★2 【完結】俺が通ってた高校は人外魔境


タイトル:【完結】俺が通ってた高校は人外魔境

キャッチコピー:少々拗らせてるけど平凡な高校生の俺がラブコメに巻き込まれる物語

作者:はるゆめ

URL:https://kakuyomu.jp/works/16818093085906942382


評価:★2


【あらすじ】

日常の裏側には想像もしなかった事実(隣のクラスの女子が何百年も生きてる吸血鬼だったり、隣の席の女子が人類とは別の進化を遂げた存在だったり、後輩女子がいわゆる神様だったり)があって、俺の「彼女が欲しい」願望はどうなる?



【拝読したストーリーの流れ】

 本作のエピソードのナンバリングは「ep.1」という表記にされていましたが、本批評内では「第1話」という風に表記させて頂きます。



 昭和のいつか。どこかにある高校。季節は春。


 少し自堕落に高校生活を送る主人公「○○」はある日、保健室でサボっていると吸血鬼の少女(実年齢は数百歳)「佐藤優子」と出会い、血を吸われてしまう。


 それ以来、小学校からの幼馴染「飯田奈美」は、ヒトとは違う進化を遂げた別種族である事が判明し、さらに次々に……。


 ただ彼女が欲しいと願うだけの「○○」の高校生活はどこへと向かうのか……、といったお話でしょうか。



【タイトル・キャッチコピーの批評】

 タイトルですが、本作の設定を端的に表していますね。短文ですが「説明文タイトル」に近い雰囲気を感じます。


 ですが「作品の具体的な内容」は伝わらないと思いますし、何よりインパクトに欠けるタイトルであると思います。

 具体案は出せませんが、もう少し良い名付けができればと思います。



 続いてキャッチコピーですが、こちらは作品内容の説明ですね。タイトルの補完となる点は良いと思います。

 ただ、こちらを見ても「作品としては何も特徴を感じられない」のは問題だと思いますね。「少々拗らせている」では特徴としては弱すぎますし、「平凡な高校生がラブコメになる話」なんて、「ラブコメ」の大半がそうです。


 また少し長い文章ですので、どこかに読点を置いた方が良いと思いますね。



 タイトル・コピーの共に、インパクト不足だと感じました。

 コピーの文字色が「黒」に設定されているのも目立たない要因の1つだと思います。



【キャラクターの批評】

 キャラですが、不思議な存在感を放っていますね。

 ヒロインたちの「吸血鬼」や「別種族(?)」といった、記号的なキャラ付けがあるのは確かなのですが、彼女たちも含めて、主人公や友人にも際立った個性はありません。「よくあるキャラ付け」だと思います。

 にもかかわらず、キャラの1人1人が強い存在感を出しており、それぞれに個性と印象を残しました。


 これは、キャラを非常に丁寧に描写しているからだと思いますね。

 「特徴のない普通のキャラ」でも、「見せ方」や「他キャラとの差別化」「作中の役割を明確にする」などの工夫で良く見える好例だと思います。



 唯一、難点というべきところを挙げるとすれば「主人公のキャラ設定に若干のブレがある」という事でしょうか。

 本作は各エピソードの最後に必ず「ああ彼女が欲しい」という一文で締め括られていて、そこから「主人公は女に飢えている」というキャラ付けを感じられます。


 ですが実際の主人公はそこまでガツガツしておらず、ヒロインたちに好意を向けられてもどこか冷ややかです。(自分の好みとは少し違うという理由はあるのですが)

 ヒロインたちへの態度はともかく、それ以外でも「特にガッツいている」という描写はありませんでした。



 最後に、本作の特徴として「主人公の名前を伏せている」というものがあります。

 作中では一貫して「○○」と呼ばれており、その本名は不明です。

 最初は「主人公の個性を消して、読者の感情移入を促す意図」だと思ったのですが、それにしては主人公の個性が強すぎるように思います。

 どういう意図であったのか、できれば作者さまにお尋ねしてみたいですね。


 また、この事で「主人公の特別感」は際立っていますが、「⬛︎⬛︎高校」や「⬜︎⬜︎市」という書き方も同じようにされている為に「特別感」が薄れてしまったように感じます。



【文章・構成の批評】

 文章は、基本的に読みやすく理解しやすい良文です。

 ただ、2点ほど問題点もあると感じました。


 1点目は「セリフの間に空行が無い事」です。

 会話が連続する場面がいくつかありましたので、そこは少し読みにくかったですね。

 空行を設けるか、間に地の文を挟む事で解消できると思います。


 もう1点は、たまに「会話の流れから一度話が逸れてしまい、理解しにくい場面がある」という事です。

 この説明では分からないと思いますので、本文から引用します。

――――――――――――――――――

「あの子、どこからの転入だ?」

「ほほう、◯◯も黒瀬瑛子にやられたか?この浮気者め」

「そんなんじゃねぇよ。何だ浮気者って?」 

「飯田の妹を泣かすなよ。俺、中学の時に目をつけてたんだから」


 ちなみにこの酒巻、彼女がいたことはない。俺もだが。


「しつこいな、飯田の妹とは無関係。妄想もほどほどにしとけ」


 あの夜ろくろ首みたいに伸びる腕に拘束された記憶が蘇る。俺たちとは違う生き物。地球にいる生物は全て共通の祖先から枝分かれしてきたそうだが、その途中でヒトとは別の進化を遂げた“もうひとつの人類”。


