★2 カラオケでたまたま相席した美少女が、推しの超人気歌い手だったんだが


タイトル:カラオケでたまたま相席した美少女が、推しの超人気歌い手だったんだが

キャッチコピー:推しの超人気歌い手と無自覚イチャラブ?

作者:nira_kana kingdom

URL:https://kakuyomu.jp/works/16818093078845488665


評価:★2


【あらすじ】

どこにでもいる普通の男子高校生、増田幸一。いつものようにベットで寝転がりながらYouTubeを見ていると、神童アリサという無名の歌い手のチャンネルを発見する。彼は彼女の歌声に感化され、長文の応援コメントを打った。それから1年後、彼はカラオケに行くのだが、まさかの相席のお願いをされる。渋々受け入れ、カラオケボックスに入ってきたのは……


奇想天外、予測不能!歌い手、人気歌手?そんなの関係ねーじゃん!好きになって恋をしたって何が悪い?笑いあり、涙あり、超大作、感動ラブコメディ!



【拝読したストーリーの流れ】

 本作は第0話がありましたので、第4話までの批評となります。



 ボカロが好きなだけで、他には何も趣味も取り柄もない主人公「増田幸一」。

 いつものようにダラダラとYouTubeを見ていると、「神童アリサ」というチャンネルを見つける。

 全く再生数の伸びていない「神童アリサ」のチャンネルだったが、その歌は「幸一」の琴線に触れ、大ファンになってしまう。


 1年後、「幸一」の見立ては正しく、「神童アリサ」は空前の大ヒット。

 密かに鼻を高くしていた「幸一」は気分良く1人カラオケを楽しむ事に。


 だが、そこに受付からの連絡があり「混雑しているので相席して欲しい」と言われたのだった。

 最初は気乗りがしなかったが、相手が可愛い女の子と知って了承する事に。

 こうして出会った女の子「新藤愛華」は、実は……、といったお話でしょうか。



【タイトル・キャッチコピーの批評】

 タイトルは「説明文タイトル」ですね。初期設定が非常に分かりやすいと思います。


 この手のタイトルの問題点は「嫌う人が一定数いる」という事と「タイトルに深みがない」という事になると思います。

 本作もその例に漏れませんが、そこを割り切っているのなら良いタイトルと言えるのではないでしょうか。



 続いてキャッチコピーですが、こちらは「無自覚系のイチャラブもの」であるという説明ですね。

 こちらも「無自覚系主人公」を嫌う層は一定数いますので、そこが問題ではあります。



 タイトル・コピーの両方が「本作はこういう作品ですよ」というアピールと説明になってますね。

 「嫌う層が一定数いる」とは申しましたが、同様に「好きな人も一定数いる」と思いますので、タイトル・コピーの時点で読者が作品を選別する事ができるのは良いですね。



【キャラクターの批評】

 キャラですが、申し訳ありませんが私の意見としては「あまり良いとは思わない」というものでした。

 その理由としては「共感性の低さ」があります。


 まず主人公ですが【拝読したストーリーの流れ】で書いた通り、「カラオケで相席を提案されて一度は断ろうとするが、可愛い女の子と知って掌を返す」という流れです。

 ですが、その続きとなる第2話では「女子に免疫のない主人公は、しどろもどろ」になってしまいます。

 「ナンパ野郎」なのか「むっつり男」なのかがブレて、感情移入が阻害されます。


 次にヒロインですが……正直、何とも言えませんね。

 たぶん、分類的には「チョロイン」ですかね?(まだ描写が少ないので確証はありませんが)

 ヒロインとしての魅力はともかく、共感のできるキャラデザインではないと思います。


 「共感性が低い」のなら、別の部分でキャラの魅力を出す必要があるのですが、私には他の部分でも魅力は特に感じませんでした。

 主人公かヒロインのどちらかに、強烈な個性でもあれば良かったと思います。(ちなみに「超人気の歌い手」や「可愛いなどの外見的特徴」は、「魅力的な個性」ではなく「ただの設定」だと考えています)



【文章・構成の批評】

 文章は多少の粗もありますが、軽快で読みやすい文章です。本作はコメディに寄ってますので作風とはピッタリですね。


 特徴として、「実在のアーティストや楽曲名をもじって登場させる」という事が非常に多いのですが、ここは好き嫌いが分かれそうですね。

 私は「少しクドいかな」と思いましたが、好きな人は「もっとやってくれ」となると思います。


 問題点としては、「カギ括弧内で改行・空行がある」「感嘆符の後に1字空けがない」「1字下げが2字下げになっている」などが僅かずつですがある事ですね。

 基本的にはちゃんとできていますのでチェックミスだと思います。


 あとは「必要の無い文章が多い」と感じました。

 第0話の「そのせいで母親に怒られたのはまた別の話」という一文は要らないと思いますし、第1話での「いらっしゃいませ、カラオケのご利用ですか?」って、そんな事を聞いてくる店員には出会った事がありません。複合施設の受付なら別ですが、そのような描写はありませんでした。(そもそも受付との会話の必要性も感じません。「受付を終えた」と地の文の一言で済むと思います)


 どうしても必要な描写であったなら、「なぜ、どう怒られたのか?」や「複合施設である事の説明」などが必要でしょう。

 そこまでする必要がないのなら「必要の無い描写」であったと思います。



 では構成に移りますが、1話1話は短いながらも伝えたい事がハッキリと伝わります。(第0話~第3話は1500文字未満。第4話は2312文字)

 エピソード内でも、特に大きな問題は見当たりませんね。


 ただ、「ヒキ」と「オチ」は弱いと感じます。

 これは構成だけの問題ではなく、「タイトルで序盤のネタバレが起きている」からだと考えます。

 すでに分かっている内容をなぞるだけですので、意外性は皆無です。

 これは仕方のない事かも知れませんね。



【ストーリー・設定の批評】

 ストーリーは、タイトルとコピーの通りですね。

 話が進めば違う展開もあるかもしれませんが、第4話までの時点ではタイトル以上の展開まで進んでいません。(厳密には、まだ「ヒロイン=推しの歌い手」とも判明していません)



 そして設定ですが……非常に「強引な設定」だと感じてしまいました。

 カラオケで「混んでいるから相席」なんて、店員から提案される事があるとは思えません。理由は言うまでもありませんが「人数が増えると歌える回数が減り、明確な不利益がある」という事と「密室なので、トラブルや犯罪などが起こりやすい空間である」事の2つが挙げられます。


 「絶対に有り得ないとは言えない」と仰る方もいるかも知れませんが、私は「0%ではないというだけで、普通はあり得ない」と考えます。

 そして「普通はあり得ない状況」を説明もなく物語に組み込む行為を「ご都合主義」であると感じます。


 「主人公とヒロインが出会う」のが目的なのですから、舞台が「カラオケ」である必要はなかったと思いますね。(ここを変更すると、タイトルの変更も不可欠ですが)



【総評まとめ】

 総評ですが「軽快な文章は読み味が良い。だが、それ以外は詰めが甘い」ですね。


 キャラやストーリーには特筆すべき点はありません。今後の展開は未知数ですが、「最初の5話での掴み」では弱いと言わざるを得ませんね。

 設定は、個人的には見直した方が良いと思います。ヒロインとの出会い方なんて他にもいくらでもあるのですから、わざわざ「無理のある状況」を選ぶ必要はないでしょう。


 文章は無駄が多いと感じますし、構成で「ヒキ」と「オチ」が弱くなっているのも展開が遅いからだと思います。

 無駄を削ってテンポを良くすれば話数も圧縮できて、次話への引きとなる終わり方もできるのではないでしょうか。



【追記】

 本作は作者さまの要望により、第6話までを読んで追記します。



 第6話までを拝読いたしました。

 まず、第5話はヒロインの視点となっておりますね。

 こちらでは地の文が少し落ち着いた印象となって、テンション高めの主人公との違いが出ていて良かったと思います。

 ヒロインの掘り下げができて、少しずつですが魅力が出てきたように感じます。


 「惜しいな」と感じたのは、「活動を辞めようとした時に、主人公からもらったファンメール」の内容が書かれていなかった事ですね。

 「長文」という設定ですので全文を書く必要はありませんが、一文だけを「読者の心を掴むような言葉」を載せれば、主人公・ヒロインへの共感性も増したのではないかと思います。(その「言葉」を考えるのは簡単ではありませんが)


 あとは細かいですが、私が指摘した「カラオケで相席はあり得ない」というのをヒロインにツッコませていたのは良いと思います。やはり、普通ではないですからね。

 ただ、これもやはりなのですが……「店員が相席を提案したのは、依然不自然なまま」ですので、やはり「無理のある状況」には変わりがありません。


 ヒロインがツッコむ事で緩和はされましたが、あまり良くない設定であるという事実は変わりませんね。

 設定をそのままでこれを完全に払拭する為には「店員が相席を提案した理由」を示す必要がありますが、店員がモブキャラならしない方が良いですね。(実は重要キャラで……という設定なら文句はありません)



 続いて第6話ですが、主人公の視点に戻り、ヒロインとの関係がこれから始まるという示唆ですね。

 ここは「良くも悪くも順当」といった感想です。


 「読者の期待に応え、予想通り」といった感じでしょうか。

 むしろ予想通り過ぎて話に起伏を感じず、拍子抜けしていました。


 ですが後半で、「大手レコード会社の視点」に変わって一変します。

 まず社長のキャラクターが素晴らしいです。口調だけでキャラが立っています。

 社長の最初のセリフを引用します。


「当たり前ダね。僕を誰だと思ってるのカな?」


 一文字だけカタカナに変える事で、まるで「エセ外人」か「人に化けた魔物」のような口調になってます。このインパクトは強烈でしたね。


 また、その後の展開も素晴らしいです。

 「人気の歌い手たちを戦わせて、日本一の歌い手を決める」なんて、創作ならではの展開ですね。ワクワクします。

 社長のキャラも含めて、本作のようなラブコメ作品で見られる展開とは思っておりませんでした。完全に「予想外」です。


 ただ、そのイベントのネーミングは賛否がありそうですね……。

 「歌唱絶姫決戦かしょうぜっきけっていせん」って、『シン〇ォギア』にしか見えません。

 個人的な意見としては「否」とさせて頂きます。


 【文章の批評】で指摘したような「実在のアーティストや楽曲名をもじって登場させる」という事でしたら、「その場限りのネタ」として受け入れられます。

 ですが、恐らく「本作で重要な位置を占めるであろう大舞台のネーミング」にパロディを持ってくるのは良い手段とは思えません。


 ただこれはあくまで私個人の意見であり、喜ぶ読者も少なからずいると思います。

 願わくば私の意見に左右されるのではなく、「作品にとって何が最良か」を考えた上の断固たる決意で決定して欲しいですね。



 それでは追記分の総評ですが、「ヒロインの深堀りはともかく、第6話でのヒキが強力」ですね。

 第4話までの総評では「キャラやストーリーに特筆するところはなく、5話(第4話)までのヒキは弱い」と書きましたが、第6話で盛大に強く引っ張ってきましたね。

 あまりに強いヒキに感心いたしましたので、★2に評価を修正いたします。


 ただ「主人公とヒロインのキャラが弱い」のは変わりませんので、ここは何らかのテコ入れが必要かと思います。

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