★0 青春交響曲 (Aoharu-Ensemble) 𝄢 〜ガキ大将と陰キャ少女〜


タイトル:青春交響曲 (Aoharu-Ensemble) 𝄢 〜ガキ大将と陰キャ少女〜

キャッチコピー:もう、楽器なんてやめてやる!! ガキ大将×内気な転校生×音楽コメディ

作者:迷M _りみ

URL:https://kakuyomu.jp/works/16818093084752505489


評価:★0


【あらすじ】

「もう、楽器なんてやめてやる!!」

どんな時でもハチャメチャに遊べ!がモットーの12歳のガキ大将、吉野陽介(よしのようすけ)は、音楽の魅力に引かれて楽器を始めたが、ある日突然やめると宣言する。そんな彼のクラスに、新たに転校生がやってきた。彼女の名は中村美月(なかむらみつき)。内気でありながらも、音楽に対して純粋な愛情を持つ少女だった。


その後、陽介は美月に目を向けるようになり、彼女が自分に話しかけてくれるのを期待しながら、何かとイタズラを始める。美月は陽介の突拍子もないアプローチに戸惑いながらも、徐々に心を開くことができ、二人の距離は少しずつ縮まっていく。しかし、楽器への情熱を失った陽介と、音楽を深く愛する美月との間には、まだ大きな壁が立ち塞がっていた…。



【拝読したストーリーの流れ】

 本作には『プロローグ』がありましたので、第4話までを読んだ批評とさせて頂きます。



 音楽が好きだった小学生の主人公「吉野陽介」は、ある日の教室で「もう、楽器なんてやめてやる!!」と宣言した。

 突然の宣言に驚くクラスメイトたちだったが「陽介」の決意は変わらない。


 だが「陽介」が宣言した日にやって来た、転入生の「中村美月」も音楽が好きな少女で……、といったお話でしょうか。



【タイトル・キャッチコピーの批評】

 タイトルは非常に良いですね。『青春交響曲』なんて、普通に商業作品でも使われそうなタイトルです。

 「青春もの」である事が一目瞭然ですし、字面や響きも良いです。

 音楽がテーマの1つである本作では「交響曲」も、単なる雰囲気だけの言葉ではありませんね。


 ただ、(Aoharu-Ensemble)は少し読みにくいですね。

 少し注意をして読めば「アオハルアンサンブル」だと分かると思いますが、ローマ字と英語が混ざっているのもあって、直感的に読める読者は少ないと思います。


 また「𝄢」の記号を使用するのは作品テーマとも合致していて良いと思うのですが、こちらもその意味を知る読者は少ないと思います。(私は知らなかったので調べました。「音符の高さを示す記号のひとつ」らしいですね)


 最後に『〜ガキ大将と陰キャ少女〜』の部分ですが、本編の第4話までを読んでの感想ですが、2人とも「ガキ大将」、「陰キャ」と呼ぶには少し齟齬を感じました。

 主人公はイタズラ好きですが「ガキ大将」とまでは表現されていませんし、ヒロインも少し静かな雰囲気ですが「陰キャ」という描写は無かったと思います。



 次にキャッチコピーですが、こちらも悪くないですね。

 『もう、楽器なんてやめてやる!!』と『音楽コメディ』で、小さな矛盾が起きていますし、『ガキ大将×内気な転校生』で「ラブコメ」だという事も伝わります。(タイトルで『陰キャ少女』とありますので)


 個人的には「ジャンルやキーワードの羅列」は好ましくないと思っていますが、本作はそこに一文を足す事で良くなっていると感じました。



【キャラクターの批評】

 キャラクターですが……。本作はキャラクターを「上手く読者に伝える事」ができていませんね。

 その理由は文章と構成の拙さにあります。(この点は後述します)


 主人公以外にも多くのキャラが登場するのですが、主人公以外はあまり表現できていません。

 これは1話の文字数が1000文字前後と少ないのが理由ですかね。

 せめて、ヒロインはもう少し登場させた方が良いと思います。


 その主人公ですが、「イヤな事があったので音楽を辞める事を宣言した、小学生の悪ガキ」ですね。この設定自体は良いと思います。

 問題は「一人称で書かれているにも関わらず、彼が何をどう考え、どうしたいのかが一切伝わらない」という事です。


 第4話まで、主人公は「音楽を辞める宣言をした事」と「親友とイタズラをした事」、「クラスメイトとの会話」くらいしかしておりません。

 少し文章や構成の話にもなりますが、これらのエピソードの全てが「ただ、こういう出来事が起きた」という事しか伝わらず、これらのイベントを通じて「読者に何を伝えたいのか」が分かりません。

 申し訳のない例えをしますが、「まるで、舌足らずな子供と話しているようだ」と感じてしまいました。



【文章・構成の批評】

 文章ですが、【キャラクターの批評】で書いた通り非常に拙いです。


 まず「web小説の文章ルール」ができていません。

 「文頭の一字下げ」「適度な空行」「『・・・』ではなく『……』を使う」「『間』を表現する際は『ー』ではなく『――』を使う」などが目立ちますかね。


 ですが、それ以前の問題として「読者に伝えるべき事」を正しく文章にできていません。

 これは「起きた出来事」と「主人公の思考」だけを場当たり的に文章にしているからだと思われます。

 その為(作者さまには不本意だと思いますが)、「無意味な文章の羅列」になってしまっており、更に前後の状況と噛み合わない事も多いと感じました。

 解説の為、物語冒頭を例文として引用します。

――――――――――――――――――

8月のある日の朝。

やっぱり言おうか。ちょっと田舎の小学校に通う俺・吉野陽介よしのようすけはいつものようにトイレットペーパー爆弾ただのトイレットペーパーを親友の浅川智也あさかわともやと投げ合いながら、考えた。

そして、手を止めると大きく息を吸った。

「もう、楽器なんてやめてやる!!」

時間を無駄にするかのように俺はクラスの連中に向かってバカみたいに叫んだ。

俺の声が教室中に響き渡って、みんながやばいって顔をしてたけど、それでも構わない。

心の中のモヤモヤをぶちまけて、スッキリしたかったんだ。

「・・・お前、マジで言ってる?」

智也も、なんかビビってる。

みんなも、「あの陽介が楽器やめるのか!?」って感じだ。

ずっと、音楽をやっていた。いや、最初は楽しいって思ってた。でも、あのクソメガネ指揮者とか、上手くなりたいって焦りに押し潰されそうだった。楽器を持つたびに、なんか苦しくて、だんだんと楽器が嫌いになっていった。だから、やめる。それで終わりだ。そんな決意を、言葉にしてしまった。

俺は片付けもせずに自分の席に座った。

友達も俺が辞めるって聞いて、何か言おうとしてるけど、もう聞こえない。楽器なんかやっても、いいことなんてないんだから。そう思いながら机に突っ伏して待ってると、教室のドアが開く音がした。その瞬間、緊張が走った。誰か入ってくる。

――――――――――――――――――

 教室内でトイレットペーパーを投げて遊ぶなんて、まさしく悪ガキですね。無法地帯と化した教室が目に浮かびます。

 ですが、その後に続く主人公の宣言があまりに唐突です。読者としては「何で今?」と疑問に感じてしまいます。


 さらに「時間を無駄にするかのように」の意味も分かりませんし、「みんながやばいって顔をしてた」理由も分かりません。

 主人公の宣言なんかより「教室内でトイレットペーパーを投げて遊ぶ」方が、よっぽどヤバいと思いますが。


 そして、主人公の宣言に対してのクラスメイトの反応もよく分かりませんね。

 それは読者には「クラスメイト達にとって、主人公の宣言が何を意味するのか」が分からないからです。

 「あの陽介が楽器やめるのか!?」と言われても、読者には意味が分かりません。


 そんな疑問を放置したまま、主人公の「音楽が嫌いになった気持ちと決意」だけを描き、次の転入生の話に続いてしまいます。


 これでは話の焦点がボケてしまい、「何が言いたかったのか?」「何を見せたかったのか?」が読者に伝わりません。

 「状況と流れを自然に」「話の主題を明確に」この辺りを意識して文章を書くべきでしょう。



 続いて構成ですが、残念ながらこちらもお粗末です。

 上記の例文のように短い文章でも構成がグチャグチャですので、物語全体の構成も当然のように上手くいっているとは言えません。


 問題点としては、第4話までの全体を通して「話がロクに進んでいない事」が挙げられます。

 【キャラクターの批評】の批評で申し上げた通り、本作の1話は約1000文字前後と非常に短いのですが、それ以前の問題であると言わせて頂きます。


 それは「話の焦点が定まっていない事」が原因であると思います。

 これも【文章の批評】の例文と同じく、「何を言いたいのかが分からないエピソード」ばかりです。

 「ただ主人公がイタズラをする話」だったり、「何も起こらなかったと結論付けられる話」であったりです。第2話では「主人公が音楽を辞める原因の回想」が書かれていましたが、核心に触れる事なく終わり、「結局、読者には原因は分からない」という始末です。


 エピソードを書く際は「この1話で読者に何を見せ、何を感じてもらう話なのか」を意識して書いた方が良いと思います。

 そして、それが決まっているなら「それを読者に伝える事に注力すべき」だと思います。



【ストーリー・設定の批評】

 ストーリーですが、「音楽を辞めた主人公が、音楽好きのヒロインと出会う」話であるのは間違いないと思います。

 ですが「出会ってどうなるのか?」は分かりませんでした。


 タグに「ラブコメ」とありましたので、恋愛がテーマだとは思います。ですが「音楽」がそこにどう絡むのかは、現時点では全く分かりませんでした。

 そして「主人公とヒロインの絡み」も、第4話時点では少し会話をしただけですので全然進展はしていません。


 「小学生の恋愛もの」自体がリアリティを出そうとすると幼過ぎて、少々難易度の高いお題だとは思いますが、それ以前に話が全く進んでいません。


 ちなみに本作は完結済みで、プロローグ・第1話~第9話・エピローグの全11話です。

 批評内で半分近くが過ぎていますが……。【追記】をする予定ですので、今は言及するのは止めておきます。



 最後に設定ですが、まず「時期」がおかしいですね。

 【文章の批評】で例文に引用した物語の冒頭ですが「8月」といえば、普通の学校なら夏休み中ですよね?

 にもかかわらず、ほとんどの舞台が教室であり、ヒロインが転入までしてきます。通常の小学校なら明らかにおかしな設定です。


 そして主人公・ヒロイン・主人公の親友は、それぞれ音楽を嗜んでいるようなのですが、それぞれの楽器はコントラバス・チューバ・バスクラ(バスクラリネット?)です。

 小学生の扱う楽器としては、少々ヒネり過ぎではないかと思います。

 特にチューバは大きな楽器ですが、小学生女児が扱うには少々難がありそうに思いますが……。(調べてみたところ、軽いものでも6、7キロあるそうです)


 音楽に興味のない読者は名前を聞いてもどんな楽器かがピンとこないと思いますし、変に奇をてらって馴染みの薄い楽器を使う必要はないと思いますね。(奇をてらった訳ではなく、ストーリー上で必要な設定だったのならスミマセン)



【総評まとめ】

 総評ですが「文章力と構成力が未熟」です。

 ハッキリと申し上げますが、現時点では「物語の形を成していない」と言えます。


 まずは文章を書く際、「何に焦点を当てて書くか」を考えて書くのが良いと思います。

 そして、それが判明したら「伝えたい事に必要なものだけ」を書きましょう。それ以外は(大抵の場合は)邪魔な文章です。

 最後に、書いた文章を何度も読み返して「この文章で、初見の読者に伝えたい事が伝わるのか?」を想像しましょう。


 作者ページを拝見したところ、どうやら作者の迷M _りみ様は中学生のようです。

 ですが、本批評では一切の手加減はしておりません。他の小・中学生の参加者さま方も同様です。

 その為に大変な酷評となっておりますが、お若いのでこれからいくらでも成長の機会はあります。

 どうか、性格の悪いオッサンの言葉に負けずに頑張って頂きたいですね。



【追記】

 本作は作者さまの要望により、エピローグまでを読んで追記します。



 エピローグまで拝読いたしました。


 まず結論から申し上げますが、やはり「物語の形を成していない」と思います。

 1つ1つのエピソードに意味が感じられないのも問題なのですが、最後まで見ても「結局、どんな物語だったのか?」が分かりません。


 いえ、【ストーリーの批評】の最初に述べた「音楽を辞めた主人公が、音楽好きのヒロインと出会う話」だというのは確かです。

 そして、そのストーリー自体は問題はありません。

 問題は「主人公とヒロインの関係が全く描かれていない」という事です。


 私視点の感想ですが、「ヒロインの扱いは、サブキャラと変わらない」と感じました。読者にアピールができずに完全に埋もれてしまっていると感じたのです。

 なのに第9話で急に、主人公がヒロインを気にしだすような事を言い出したかと思うと、最終話では「ヒロインが転校した」「主人公はヒロインを想いながら歌う」という展開です。


 ストーリー自体に問題がなくても、「全く描かれていないサブキャラ」がヒロイン扱いされているので、読者の心境としては疑問しかありません。

 なにせ、私の感想としては「ヒロインは、主人公の親友より目立ってない」と感じましたからね。「ラブコメ」としては致命的……というか、あり得ないでしょう。



 全体を見た評価は以上になりますが、細かい点の指摘は割愛させて頂きます。すでに書いた【文章・構成の批評】や【総評・まとめ】の重複になってしまいますので。

 ですので、迷M _りみ様に足りない点のトレーニング案を提案させて頂きます。


 迷M _りみ様には「正しく簡潔に、状況や物事を伝える構成力」が足りません。

 その為に、読者に伝えたい事が伝わっていないのだと思います。


 トレーニング案として、マンガやアニメ、映画やドラマなどの「ワンシーンを抜き出して小説化する」という方法を提案します。

 「絵や映像」がある作品を文章化するのはそれだけで練習になりますし、「答え」がありますので「上手く出来たかどうかの判断も容易」です。家族や友人などの第三者に見てもらう事ができれば、なお良いですね。


 まずは「ワンシーン」。次に「掌編や短編」、そして「中編」「長編」へとステップアップしていくのが良いのではないでしょうか。

 厳しい事を申し上げますが、エピソード単位で区切る「中編」や「長編」は、まだ早いかと存じます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る