★1 チート・ロワイヤル
タイトル:チート・ロワイヤル
キャッチコピー:チート能力者同士の殺し合いゲームに挑むのは、素で最強の少女
作者:綴谷景色
URL:https://kakuyomu.jp/works/16818093084673983988
評価:★1
【あらすじ】
十九世紀、ロンドン。とある暗殺組織で活動していた『黒兎』は、チートと呼べる程驚異的な身体能力を使ってあらゆる任務を忠実にこなしていた。まるで機械のように人を殺す少女は、『かつての仲間を殺した後に自死しろ』という命すら受け入れる。見事仲間の暗殺者をも殺し、毒薬で自死した黒兎。
意識が消え、果てる――――――が、突如目が覚め、自身が異空間にいると気付いた。
謎の存在が告げる。
「これからキミは、ボクが主催するチート・ロワイヤルに参加してもらう!」
参加者一人一人にチート能力が配られ、異世界で殺し合うというそのゲーム。勝者にはどんな願いも叶えられるのだという。説明を聞き、黒兎は答える。
「私にチート能力など必要ありません。この体とナイフのみで勝利してみせます」
【拝読したストーリーの流れ】
序盤の内容は、大体【あらすじ】の通りですね。
19世紀のロンドンで最強の暗殺者である主人公「黒兎」が、任務で仲間を殺して、最後には服毒自殺をする。
死んだ後には、よくある不思議空間で神を名乗る「アシンメトリ・シンメトラ」に「チート・ロワイヤル」というゲームに強制参加させられる。
タロットカードを模した「チート能力」を与えられると説明されるが、「黒兎」は「必要ない」と言って、何の能力も無い「愚者」のカードを与えられる。
剣と魔法、魔物が存在する異世界で能力を持たない主人公が、チート能力を持った参加者たちと戦う……、といったお話でしょうか。
【タイトル・キャッチコピーの批評】
タイトルは『バトルロ〇イアル』のオマージュですかね?
【あらすじ】なども見てみると『チート〇レイヤー』『チート〇レイカーズ』なども連想してしまいますね。
印象には残りやすいのですがパロディ色をどうしても感じてしまい、オリジナリティを感じないので、あまり良い命名とは思えませんでした。
特に『チート〇レイヤー』の方は「1話打ち切り」の伝説を残していますので、受ける印象は良くないですね。
続いてキャッチコピーですが、作品内容の捕捉ですね。
「チート能力者同士の殺し合いゲーム」というのはタイトルで想像がついていますが、「主人公がチートを持っていない」という事が示され、補足されています。
「本来なら」悪くないコピーだと思います。
「本来なら」と言ったのは、「素で最強」という文言が引っ掛かったからです。
タイトル・コピー・あらすじを見て、読者が期待するのは「チートを持たない主人公が、チート持ちといかにして戦うか?」だと思います。多分、作者さまもそれが狙いだと思います。
ですが「素で最強」と書かれてしまうと「結局、力で捻じ伏せるだけではないのか?」と、展開に疑問を抱いてしまいます。
「キャッチ」という意味では、自ら読者を手放しているように感じてしまいました。
【キャラクターの批評】
キャラクターは基本的には良いと思います。
主人公を始め、登場キャラの造形は分かりやすく、その性格や物語上の役割を見間違える事もありません。
少しテンプレ的な造形に感じる所もあり、ここは好き嫌いが別れそうだと感じましたが個人的には悪いとは思いませんでした。
また最初に登場する敵の「女帝」の能力を持つ敵キャラは、その心情や行動に不可解なものを感じましたが第五話で戦闘が始まったばかりでしたので、戦闘中か戦闘終了後にスッキリしてくれれば良いと思います。
ただ、いくつもの細かい粗が目立つと感じました。
主人公の黒髪を「西洋人らしくない」と書かれていましたが、西洋人にも黒髪は普通にいます。(イギリスでは茶髪が一番多いそうですが、黒髪もいます)
また、主人公は「チート能力」という言葉に疑問を抱いていましたが、「チート」は英語です。現在で使われるスラングのような意味は理解できなくても、本来の意味である「騙す」「詐欺」「不正」といった意味は分かると思います。
主人公は「自分には心がない」と言った後に「彼女を手伝ってあげたかった」と言っています。
「心がない」と言うのなら、「彼女を手伝おうと思った」くらいの表現が適切だと感じます。
