分からない」という事です。
第1話は「ダブル浮気の発覚」から物語がスタートします。最初から4人ものキャラが登場するので、読者は誰が誰か把握できていません。セリフも、男か女かすら分からないものでしたので判別は困難です。
もう1点は「突然、視点が変更される」という事です。
本作は基本的に「主人公の一人称視点」で描かれていますが、第1話で「他のキャラの視点に突然変わる」という事が見られました。「一人称」で書かれるのなら、基本的には視点移動は無い方が良いと思いますね。
一文だけでしたが、その為に前後の文脈とも繋がらず、非常に読みにくい箇所となってしまっておりました。
それでは構成に移りますが、第1話の構成は非常に問題だと感じました。
まずは「キャラが多すぎ」ですね。これは【キャラクターの批評】で書いた通りです。特に「SNSで知り合った彼女」「ユミコの彼氏」の2人に関してはほとんど語られていません。
そして「設定が複雑すぎ」です。
主人公と「ユミコ」に関してはかなり複雑な関係で、これだけで1本の話が作れそうなほどです。(あまりに情報が多いので、ここでは割愛します)
また構図が「ダブル浮気」というのも問題に感じますね。これも見た目の問題を複雑化させ、「誰が悪者なのか」が読者に伝わりづらくなっていると感じます。
「主人公を一方的な悪者にしない為の措置」だとは思うのですが、「主人公がクズ」である事は作品に寄せられていたコメントへの返信でも作者さまは意識なされていると思いますので、ここでは「主人公は悪者」でも良かったと思います。(あくまで個人的な感想ですが。読者の主人公への好感は下がってしまうので良し悪しです)
総じてですが、「第1話での話が分かりにくい」と感じました。
物語の取っ掛かりとなる第1話で、このように分かりにくい構成は良くないと感じますね。
それ以降の展開は、ゆっくりですが非常に丁寧でツッコミどころはありません。
「サクサク進む展開を望むと言われるweb読者」との相性は良くないかとは思いますが、個人的には好感触です。
ただ、「オチ」と「ヒキ」は少し弱く感じましたかね。
【ストーリー・設定の批評】
ストーリーですが、「ボーイ・ミーツ・ガールの恋愛もの」である事は間違いないですね。
主人公は「浮気をするクズ」ではあるものの、その背景や心情が細かく描写されるので賛否は両論だと思います。
ヒロインは文句なく魅力的なので、主人公に好感を持てない読者もヒロイン目当てで読んでくれるかも知れません。
今後の展開は読めませんが、恐らくは「暗い過去を持つ主人公のトラウマを、ヒロインが解きほぐす」といったストーリーになるのではと思います。
「ユミコ」や「SNSで知り合った彼女」といった存在もいますので、ドロドロした愛憎劇に発展するかも知れませんね。
ハッピーエンドはもちろんですが、ビターエンドやバッドエンドもありえる内容ですね。人によって賛否は別れると思います。
設定ですが、序盤でありながら重厚で暗い設定が明かされます。
非常に丁寧に作られた設定だとは思うのですが、問題は【構成の批評】で述べた通り「第1話から見せすぎ」だという点ですね。
あまりに多くの情報が開示されますので、読者視点では理解が困難です。にも関わらず、重要な情報の説明が不足していると感じます。
設定そのものではなく、見せ方に問題があると感じました。
また問題というほどではない疑問点なのですが、主人公は「高校入学前に、両親を事故で亡くしている」という設定です。(作中では主人公は20歳です)
「主人公の保護者」については語られていませんが、誰かいるんですかね?(第6話以降で語られるかも知れませんし、描写が無くても問題はありませんが)
【総評まとめ】
総評ですが「文章は一級。主人公は好き嫌いが別れる。だが何より第1話が詰め込みすぎ」ですね。
今作では問題点を多く指摘しましたが、文章はweb作家の中では上澄みだと感じます。
感情の機微や心理描写が素晴らしく、キャラ同士の掛け合いも面白く読めました。
主人公に関しては「好き嫌いが別れる」とは書きましたが、「嫌う読者」は非常に多いと思います。
「キャラ小説」としては致命的とも感じますね。いっそ「クズ」に振り切った方が好感は増すのではないかと感じました。
「第1話」に関しては、これまでで述べた通りです。
「物語冒頭は分かりやすく」「続きが気になるフックを用意する」の2つが重要だと思います。
後者はともかく、前者については多大な問題があると感じました。
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