★(測定不能) 抽象玉座物語


タイトル:抽象玉座物語

キャッチコピー:抽象作家の旅

作者:木島別弥(旧:へげぞぞ)

URL:https://kakuyomu.jp/works/16816452221396656742


評価:★(測定不能)


【あらすじ】

 この物語は、玉座を探す旅である。偽物の玉座、本物の玉座、隠された玉座、失われた玉座を探す。この物語は、欧州の玉座文化が格好いいのが悔しいので、日本の格好いい玉座を十二種類考えたものである。舞台になる島は日本列島である。

 二十一世紀になっても世界にたくさん存在する君主制。王に会う経験を持つ庶民は少数派であるが、庶民が王に会った時にどのようなことを考えるかを記し、王への風刺とした。

 君主制を解体して、近代人権思想に融合するために、君主制の魅力を抽出するという目的でも執筆した。



【拝読したストーリーの流れ】

 まずはお詫びを申し上げます。

 本作は何というか……絵本か童謡のような作品に感じました。エンタメとしてしか作品を読む事のできない私には理解の難しい作品です。

 ですので申し訳ありませんが、★の評価は(測定不能)とさせて頂きます。


 また、本作のエピソードのナンバリングは「第一部」「第二部」という表記ですが、本批評内では「第1話」という風に呼称させて頂きます。



 東京の中にある「黒曜石の都」。

 そこに住む主人公「抽象作家」は不満と疑問を抱えていた。


 なぜ税金を払わなければならないのか?

 払った税金は何に使われているのか?

 それを決めている「神」とは何者なのか?


 「神の玉座」にたどり着いた「抽象作家」は「神」と話し、古文書の解読をして「黒曜石の都」の真実を知った。


 だが、まだ分からない事もある。

 それを知る為に「抽象作家」は旅に出て、「飛竜の谷」「楽器の都」「海底都市」など、様々な国の玉座を訪問するのだった……、という話でいいんでしょうか?



【タイトル・キャッチコピーの批評】

 タイトルは、これ単体を見た時に「どんな話か」が全く想像がつきませんね。

 『抽象』とは作中の主人公「抽象作家」を指すのだと思いますが、初見の読者には分かりません。

 『玉座物語』という言葉からは「王の座を奪い合う、政争を主題にした物語」を想像しましたが、本作は全くそのような話でもありません。



 そしてキャッチコピーですが、こちらも全く「どんな話か」が伝わりませんね。これでは「旅をする」という事しか分かりません。

 例えばですが、「ラブコメ作品」のコピーが「学園もの」というだけでは全く伝わらないというのと同じだと思いますね。



 タイトル・コピーの共に、「作品を伝える事」が出来ていません。さらに「キャッチ」をする為のワードも一切無いように思います。

 このタイトルとコピーを見て「読んでみよう」と思う読者は少ないのではないかと思いますね。



【キャラクターの批評】

 キャラですが、主人公の1人旅ですので他のキャラはスポットでしか登場はしません。

 その主人公ですが、よく分からないですね。


 まず行動原理が理解できません。

 第1話での「税金を払うのが嫌だ」という気持ちは理解できます。「税金を誰に収めているのか? 何に使われているのか?」を探る為に「神(王)に会いたい」というのも理解できなくはありません。

 ですが神に「どのように地上を治めているのか」という質問にをして「神は税収で地上を治めている」という答えを得て、その次の質問が「神は筋トレをしますか」って意味不明です。

