★2 リッチ様の探索者育成譚~2回の異世界転生で地球に戻ったのにダンジョンのフロアボスになっていた最強の俺は、配信しながら超可愛い探索者たちを育てて世界崩壊を防いでやるぜ!


タイトル:リッチ様の探索者育成譚~2回の異世界転生で地球に戻ったのにダンジョンのフロアボスになっていた最強の俺は、配信しながら超可愛い探索者たちを育てて世界崩壊を防いでやるぜ!

キャッチコピー:💀弱き人間どもめ!俺が貴様らを育ててやるから死に物狂いでかかってこい💀

作者:蒼井星空

URL:https://kakuyomu.jp/works/16818093078652902480


評価:★2


【あらすじ】

俺は間野塔弥。元人間で異世界転生して魔王を倒し、もう1回異世界転生したら地球に戻ってきた元人間だ。


えっ?『地球に戻ってこれたのになんで"元"人間なのか』だって?

それはなんと、俺が新宿ダンジョン40層のフロアボスである不死者リッチになってたからだ……。


いや、なんでだよ。

どうせなら人間に戻してくれよ……って思ったものの、どうも余裕こいてそんなこと考えてる場合じゃないらしい。

転生の説明をしてくれる神様の話だと、今の地球は滅亡寸前なんだと。

急にそんなこと言われても……と思ったが、思い当たる節がある。


それはこの地球にダンジョンを出現させた迷宮神だ。既に30年以上にわたってダンジョンを弄りながらなにかしてやがるんだ。


それなら俺はやってやるぜ。ボスの立場を活かして探索者を鍛えてやるんだ。幸い俺には異世界で習得した魔法技術があるからな。

配信なんてものもあるし、探索者どもを効率的に育ててやる。


そんなわけで今日も俺はやってくる探索者に稽古をつけて……って、なんだよ、ぜんぜん来ねえじゃねぇか!もっと頑張れよ探索者!


えっ?『超可愛い子にエッチな悪戯したり、嫌な奴をぶちのめしたせいだ』だと?


人間の軟弱者ぉぉおおおお!!!!!


よしわかった。あの手この手を使って育ててやるから覚悟しろよ!



【拝読したストーリーの流れ】

 本作は「コメディ(というよりギャグ)作品」であり、第5話までの時点では1~2話で完結するショートエピソードとなっています。

 正直ストーリーについては、本編より【あらすじ】の方がよっぽど詳しく書かれています。


 それ以外としては、本作は「ダンジョン配信もの」であり、主人公の「リッチ」は自分で配信を行っており、物語開始時点でライブ配信の同接者が10万人を超える、リアルで考えるなら日本トップクラス(ぶっちぎりのトップ?)の配信者です。(作中で同接10万人がどの位置かは書かれていません)


 そして主人公の目的は【あらすじ】で書かれているように、「迷宮神」のせいで滅亡するという世界を、探索者を鍛える事で阻止しようとしています。

 その為に動画配信を行って、ネットユーザーたちと親密に関わっていく、……というお話になっています。



【タイトル・キャッチコピーの批評】

 タイトルは「長文の説明文タイトル」ですね。

 あまりにも長いタイトルは、メリットとデメリットがあると思いますので抽出したいと思います。


《メリット》

・長さだけで目に留まる。

・複雑な設定・ストーリーを説明できる。


《デメリット》

・説明文タイトルに忌避感を持つ読者は、まず読んでくれない。

・主題(最も重要な部分)が分かりにくい。

・そもそも長すぎて、忌避感が無くても全文を読む気を失くす。

・タイトルを覚えにくい。


 こんな所ですかね?

 個人的には説明文タイトルに忌避感はないのですが、デメリットの方が勝るように感じました。



 次にキャッチコピーですが、こちらは良いと思いますね。

 主人公目線の、魔王然としたセリフとなっていますが途中の「育ててやるから」の一文で良い意味で気が抜けてしまいます。

 タイトルの「リッチ」という単語は流石に目に留める読者も多いと思いますので、そちらと合わせて本作の方向性が何となく掴めますね。



 本作は、タイトルとコピーのどちらか一方だけでは上手く機能しないと感じました。

 「カクヨムオンリー」のタグがありましたが、キャッチコピーの無い、例えば「小説家になろう」などでは厳しいかも知れませんね。



【キャラクターの批評】

 登場するキャラは皆、ポップでコミカルで良いと思います。

 若干リアリティには欠けると感じましたが、「コメディ作品」なので気にはなりません。むしろこの手の作品は、余計なリアリティは邪魔にすらなりかねませんね。


 ただ少し、「名無しのネットユーザーたち」の主張が激しすぎるように感じましたね。

 本作では「直接の会話」以外に、「掲示板」「動画のコメント欄」「チャット」の3種による会話が使用されます。「名無し」が登場するのは「掲示板」と「動画のコメント欄」なのですが、この2つは登場機会が多く、喋るのは殆ど「名無し」です。


 おかげで一人称で書かれているのにも関わらず、主人公のキャラでさえ中々把握できませんでした。

 主人公も他のキャラたちも、かなり個性的だとは思うのですが「名無したち」が食ってしまっているように感じます。


 「主人公の一人称」「世界滅亡を防ぐのは探索者(?)」「一番目立っているのは、名無しのネットユーザー」

 これらのせいで、物語の支点(視点ではありません)がどこにあるのかが分かりませんでした。

 たぶん「群像劇」でも無いと思いますしね。



【文章・構成の批評】

 文章自体には、これといった欠点は無いように映ります。

 ただ先ほど申し上げた「掲示板」「動画のコメント欄」「チャット」の3種がそれぞれ違う表現で書かれてあり、その中の「動画のコメント欄」では読みにくさを感じました。


「動画のコメント欄」の読みにくさについてですが、本文から引用します。

――――――――――――――――――

:リッチ様が詩織ちゃんをガン見してます!

:きっと破廉恥ですわ!

塔ちゃん:なんでだよ!

:リッチが反省会レクチャーしてると聞いて

:ほら、同接者増えてるよ!解説よろ!

塔ちゃん:わかったよ。まず、メンバーへの指示。あれはミスだな。俺が転移できることは知ってるんだから、同時に攻撃させたらダメだ。

――――――――――――――――――

 「塔ちゃん」とは主人公の事ですね。名有りのキャラと名無しのキャラで『:』の位置がズレ、非常に読みにくいです。

 解決策としては、「名無しに仮にでも良いので名前を設定し、『:』の位置を揃える」ですかね。名前の文字数が違ってズレる場合、空白などを使う必要もありますが。


 「チャット」に関しては読み手によって感想が変わりそうですね。

 非常に頑張って「らしさ」を出そうとしたのは感じたのですが、私個人としては少し読みにくかったですね。(人によっては気にならないと思います)


 同様の手法で、主人公が旗を持っている演出も絵文字(?)で表現されているのですが、そちらも私は理解しづらかったですね。

 最初は表現そのものに気付かなかったのですが、気付いた後も「主人公が実際に旗を持っている」のか「そういう絵文字をネットに書き込んだ」のかが分かりませんでした。



 構成に移りますが、まず「ストーリーもの」として見た場合、全く話が進んでいません。なので「コメディのショート作品」として見ます。


 「コメディ作品」として見た場合、ややオチが弱いと感じました。

 次話へと話を繋げる為か「めでたしめでたし」や「チャンチャン」といったキレイな終わりではありません。(第5話だけは比較的キレイにオチがついてましたかね)


 また、先ほども申し上げましたが「名無したち」が出しゃばりすぎに感じます。

 戦闘時でも関係なく、常にしゃべり続けますので合わない人はとことん合わないと感じました。


 最後にですが、「ストーリーの途中から始まる為、理解が難しい」と感じました。

 本作は【あらすじ】で書かれている通り、主人公は2度の転生をしています。そして探索者を鍛える為に配信をしているのですが、「物語開始時点で、すでに主人公は有名人であり、『師匠せんせい』と慕う弟子もいる」という状態です。

 かなり分かりやすく書かれてはいるのですが、それでもこの構成は分かりづらいと感じざるを得ませんでした。



【ストーリー・設定の批評】

 ストーリーに関しては、まだ何も動いてはいませんね。むしろ、主人公にとっての日常しか描かれていません。



 そして設定ですが、率直に感想を申し上げると「面白そうなものを詰め込んだ欲張りセット」ですね。

 ですが、それぞれの設定が互いを邪魔する事無く上手く機能しているように思います。これは「コメディ作品」としたのも大きいと思いますね。

 「シリアスな作品」だったら、ツッコミどころが多発していたものと思います。



【総評まとめ】

 総評ですが「トッピング全部のせラーメンのようなコメディ作品」ですね。

 「あれもこれも」と面白そうなものを全部詰めたような作品ですが、決して破綻はしていません。「動画のコメント欄」や「チャット」のような工夫や努力も見えます。

 普通に面白いと思いました。


 「コメディ」や「ギャグ」は、作品と読み手の相性が特に大きなジャンルだと思いますので、合う人には最高の作品だと思います。

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