★0 私が前世で君に約束したこと


タイトル:私が前世で君に約束したこと

キャッチコピー:忘れるな。この世界は、私達が作ったものだということを。

作者:W

URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330667135656299


評価:★0


【あらすじ】

『祝福姫』────災厄が起きたとき、世界に祝福をもたらす、愛と創造の力を与えられた、もう1人の勇者。『祝福姫』は、幾度も転生を繰り返しており、今世は公爵令嬢マリー・フェールとしての生を受けた。いつもと変わらず、災厄への緊張感を持ちながら生活していたが、何かが今までの前世と違うことに気づき始める。

『忘れるな。この世界は、お前達が作ったものだということを』

自分の存在と、真実に迫る、異世界ファンタジー小説。



【拝読したストーリーの流れ】

 本作には「第0話」と、「第3.5話」というエピソードがありました。

 本批評ではこれらを1話と見なし、「第3.5話」までの5話を批評対象とさせて頂きます。



 かつて、『祝福姫』と呼ばれる人物が居た。

 『祝福姫』は災厄が起こった時、人々を守り、救い、祝福を与える。

 『祝福姫』はアンダラス王国の長い歴史に残る、「もう1人の勇者」だ。

 『祝福姫』は幾度となく転生を繰り返す――。


 今世の『祝福姫』である主人公「マリー・フェール」は、友人たちと共に穏やかな学校生活を送っていたのだった……、というお話でしょうか。



【タイトル・キャッチコピーの批評】

 タイトルですが、その内容は3.5話時点では不明ですね。

 ただ「前世」と「約束」という単語から、壮大なストーリーが展開されそうな期待感は感じるタイトルだと思います。



 キャッチコピーも同様に、「世界の根幹に主人公が大きく関わりそう」なセリフですね。



 タイトル・コピーの共に、「大きな風呂敷を広げている」ように感じますね。

 問題は「その風呂敷が、どのようなものかが読者には見えていない」ように感じるという事でしょうか。

 「誰が何をするのか?」「何がどうなるのか?」そのような事が殆ど分かりません。


 ただ「壮大な物語だよ」と宣伝するだけでは、興味を惹かれる読者は多くはないのではないかと思います。

 もっと直感的に作品の魅力を感じさせなければ、多くの読者を獲得するのは難しいかも知れません。



【キャラクターの批評】

 キャラクターですが……。いくつかの問題が重なり、総じて個性が薄いと感じてしまいました。以下に問題点を羅列させて頂きます。


 「登場人物が多い」「属性被りも多い」「口調に個性が無く、誰のセリフか分からない」「世界設定の説明文が非常に多く、キャラが活躍するようなエピソードが全く無い」と、このように感じました。

 これだけの問題が重なると、キャラの区別を序盤で行うのは読者にとっては困難です。


 特に「世界設定の説明文が非常に多く、キャラが活躍するようなエピソードが全く無い」に関しては深刻で、第3.5話までの間に描写された事の殆どは「学校生活の日常」です。

 何の事件も起きていません。それどころか、日常的なイベントすら無かったと感じました。(ここについては【構成】でも書かせて頂きます)


 他に違和感のある所がありまして、第2話で主人公を表す文章としてこのようなものがありました。

「ただの公爵令嬢の私が、王族であるミリィと仲が良いのは~」


 一般的には「公爵」って貴族の最高位ですよ?

 第3話の説明では、どうやらこの世界では「九つの名家」と呼ばれる公爵以上の地位の家柄があるようですが、それは「本作独自のもの」であり「一般的な認識」とは齟齬があります。

 このような所で読者に違和感を与えるくらいなら主人公の生まれを「男爵」か「子爵」辺りにしておいた方が良いのでは、と考えてしまいました。



【文章・構成の批評】

 文章ですが、基本的には読むのに苦労する事の無い文章だとは思います。

 ただ、「言葉選びがあまり良くない」と感じてしまいました。

 以下に例として一文を引用させて頂きます。

――――――――――――――――――

 目を開けた瞬間、白くきらきらとした光が射し込んでくる。


 その方向を見てしばらくすると、目が光に慣れてきて────澄み渡る青空が見えるようになった。

――――――――――――――――――

 「その方向」とは、どの方向でしょうか? 分かりにくい上に、非常に陳腐に感じてしまう言葉です。

 「青空が見えるように」という事から恐らく「窓から外を見ていた」のだと思いますが、空が見えない程に目が眩んでいるのに窓から外を見ているという動作は不自然に映ります。


 差し出がましいようですが、私ならこう書き変えます。

――――――――――――――――――

 目を開けた瞬間、白くきらきらとした光が射し込んでくる。


 少しずつ目が光に慣れてきて──。窓を開け放つと、澄み渡るような青空が視界に広がった。

――――――――――――――――――

 いかがですかね? ひょっとすると「原文の方が良い」と言われる方もいらっしゃいますかね?

 ただ私個人の感想としては、「原文は分かりくく、陳腐だ」と感じました。


 そしてこのような「決して読みにくくはないし意味も分かる。だが違和感があり陳腐に感じる」と思った箇所はここだけではなく、ほぼ全文で書かれていました。



 そして構成ですが……。こちらは非常にマズイと感じますね。

 まず第0話ですが、こちらは恐らく「かつての『祝福姫』のダイジェスト」だと思うのですが、シーンの前後の詳細が全く語られませんので何のシーンなのか分かりません。次々に「歴代の『祝福姫』」らしき描写がされるのですが、それだけのシーンです。

 もし【あらすじ】を読まずにここから読み始めてしまったら、全くの意味不明なシーンから始まる事になってしまいます。


 そして第1話からは現在の主人公が描かれるのですが……。先ほど【キャラクターの批評】で述べた通り、ただ授業などを通して世界の設定が語られるだけであり、何の事件も起きていません。

 いくら緻密な設定があっても、キャラが動かなければ物語は面白くありません。

 恐らく今後は物語が動くとは思いますが、ここまで動きが無いと続きを読もうとはしない読者は多いと思われます。


 最後にですが、場面転換が多すぎるように感じました。

 場面転換の際には「◆◇◆◇」や「◆◆◆◆」、「◇◇◇◇」といった記号で区切られるのですが(これらの違いは明確には分かりませんでした)、第1話では6つ、第2話では5つ、第3話では7つもありました。(第3.5話では2つです)

 シーンがコロコロ変わりますので、読み手としては常に落ち着かなかったですね。

 


【ストーリー・設定の批評】

 ストーリーは何も評価できませんね。【構成】で述べた通り、「何も起きていない」ですから。



 そして設定ですが……。こちらは非常に作り込まれています。

 ただ大量の設定がありますので、かなり煩雑に感じます。

 物語の序盤からあまりに多くの設定の説明が入り、それら全てを1度読んだだけで把握できる読者はきっといないものと思われます。


 あくまで持論ですが、「設定」とはお芝居で言うなら「大道具・小道具」です。

 「道具」とは、必要だから使うものだと思います。「使わない道具」に価値はない……とまでは申しませんが、そこに価値を見出す人は少数派だと思います。


 何度も「何も起きていない」と申し上げておりますが、「使われない設定の説明」を延々とされても多くの読者は退屈すると思います。

 設定の開示は一度に行うのではなく、その場の必要に応じて行った方が良いと思いますね。



【総評まとめ】

 とにかく「何も起きない作品」ですね。

 設定の作り込みは感じますが、それらを一気に説明されても頭に入りませんし覚えていられません。そして説明に尺を取られてキャラが全く見せられておりません。

 こうなると作り込まれた設定は無用の長物とさえ感じてしまいます。


 これも私の持論ですが、「物語とはキャラクターを見せるもの」だと考えております。物語の中で起きた出来事に、「キャラがどう考え、どう動くか」が重要なのだと考えます。


 「何も起きない」本作では、キャラにもストーリーにも魅力を感じようが無いですね。



【追記】

 本作は作者さまのご要望により第1章終了(第16.5話)までを読んで追記いたします。

 また作者であるW様より、「第二章から急激に減少している原因を探りたい」との事ですので、そちらも意識して追記をさせて貰えればと思います。



 第16.5話までを読みましたので追記をさせて頂きます。


 まずですが、第8話までは「新たなキャラの紹介」「日常の描写」「世界設定の説明」「これから起こる災厄の前フリ」以外の事は書かれてはいないように感じました。

 【総評・まとめ】で述べたように「何も起きない作品」です。


 8話……実際には3.5話と7.5話がありましたので計10話もの間、「何も起きない作品」を気長に読んで下さる読者は少ないものと思われます。



 そして第9話でようやく動いた話というのが「主人公が『祝福姫』だという事が噂になっている」という事でした。


 まず、「主人公が『祝福姫』という事が秘匿されている」という事実を読者が知るのは第7話です。

 私はここを読むまでは「特に隠していない」ように見えていました。


 そして事態を重く見た王族・貴族が対策の会議を行うのですが、どうも作中の人物たちと読者の間で温度差があるように感じてしまいました。

 作中のキャラたちは深刻そうにしているのですが、それが読者に伝わりません。

 王様が問題点を挙げていましたが、それも理解・納得が出来ませんでした。


 そしてその対策も、要約すると「皆で頑張って乗り切ろう」と言っているだけにしか見えませんでした。

 そう感じたのは「具体的な対策」を何一つ書かれていなかったからですね。



 そしてまた脱線したかのような話が続き、物語が進みません。

 次に物語が動き出したのは第12話でした。

 ですが、その動いたというのも「主人公の手から離れた場所で、何だか分からない内に解決した」という風に感じてしまいました。


 色々と説明不足で、「魔族とは何なのか?」「主人公が『祝福姫』だとバレる事の何が問題なのか?」など、重要な部分ですら読者に伝わっていないと感じました。

 その状態で解決案を述べられても「そういう事でいいの?」と、納得も疑問に抱く事も出来ない感じでしたね。


 更に「主人公が『祝福姫』だと噂が立っている」事についての解決策が「噂を否定する」だったのは「そうはならんだろ」と思ってしまいましたね。



 また、総じてですが登場キャラが多すぎて区別がつきませんでした。

 キャラの区別がつかないので、話の内容も理解が追い付かない事が多かったですね。

 「なんとなくの雰囲気で読む」事しか出来ませんでした。



 【追記】部分をまとめさせて頂きますが、「問題点は【追記】以前の内容と同じ」ですね。

 「イベントが起こらなさ過ぎる」「キャラが多すぎる」「設定の説明が多すぎる」「主人公が活躍していない」

 この4点が特に問題だと感じます。


 「第二章から急激に減少している原因を探りたい」との事でしたが、私見を述べさせて頂きますと「ただ単に第1章というキリの良い場所で見切りをつけた」という事ではないかと思います。

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