★0 血槍の半吸血鬼〜黒翼の少女の血の絆と裏切りの冒険譚〜
タイトル:血槍の半吸血鬼〜黒翼の少女の血の絆と裏切りの冒険譚〜
キャッチコピー:希望を抱き旅立った少女は、戦いと裏切りの果てに復讐を選ぶのか--
作者:移季 流実
URL:https://kakuyomu.jp/works/16818093084764928939
評価:★0
【あらすじ】
〜半吸血鬼少女の帝国冒険譚〜
かつて人族と亜種族が共栄した世界。
そして、人族と亜種族が歪み合う世界。
帝国建国の英雄と謳われた将軍ライトの元で育てられた、半吸血鬼の少女。
亜種族が人族に忌み嫌われる帝国西部から、黒い翼を持つ彼女は、翼を隠し、その未来に希望を抱き、都へと旅立った。
希望を抱き旅立った少女は、戦いと愛と裏切りの果てに復讐を選ぶのかーーそれとも......
【第1章「都シュタットへの旅」】完結
【第2章「帝国軍」編】更新中
【世界観とあらすじ】
かつて人族と亜種族が共栄した世界。
百年前、殲獣と呼ばれる怪物が世界各地に出現した。
人々は殲獣の、その魔法じみた力を"魔術”として、また、その身体を武器として利用した。
かつて人々は、殲獣へ立ち向かう為種族問わず手を取り合ったという。
やがて、殲獣の力に溺れた各種族の王達は戦争を起こした末に人口の多い人族の王を帝に立てた。
大陸のほぼ全域を占める帝国の誕生により、歴史上最大最悪の戦争”大陸戦争”は終結した。 およそ五十年前の話である。
ある晴天の日、帝国西部の海沿いの小さな村、シャトラントから半吸血鬼の少女が、希望を抱き、都へと旅立った。
旅立ちの日から三日目。曇り空の森で少女は怪しげな冒険者に出会う。その男の異常な性質と執着が少女の運命を狂わせていく。
運命に抗う半吸血鬼の少女が紡ぐ、戦慄のダークファンタジーが幕を開ける。
【拝読したストーリーの流れ】
本作にはプロローグがありましたので、第4話までを批評の範囲とします。
帝国の西部辺境の村で育った半吸血鬼の主人公「サキ」。
建国の英雄「ライト」に育てられた「サキ」は、養父のように戦って名を上げる事を目指して帝都・シュタットへと旅立つ。
その道中で知り合った「ミラク」や「ニーナ」といった仲間(?)と出会い、心躍る強敵を求め、帝都に向かうのだった……、といったお話でしょうか。
【タイトル・キャッチコピーの批評】
タイトルは厨二的で非常にカッコイイですね。「血槍」「半吸血鬼」「黒翼」「血の絆」「裏切り」と、厨二ワードが全開です。
ただ、あまりにも厨二に振り切り過ぎて、好きな人以外は敬遠してしまうかも知れませんね。
次にキャッチコピーですが、こちらも厨二臭が強いですね。
こちらの問題は、タイトルからほとんど情報が増えていない事と、最後の一文が「復讐を選ぶのか--」と、疑問形のような締めくくりになっている事です。
本文を読む前の読者に問いかけられても答えられる人はいませんし、知らない主人公の運命(もしくは葛藤?)にも興味は持てる人は少ないと思いますね。
【キャラクターの批評】
キャラですが……。本作のキャラは、もれなく「操り人形」です。
行動に一貫性や整合性は全く無く、物語の都合で動いているとしか思えません。
特に酷いのが、最初の仲間である「ミラク」との出会いです。
森の中を進む主人公に「ミラク」は突然襲い掛かり、拘束します。目的は亜種族である主人公を売り物にする為です。
当然主人公は抵抗しようとしますが、拘束は外せません。
ですが「ミラク」は主人公が混血である事に気付き、「これでは高値で売れない」と判断して、(接触前に主人公の戦いを見ていた為)主人公を仲間に誘います。
まったく意味不明です。
当然、主人公は断って反発します……が、すぐに(なぜか)納得して2人は仲間になります。
「なんで?」しか出てきません。
一応それらしい理由は書かれていますが何の説明にもなっておらず、「説明完了」と言わんばかりに疑問は放置されます。
完全に「仲間になる」というストーリーの為に、キャラの意思を無視して思考と行動が捻じ曲げられています。
それ以外の問題としては、主人公の育ての親の「ライト」が出しゃばり過ぎに感じました。
「ライト」は主人公の旅に同行していません。実際に登場するのはプロローグのみです。(第4話まででは)
ですが、プロローグでは「ライト」の過去についても語られ、主人公が旅に出てからも度々、セリフや思考の中に登場します。
正直、序盤の大事な時期に、その場にいないキャラの事をこんなに話す必要があるのかと疑問に感じました。
【文章・構成の批評】
文章は読めなくはありませんが、全体的に粗が目立ちますね。
言葉の意味や文法が少し怪しく、間違った用法をしている部分もあります。
また【キャラクターの批評】で述べた通り、主人公の思考や行動に整合性はありませんので、一人称で書かれている本作は文章を理解する事は出来ても納得する事は出来ません。
これらに比べれば些細な問題ではありますが、戦闘描写は拙く、まったく迫力も盛り上がりもありませんでした。(そもそも描写が少なかったですね)
些細とは言いましたが、バトルファンタジーとしては致命的ですね。
そして構成に移りますが、【キャラクターの批評】で述べた通り「ライト」が出しゃばり過ぎに感じます。
理由も前述の通りです。
そして残念ですが、それ以上は言及できません。
「主人公が能動的に物語を動かす」という手法の本作では、主人公の行動に一切理解が出来ませんので物語の進行そのものも理解不能です。
これでは構成について語りようがありません。
【ストーリー・設定の批評】
ストーリーもまったく読めませんね。
「これからどういう展開になるのか」「作者は何を見せたいのか」がまったく分かりませんでした。
ただタイトルやコピーから、「主人公が裏切られて、復讐する」のだろうという事だけは分かります。逆に言えば、それ以外は分かりませんでした。
設定ですが、一言で言って説明不足です。
「冒険者」「殲獣」「魔法」など、ほとんど最低限未満の説明しかありません。まるで「わざわざ書かなくても分かるだろう?」と作者に言われているようです。
「帝国」は、国の名前すら出てきません。
その「帝国」ですが、国の成り立ちが説明されていましたが……無理があるのでは? と感じてしまいました。
というか、私には理解不能ですので引用します。
――――――――――――――――――
かつて世界では人族が人口の9割を占めていたそうだ。しかし、殲獣の登場により、西部のように、未だ地域によっては人族が大半であるがその数は激減した。
長耳族、小人族、鬼族、吸血鬼族、獣族……かつては世界のごく一部の地域で繁栄した人族の亜種族が急激に勢力を広げた。
理由は不明だが、殲獣が現れてから、それぞれの亜種族が持っていた固有の能力や特性が強化されたことも、その原因であった。
殲獣が登場して50年間人々は協力して殲獣に対応した。
やがて、その力の大部分を掌握した気になった各種族は大陸戦争と呼ばれる大規模な戦争を起こした。
50年前、各種族の王達が最も人口の多い人族の王を皇帝と認め帝国を建国したことで大陸戦争は終わった。
しかし皇帝は亜種族達に傀儡とされている。
亜種族達の行う政治は人族に無頓着だった。
――――――――――――――――――
……理解が出来ないので、疑問を投げかける形での解説となります事をお許しください。
まず、なぜ「殲獣」に襲われて人族が数を減らせば亜種族が勢力を増すのですか? 説明が不足し過ぎていて、既にここからが分かりません。
そして「戦争の理由」も分かりません。
「掌握した力」って何の事ですか? 文章の前後から「力」に関する記述がまったく見当たりません。
そもそも戦争になったのなら掌握できていないのでは?
で、各種族って亜種族の事ですよね?
それで亜種族の王たちが「人族の王を皇帝と認め帝国を建国して、傀儡とした」って、頭がおかしくなりそうです。そうした理由は何なんですか? 人族の王がそれを受け入れた理由は?
しかもこれ、主人公が知っている知識ですよね? 隠された歴史とかじゃないですよね? 一般常識として「皇帝は亜種族の傀儡」なんですか?
これ、近隣諸国との関係はどうなっているんでしょう?
たった建国50年の、こんな国が帝国を名乗っていて、まともな外交が出来るとは思えませんが。
帝国の設定1つを取ってもこの有り様です。
納得する為には、読者側で強引に脳内補完するしかありません。
【総評まとめ】
総評ですが「雑すぎ」です。
キャラ・設定が雑すぎて、ストーリーをまともに進める事ができていません。それでも強引に進めているので、一切の理解・納得が出来ません。
以前に『110作品を読んだ感想』で書かせて頂きましたが、私は物語を面白いと感じる為には大前提として「理解」が必要だと考えている、と語りました。
私は、一切の理解が出来ない本作を面白いと感じる事は出来ません。
【追記】
本作は作者さまの要望により、第5話、及び番外編を追記予定としています。
第5話、及び番外編を拝読しました。
まず第5話ですが、帝都へ向かう為に大河を渡る途中、「ミラク」は主人公と「ニーナ」に麻酔薬を盛り、2人を殺害しようとします。(どうやら「ニーナ」は既に事切れている?)
「ミラク」の動機や、なぜこんな回りくどい事をしたのかは第5話時点では不明です。(番外編で語られます)
ただ、「ミラク」のセリフが途中から『 』に変わっているのは何か意味があるんですかね? 「過去のセリフを思い返している」という風にも見えましたが、主人公との会話も『 』になっています。
そして主人公は「信じていた『ミラク』に裏切られた」とばかりに、怒りと憎悪を募らせますが……私の目線では「なぜ信用していたのか?」と思ってしまいます。
続く番外編では、「ミラクの過去」が書かれています。
ですが、本当に「ミラクの過去」を説明しただけですね。全く「面白い」「面白くなりそう」とは感じませんでした。それは「ミラクの過去に魅力がない」からです。
「ミラク」は元暗殺者で、感情の起伏に乏しかったようです。
ですが、人を殺すための訓練(?)で死刑囚に手を掛けて「人の死にざまに、強烈な興味」を抱きます。
そして最後に受けた任務で、「ターゲットに近付いてから殺す」という過程を経て「裏切られて絶望して死んでいくさま」に、更に強く感情を動かされます。
それからは暗殺者から抜け、人殺しを愉しむ為に生きてきたようです。
……完全にサイコパスの快楽殺人者です。
主人公は、たまたまそんな「ミラク」と出会ってしまっただけのようです。(これから生まれるのかも知れませんが)何のドラマもありません。
そして主人公に近付いた事を「強気で生意気な少女には怪しく刺激的な強者として」とありましたが、主人公の思考・行動に整合性はありませんので、それを察して「相手(主人公)の求める行動を演じる事の出来るミラク」は、まるでテレパシーか何かの能力を持っているようにさえ見えてしまいますね。
そして文章はやはり少し怪しい部分があり、例えば「彼は帝国の暗殺部隊の精鋭であった。実戦任務を課されることのない、訓練兵だった頃までは」と言う文章がありましたが、この書き方では「訓練兵だった頃までは暗殺部隊の精鋭だった」と読めてしまい、前後の文脈に矛盾が生じます。
また構成も無駄が多く、特に番外編では「人の死に興奮を感じた」という事が何度も書かれます。
同じ事を何度も伝える事で強調しているのは分かるのですが、少しクドすぎると感じてしまいました。
それでは【追記】の総評ですが、特に変化はありませんね。
「よく分からないキャラが、よく分からない動機で行動し、よく分からないストーリーを進める物語」としか感じられませんでした。
その原因はやはり、「主人公の思考と行動が、作者の思惑で捻じ曲げられている」のが大きいと思います。
最初の批評の後、作者である移季 流実さまと何度かやり取りをしましたが、この点については全く私の主張を理解してもらえませんでした。
どうやら私と移季 流実さまでは、主人公に対する見え方が全く違うようです。
もし、本作を読んで「三鞘ボルコムの主張は間違っている」と感じられた方がいらっしゃったらお伝えいただければ幸いです。(もちろん、逆の感想も歓迎します)
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