 その後は「小学生のなぞなぞのような会話(本文から引用)」をして終わりです。


 神との謁見を終えて、古文書の解読をして「黒曜石の神の目的が金儲けだったのだ」と自分で勝手に納得してしまいます。

 そして「旅に出る事を決意する」のですが、私には全く理解不能です。


 行動原理以外では、思考もブレが発生しているように感じます。

 第1話で、友人の画家から「実は、この街の貨幣は、紙幣ではなくて、絵画なんだ」と教わり、主人公は絵画を求めます。

 ですが手にした絵画を見て気にする事は「売り値ばかり」です。

 結局は「お金が重要」であり、「絵画の価値はお金」でしかないという描写です。「この街の貨幣は絵画」という話は何だったのかと思ってしまいます。


 最後に、主人公は「小説家」という設定ですが、立ち寄った国々では最後に「古文書」や「口伝」、「楽譜」などの解読を行います。

 「小説家」というより「学者」や「研究者」の方がしっくり来ると感じました。



【文章・構成の批評】

 文章は基本的に読みやすく、特に大きな問題は感じませんね。


 問題点という程ではありませんが、「マジか」「ビビった」などの言葉が地の文で使われる際に「作風と合っていないのでは?」と感じた事と、「読点の多い文章がある」という事が気になったくらいですね。



 構成ですが、本作はかなり独特の書き方をされています。

 最初に「小見出し」のような一文から始まり、数十~数百文字程度の文章で終わります。これを「1話の間に数十回繰り返す」という手法です。

 この手法自体は悪くないと思いましたが、明らかに通常の作品とは違いますので好き嫌いは分かれそうですね。


 また本作は「1話で1国の話を書く」という構成をしていますが、その為か1話の文章量がやや多めです。

 特に第1話は、主人公の説明も含まれるからか7,458文字もあります。

 独特な構成や作風と相まってか、「1話切り」は多いと感じました。


 あくまで「私なら」ですが、「小見出し」をエピソードタイトルにして、それを1話としますね。

 そして元々の1話(第1話でいうなら『第一部 黒曜石の都』)を、章のタイトルにするでしょうか。


 独自性は重要ですが、読み手の事も考えるべきだと思いますね。でなければ読まれない事を覚悟した方が良いでしょう。



【ストーリー・設定の批評】

 ストーリーなんですが、【拝読したストーリーの流れ】で申し上げた通り、私は本作を絵本か童謡のようだと感じました。

 もしこれが正解であるならば、第1話には少し問題があるように感じます。


 第1話では「税金」の話から始まり、主人公がその不満をつらつらと語ります。

 最初、私は「政治に対する風刺作品」かと思ってしまいました。子供向けの話ではありませんね。(文体や文字数も子供向けとは思えませんが)

 「大人向けの絵本」というものに近いのでしょうかね?


 また、「小説に政治的思想を持ち込んで欲しくない」という読者も相当数いると思われますので、この点からも「1話切り」を加速させているように感じました。



 それ以外としては、第5話までで5つの国が登場するのですが、各国にはそれぞれ「国を支配している者たち」が王とは別にいます。

 「黒曜石の都では鑑定士」「飛竜の谷では飼育係」「楽器の都では端末操作係」「捨てられた都では水道局員」です。


 ですが「海底都市」だけには支配者がいません。

 伏線ならば良いのですが、そうだとしたら少し露骨ですね。好き嫌いはあるでしょうが、私個人としては「もう少し上手く隠した方が」と思ってしまいました。

 伏線でなかったなら手落ちですね。



 それでは設定ですが、独特な世界観は素晴らしいと思います。

 ファンタジーというよりはメルヘンといった雰囲気で、本当に絵本のようだと感じました。


 ですが、その為に「東京」「出雲」「日本」といった単語が浮いてしまっています。

 こちらも伏線の可能性はありますが、本作にはデメリットしかないように感じました。

 ジャンルも「現代ファンタジー」で登録されていますが、完全オリジナルの世界にして「異世界ファンタジー」か「詩・童謡・その他」とした方が良いと思いますね。



【総評まとめ】

 それではまとめたいと思いますが……。う~ん、完全に私の守備範囲外の作品なんですよね。

 その為、批評はしてみましたが的外れの可能性も高いですし、評価もできません。


 私には本作の良し悪しは分かりませんが、「1話切り」が多い理由は分かると思います。それは【構成の批評】【ストーリーの批評】で述べた通りですね。


 本作はあまりに独特な構成と世界観を持ち、更に第1話は「社会風刺作品」のように誤解される恐れがあります。

 おまけに7,000文字強の文字数ですから、「続きを読もう」と思われる読者は少ないでしょう。


 世界観はともかく、他の部分を改善すれば多くの読者に読まれる可能性もあると思います。(保証はできませんが)

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