 子どもの頃見た特撮テレビ番組で先住人類を現世人類が海の底へ追いやったという話を思い出す。それとは違うんだろうが、飯田達は俺たち人類をどう見てるのか。


「おいおい、もの思いに浸っちゃってどうした?黒瀬瑛子に一目惚れかぁ?」

「違うわ」

「黒瀬瑛子は⬛︎⬛︎高校だよ、この浮気者」

「そうか」

――――――――――――――――――

 お分かり頂けましたでしょうか? 「あの子、どこからの転入だ?」との質問から「黒瀬瑛子は⬛︎⬛︎高校だよ、この浮気者」という回答までに大量の文章が挟まれています。

 それが最初の疑問に関連する事柄ならまだしも、別人の話題です。


 これでは回答を得られる頃には最初の質問を忘れてしまい、まるで話が飛んでしまったように感じてしまいます。



 最後にですが、【キャラクターの批評】で述べた通り、本作は各エピソードの最後に必ず「ああ彼女が欲しい」という一文で締め括られています。

 それと同様に第3話を除いて、各エピソードの冒頭では「昭和のいつか。どこかにある高校。季節は春の終わり」という一文から始まります。


 こういう、毎回同じ始まりと終わりをするというのは良いですね。

 話が進んだ時に一文だけ単語を変えるなどをすれば、作中の変化を見られて更に良いですね。

 例えば「令和のいつか」なんてすれば、20年以上の月日が流れた事が分かりますね。(たぶん、今後のエピソードで実際に行われているのではと思います)



 では構成ですが、本作の第6話までは各エピソードタイトルに「〇人目」とあり、ヒロインを1人ずつ紹介する形のようです。

 第7話以降はこの法則が見られませんので、ここまでで紹介される3人がメインヒロインという事なのだと思います。


 それぞれのヒロインの紹介に焦点を当てているので表現したい事も理解しやすく、キャラの動向も自然です。

 サブキャラや登場済みのヒロインも出てきて、決して空気ではないのも良いですね。


 難点を言えば、各エピソードの終わり方の「ヒキ」と「オチ」が弱いと感じる所でしょうか。

 特に「オチ」が弱く感じ、全く一段落ついた気がしません。

 ここは少し意識をした方が良いのでは、と思いますね。



【ストーリー・設定の批評】

 ストーリーなのですが、何とも言い難い雰囲気の作品ですね。

 コピーに「ラブコメ」とありますが、一般的なラブコメとは少し雰囲気が違いますね。「コメディ」は控えめに感じます。

 ですが「恋愛もの」とするには主人公のキャラが軽く、重い雰囲気は全くありません。


 近い雰囲気の作品としては『化〇語』の「シリアス抜き」ですかね?(第6話以降はシリアスになる可能性も十分にありますが)



 そして設定ですが、「人外ヒロイン」については悪くないと思います。まぁ、これ自体はよくあるネタですので良いとも言いませんが。

 あえて言うなら「人間とは別の進化をした種族」というのは珍しいと思います。


 ですが、時代設定と「見せ方」に関しては素晴らしいと感じました。

 【文章の批評】で述べましたが、本作の冒頭は「昭和のいつか。どこかにある高校。季節は春の終わり」で始まります。

 「昭和のいつか」って、かなり曖昧だと感じませんか? 昭和は64年もありますし、初期の方だと戦前になってしまいます。


 ですが、作中での様々な描写からおおよその時代が分かります。

 恐らくは1970~80年代だと思われます。(この推測だと、先ほど例に挙げた「令和のいつか」にすると30年以上の時間経過になりますが)


 具体的な説明をせずに、ヒントとなる描写だけで世界観を説明するのは非常に良いですね。(この評価は【設定】ではなく、【文章・構成】でするべきかも知れませんが)



【総評まとめ】

 まとめますが、「非常に丁寧に作られた良作」であると思います。

 決してキャラ・設定・ストーリーに強烈な個性や魅力はありません。文章・構成も基準以上ではあるものの、難点もあります。

 しかし、それでも「面白い」と感じさせる魅力がこの作品にはあります。


 ただ……現時点では★0、PV699しかありません。

 確かにweb小説で流行りのジャンルとは違うと思いますが、誰も評価していない事に驚きを隠せません。(初投稿日は2024/10/1です)


 好みは別れる作品かとは思いますが、すでに完結済(全72話、約20万文字)ですので、興味を持たれた方は一度読んでみてはいかがでしょうか?

 評価はされていませんが、きっと「面白い」と感じる読者は多いものと思います。

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