キャラの造形は良いと感じましたが、粗が多い為に全体的に評価を下げています。1つ1つは大した事はないのですが、流石に多すぎますね。(まだまだあります)
これはキャラだけでなく、【設定】を中心に全てに言えます。
【文章・構成の批評】
文章ですが、基本的には読みやすく理解もしやすい良い文章です。
ストーリーやキャラ造形の理解しやすさも相まって、読むのにストレスはあまり感じませんでした。(ストレスを感じるのは、粗が気になった部分です)
ただ、2ヵ所ほど「主人公のセリフのような地の文」があり、そこは激しく違和感を覚えましたね。(本作は三人称一元視点で書かれています)
それでは構成に参りますが、こちらも基本的には問題は感じません。
第一話で戦闘を見せ、第二話で主人公が死に、第三話で「チート・ロワイヤル」のルール説明、第四話で異世界に転生して現地人との出会い、第五話で「女帝」との戦いが始まる、と1話1話がテンポよく進んでいます。
個人的には、異世界に転生してからは「世界観の説明」や「現地人との交流」をもっとしっかりとして欲しかったと思いますが、好みの範囲でしょうね。
「このくらいサクサク進む方が良い」と感じる読者も多いと思います。
【ストーリー・設定の批評】
ストーリーですが、大枠としては【あらすじ】の通りですね。
そこに「タロットカードを模したチート能力」がありますので「ジョ〇ョ」のような「能力バトル」が期待できます。(これは自らハードルを上げているようにも思えますが)
1つ、問題点というか課題があるとすれば「主人公の目的が見えない」という所ですね。
勝利した者は願いが叶うというルールですが、主人公には願いはありません。「チート・ロワイヤル」に参加した理由もイマイチ不明瞭です。(納得できない訳ではありませんが)
「そういうルールだから戦う」よりも、明確な「主人公の目的」を設定した方が良いとは思いますね。
ただ、主人公の設定は「幼い頃から暗殺者として育てられた」というものですので、物語の進行と共に「目的が見つかる」という形なら良いと思いますね。
それでは設定ですが【キャラクターの批評】で述べた通り、細かい粗が目立ちます。
その中でも特に無視できないのが、タロットカードに関する記述ですね。
まず単純な数え間違いがあります。タロットの大アルカナは0~21の「22枚」なのに、ここから「2枚を除いた19枚」となっています。(しかも同じ記述が2ヶ所あります)
ただの計算ミスですので、すぐに直した方が良いでしょう。
そして主人公のカード「愚者」の事を「始まりを意味するカード」と言っていますが、「始まり」を象徴するカードは「魔術師」です。
私はタロットはよく知りませんが、「ジョ〇ョ」でこのような事を言っていたのを覚えていた為に気付きました。同様に気付かれた読者もいると思います。
※こちらですが、作者さまと読者さまより「『愚者』も『始まり』という意味がある」とのご指摘を受けました。
作者さまのソースは「ペル〇ナ」というゲームなのですが、あの作品なら信用が置けますね。(私はSFC版の「真・女〇転生」からプレイしてました)
不完全な情報をお伝えしてしまった事を謝罪申し上げます。
よく知りもしないのに、断言なんてするもんじゃありませんね。
他にも細かい部分はいくつかありましたが、タロットに関する事は放ってはおかない方が良いと思います。本作の最も重要な特色なのですから。
悪い点を先に書きましたが、「タロットを模したチート能力バトル」と言う設定は「上手く使いこなせれば」非常に面白いと思います。
「ジョ〇ョ」のパロディ感は否めませんが、それくらい面白く能力バトルを描ければ文句なしですね。
ただ「魔法」がある世界なので、「チート能力」との区別は必要です。
それをしなければ「主人公がチート能力をもっていない」「敵はチート能力を持っている」というアイデンティティを共に失いかねません。
「魔法」に関する設定の開示も、序盤で行うべき問題だと思いますね。
【総評まとめ】
総評ですが「他作品の魅力を詰めたパロディ作品」ですかね。
他作品の要素に関しては案外上手くまとまっているように感じます。人によっては「パクリだ」と言われるかも知れませんが、まぁ許容内だと思います。
