151~160作品の批評
★0 異世界こども食堂『わ』
タイトル:異世界こども食堂『わ』
キャッチコピー:『お腹がすいて困っていたら、オヤジに相談してくれ』
作者:ゆる弥
URL:https://kakuyomu.jp/works/16818093085013098838
評価:★0
【あらすじ】
困っていたらこども食堂『わ』に来るといい。
料理も食べれて相談もできる。
そんな居場所が、異世界にもあったら素敵じゃないだろうか。
リュウは、気が付いたら異世界にいた。
食堂をやっていた老夫婦に助けられたらしい。
やめるという食堂の後を継ぐ決意をする。
突然現れた痩せた子供。料理を出してあげると泣いて喜んだ。
この街には他にも苦しんでいる人がいる。
苦しんだ人の居場所を作るべく奮闘する物語。
【拝読したストーリーの流れ】
目が覚めると、異世界の見知らぬ家にいた主人公「リュウ」。
家の主人の老人は、「リュウ」が道端で倒れていたと言う。
老人は料亭を営んでいたが、高齢で引退するそうだ。
元々料理人であった「リュウ」は、老人の店を受け継ぐ事に。
そして老人のレシピを覚えようと料理の試作を作っていると、香りにつられてか孤児がやってきた。
不憫に思った「リュウ」は、孤児たちに試作の料理を与える。
日本で育った「リュウ」は、貧しい子供たちを助けたいと願って「こども食堂」を経営する事を決意するのだった……、といったお話でしょうか。
【タイトル・キャッチコピーの批評】
タイトルはシンプルで良いですね。
『こども食堂』という単語を見て私は最初「子供が経営する食堂の話か?」と勘違いしてしまいましたが、実在する「こども食堂」です。分かる人は勘違いしないと思いますし、さしたる問題ではありませんね。
『わ』という屋号も趣があって良いと思います。
「人の輪」を意味するという何の捻りもない名前ではありますが、ここは奇抜さよりも正道で良かったと思いますね。
続いてキャッチコピーですが、これは誰のセリフかが分からないですね。
「主人公が自分の事を『オヤジ』と自称している」のか、「誰かがオヤジ(主人公)の事を言っている」のかの区別がつきません。
ただ、タイトルで挙げた「勘違い」の防止にはなると思います。
このコピーを見て「主人公が子供だ」と考える人はいないでしょう。
タイトル・コピーの共に、少々インパクトに欠けると思います。
タイトルの雰囲気は良いと思いますので、コピーの方で読者を惹きつけるような言葉があればと思いますね。
【キャラクターの批評】
キャラですが、基本設定は悪くありません。
日本人の料理人主人公、後継ぎがいない店主、空腹の孤児、孤児の姉のヒロインですね。どれもテンプレではありますが、それは王道という事でもあります。
話が組み立てやすく、読む方も理解しやすいので良い設定です。
設定面であえて言うなら「主人公の年齢が分からない」という事でしょうか。
ヒロインらしき登場人物もいますし、孤児に対して父性を抱いている描写もありますので、ある程度の年齢は見せた方が良いと思います。
ですが設定の良さとは裏腹に、本作のキャラはもれなく「操り人形」です。
このように断じた理由を第1話から説明いたします。
第1話では、「主人公が異世界で目を覚ます」~「店を継ぐ事が決定する」までが書かれていますが、この間は「1日以内の出来事」です。
ここでは特に「店主が問題」です。
彼の立場で考えてみて下さい。出会ったばかりの見知らぬ他人に、後継ぎがいないからと自分の店を譲ろうと思いますか? 「後継ぎがいない」以外に理由は示されていません。店主にとっては、主人公の料理の腕も不明です。
作品の雰囲気からあり得ない展開だと思いますが、私は「店に莫大な借金などがあり、主人公は騙されているのでは?」なんて考えてしまいました。
その後も、主人公にしてもヒロインにしても「ストーリーの為に行動している」ように見えてしまいますね。
特に主人公は、「料理の腕は(元)店主に及ばない」「経営経験はない」「異世界なので、法律どころか常識もない」はずなのに「こども食堂を作る」なんて、正気とは思えませんね。
そもそも「こども食堂」は、寄付や補助金などの支援があって成立するもので、個人で行うような事業とは思えません。
それ以外としては、料理人の主人公なのに問題発言がありました。(地の文ですが)
「このミルクは何のミルクかはわからない。後でおやっさんに聞いておこう。まぁ、なんでもいい」とあったのです。(改行は省略してます)
とても料理人のセリフとは思えませんね。
最後にツッコませて頂きますが、(元)店主が主人公に「リュウなら、必ず成功すると思うでのぉ」と言って別れますが……。
「物語の主人公なので成功する」とは思いますが、「リアルなら失敗する未来」しか見えません。
【文章・構成の批評】
文章ですが、読めはしますが決して良文とは言えません。
その理由としてはまず、「文章が淡白に感じる」のが原因だと思われます。
本作は一人称で語られていますが、主人公の性格設定の為か三人称のように感じる記述も多く感じます。
これは「説明的な文章が多い」のも理由だと思います。地の文だけでなくセリフにも同じ事が言え、「説明セリフ」が非常に多いですね。
これらの為に、読者の視点が遠くに感じます。
そのせいか、キャラの感情的なセリフも「どこか空々しく」感じてしまいました。
また、「適切な表現ではない」と感じる部分も多いと感じました。
例えば「料亭」という言葉ですが、「主に日本料理を出す高級飲食店」の事ですので異世界の食堂に相応しい単語ではありません。
「バイト」という単語も出てきますが、異世界というイメージを損なっているように感じるので変えた方が良いと思います。
他にも、ヒロインの身体描写に「凹凸のはっきりとした身体」とあった少し後に「ガリガリだ」と、矛盾するような表現もあります。
最後に、「誤字」も少し多かったですね。
それでは構成に移りますが、第5話までの全体として見れば悪くはないと思います。
1話1話のテンポも良く、ストレス無く読み進められると思います。
ですが、細かい構成に関しては「強引」だと感じました。
テンポを重視した結果か、「本来必要だと思う手順を飛ばしている」ように感じてしまいます。
【キャラクターの批評】で述べた「店主が主人公に店を譲る展開」などがそうですね。店を譲るなら、それに相応しい理由付けが必要だと感じます。
また、1話の締めくくりの「ヒキ」と「オチ」も弱いと感じます。
これは「起承転結」で言うと、「承」で終わっている事が多いからだと思われます。言うまでもありませんが、「ヒキ」なら「転」、「オチ」なら「結」で終わるのが最適だと思います。
「承」で終わってはいけないという訳ではありませんが、意識した方が良いと思いますね。
【ストーリー・設定の批評】
ストーリーは、「異世界での食堂経営もの+こども食堂」ですね。
「食堂」という部分は同じですし、親和性は高いと思います。先の展開もある程度、想像がつくのも良いと思いますね。
タグには「スローライフ」「ほっこりする話」などがありましたが、シリアス展開にする事もできますね。
「異世界の食堂経営もの」はすでにお馴染みのジャンルですし、「こども食堂」も見方を変えれば「孤児院運営もの」に近いと思います。
両方とも王道とも言える確立したジャンルですので、ストーリー面に関しては問題は感じませんね。
問題は設定面ですね。
「食堂経営もの」である本作ですが、「経営面」に関しては非常におざなりです。
「主人公が店を受け継ぐ」という点に関しては【キャラクターの批評】で述べた通りですが、その後も酷いものです。
(元)店主が止めるのも聞かず、主人公は孤児にご飯を与え、お礼にやって来た孤児の姉2人を従業員として雇います。(開店前の出来事です)
主人公の傍若無人さと、考えのなさが際立って見えます。
また、「孤児たちの生活」も謎です。
孤児たちは「食べるものにも困る」という状態なのですが、あまり深刻に感じません。それは「主人公のいい加減な行動が容認されているから」です。
「人助け」とは、自分の地盤をしっかりと固めた上で行うから説得力があるのだと思います。「ただの同情だけ」では上手くいくはずがありません。
ですが上手くいってしまう(であろう)本作の世界は、安っぽく映ります。
本作では「技術レベルが高い」という設定となっているのも良くないと思います。
動力は魔石ですがコンロがあり、シャワーもあり、氷を気軽に取り出している事から冷凍庫もあると思われます。
現代日本と変わらないレベルの物がある事が窺えます。ここは不便にした方が物語が作りやすいと思いますね。
最後に些細なツッコミですが、第5話で(元)店主夫婦は主人公に店を任せて引っ越してしまいますが……彼らは今後、どのような生活を送るのでしょう?
仕事を終えてしまいましたが、老後の貯えが十分にあるという設定ですかね? 孤児を放置するような世界観で年金制度があるとも思えませんが……。
【総評まとめ】
まとめますが、「雑」ですね。(最近、この結論が多くて済みません)
ストーリーとキャラの設定自体は悪くありません。「こども食堂」というのも良いと思います。
ですがそれ以外は「何も考えずに適当に作った」とすら感じます。
特にキャラですが、「まるで登場と同時にこの世に生まれた」かのように、物語の前の生活が想像出来ません。そして「退場後の生活」も考えているように見えませんでした。
主人公の行動も行き当たりばったりですし、それを咎めるキャラも存在しません。
それでも上手く回るこの世界は、非常に薄っぺらい世界に感じます。
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