細かい粗は多いですが、1つ1つは気にする程のものでも無い事も多く、タロット周りの記述だけでも修正すれば大分違和感も少なくなると思います。
最大の問題は「いかに能力バトルを面白く描くか」ですね。
第五話の時点では戦闘が始まったばかりで能力の開示までは至りませんでしたが、本作の評価はここで決まると言っても過言では無い筈です。
「ジョ〇ョ」や「HU〇TER×HU〇TER」に見劣りしない程のバトルが描ければ、仮に「パクリ」という声が上がっても多くの読者に評価されると思いますね。
【追記】
本作は、作者さまのご要望により第六話まで追記いたします。
第六話を拝読いたしました。
まずは「女帝」の能力ですね。
「特殊な性質を持った武器を生成する」という能力ですが、初見の読者にはこれだけでは分かりづらいですね。
作中では「傷付けた相手に強力な毒を流す短剣」「相手の脳天を狙い自律して動く槍」「矢が複数に分裂する弓」などで描かれていますが、それでも不明瞭な部分は多く残ります。
しかし主人公に「『刀身を目視した相手に死を与える剣』なんて作られればそれで終わり」「もし作れるのならとっくに使用しているはず」と思わせたのは良いですね。
チート能力には制限があり、何でもアリではないという事が自然に読者に伝えられます。
では「どの程度の範囲が可能なのか」についてですが、残念ながら現時点ではハッキリとは分かりません。
今後の解説と展開に期待ですね。
ただ、もう1点。
判明した「女帝」の能力ですが、やはり「魔法」との区別が必要かと思います。
読んだ感想としては、「『女帝』の能力、他の作品での魔法でも同じようなのを見た事があるな」でしたので。
「魔法がある世界」での「特別な能力」としては、少しインパクトが弱いかと思いました。
そして主人公の能力ですが、完全に人間の身体能力を超越していますね。
室内で無数に襲い来る矢を両手のナイフで打ち払い、音速を超えるナイフを二本指で受け止め、相対する相手に反応する間も与えず背後に回ります。
極めつけは「常に胃袋の中にナイフを隠している」事ですかね。
別に「主人公が超人ではいけない」と言うつもりは毛頭ありません。
私が言いたいのは【タイトル・キャッチコピーの批評】で述べた「結局、力で捻じ伏せるだけではないのか?」という懸念が事実であったという事です。
正直な感想ですが、「能力バトルもの」としては魅力は少ないと感じました。
そしてストーリーの流れですが、現時点では何とも言いにくいですね。
主人公は突如、「女帝」に協力体制の提案を持ちかけますが、その理由が少しだけ強引に感じました。理解できなくはないのですが、「殺し合いの戦闘中に言う事ではないだろう」と。
そして「女帝」を説得する際に、どうやら嘘を吐いているという記述があるのですが、読者視点では何が嘘なのかが分かりません。
一部、事実とは異なる事を言ってはいましたが、その嘘が何を意味するのかが全く伝わりませんでした。
ですが、「女帝を仲間に引き入れる」という展開自体は良いと思います。
彼女を通して、世界観などの説明を読者にさせる事が可能ですからね。
主人公に比べて常識的な感性を持っているように見えましたし、語り部として良いキャラになれるかも知れませんね。
最後に1点だけ、些細なミスを指摘して終わります。
こちらは本文から引用します。
――――――――――――――――――
音速を超えたナイフに対し、避けるでもなく受け止めるなんて。人間じゃない、少女を皮を被った何か。 ミリデは心の中で呟いた。
――――――――――――――――――
はい。見ての通りです。
空白の消し忘れ、ですかね?
改めての総評ですが、「これならパクリとは言われないだろう。『能力バトルもの』としての魅力が足りなさ過ぎて」です。
このジャンルは「ジョ〇ョ」や「HU〇TER×HU〇TER」などを意識してしまった瞬間に、読者の求めるハードルが一気に上がってしまいます。
そして上記2作は「バトルもの」というより「ミステリー」の領域に入っていると個人的には思います。
決して作者の綴谷景色さまの実力が低いという訳ではなく、単に「扱う題材が高難度過ぎた」と思いますね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます