111~120作品の批評
★3 『このラブコメは糖度の低いラブコメです』
タイトル:『このラブコメは糖度の低いラブコメです』
キャッチコピー:小春さんは変な子だ。僕と同じで、変な子だ。
作者:だいこん
URL:https://kakuyomu.jp/works/16818093075743287481
評価:★3
【あらすじ】
道を踏み外した男の子と人によっては少し、だいぶ、大さじ一杯くらい変わった女の子のお話です。
【拝読したストーリーの流れ】
タイトルにもある通り、本作のジャンルは「ラブコメ」で登録されていますが本作には「コメディ要素」は殆どありません。
ですが以前に「カクヨムでは、男性主人公の恋愛ものはラブコメとして扱われる」という事が分かりましたので、一般的に言われる「ラブコメ」ではなく「恋愛」として批評いたします。
急に、悪い事がしたくなった。
そんな風に考えてしまった主人公「久世橋 時生」は、わざとバスを乗り過ごし、遅刻確定の1本遅れたバスに乗り込む。
大した意味があった訳では無い。ただ「少し、レールから外れてみよう」と、そう思っただけだった。
いつもとは違う時間帯のバスに、1人の女の子が乗車してくる。
隣の席に座ったその子「小春」はとっても変わった子で――。
「――学校、サボりませんか」
2人の出会いは、そんな事から始まったのだった……、といったお話でしょうか。
【タイトル・キャッチコピーの批評】
タイトルは作品の雰囲気や方向性などが伝わり、個人的には良いと思います。
ですが恐らく、「ラブコメを読みたい」と思う読者の大半は「甘い恋愛話」か「コメディ要素のある恋愛もの」を読みたいのではないかと推測します。
『糖度の低いラブコメ』とは、少しニーズが合っていないように感じますね。
また「ラブコメ」という単語を2回繰り返しているのは少しだけ稚拙に感じます。
『これは糖度の低いラブコメです』の方が簡潔で語呂が良いのでは、と愚考します。
キャッチコピーですが、こちらは「弱い」と感じてしまいます。
主人公目線からヒロインの事を「変な子だ」と言っている訳ですが、それでは読者に本作の魅力は伝わらないのでは、と思います。
もっと独自性のある伝え方をしなければ、読者を「キャッチ」は出来ないと思いますね。
【キャラクターの批評】
キャラクターは素晴らしいです。
第5話までの時点では、基本的に主人公とヒロインしか登場していないのですが、それぞれの表現と造形が絶妙です。
主人公の造形としては「平凡な高校生」といった感じなのですが、その感情の表現が恐ろしくリアルです。
日々の生活や、自分の考え方・感じ方に疑問を感じていますが、あくまで一人称で語られますので主人公は客観的・俯瞰的なものの考え方が出来ていません。それが実に「思春期らしい悩み」を演出しています。
ヒロインはキャッチコピーなどで書いてあるように「変な子」なのですが、その「変」具合が絶妙ですね。
何ていうか、「現実に居そう」と「絶対に居なさそう」の境目のように感じました。あまり「創作物のメインヒロイン」としては見ないキャラですね。
突拍子もないセリフなども言うのですが、不思議と「意味が分からない」とか「話が通じていない」とは思いませんでした。むしろ「非常にリアリティのある会話だ」とすら感じましたね。
【文章・構成の批評】
文章なのですが、非常にハイレベルです。
読みやすいのはもちろんですが、何より優れているのはその表現方法です。
本作の最初の一文は、【拝読したストーリーの流れ】でも引用した「急に、悪い事がしたくなった」から始まります。
主人公のする「悪い事」とは、「わざとバスを乗り過ごし、学校を遅刻する事」です。
どうですか? 逆に主人公の善良性が際立ちませんか?
これが「万引き」などであれば言葉通りに「悪い事」です。最初の言葉が「サボりたくなった」であれば「あぁ、そうなんだ」という感想しか出てきません。
主人公は「サボり」に罪悪感を感じている「良い子」だという事が良く分かる、素晴らしい表現です。
私は最初の数行を読んだだけで、本作のクオリティの高さを感じました。
次に構成ですが、こちらは非常にゆっくりですね。
第5話までの時点では主人公とヒロインの邂逅。主人公の状況説明。ヒロインとの再会までしか起きていません。
恐らく、2人の間にはまだ恋愛感情は全くありません。
個人的にはキャラの描写や表現に力が入っていますので満足なのですが、多くのweb読者としては物足りないと感じる方も多いかも知れませんね。
【ストーリー・設定の批評】
ここに関しては、まだ何とも言えませんね。先ほど申し上げたように、話が全然進んでいませんので。
主人公はともかく、ヒロインには何か秘密がある雰囲気ではあるのですが、第5話までの時点では何も分かりません。
【総評まとめ】
総評ですが、「素晴らしく高品質な恋愛もの。だがweb小説向きではない」ですね。
web小説では、何よりもまず「序盤での分かりやすさ」が求められると聞いた事があります。そして、それは事実だと私も感じます。
序盤で「主人公たちが出会っただけ」の本作は、「分かりやすい恋愛もの」では無いと思いますね。
作品の出来自体は素晴らしいだけに、あまり読まれていないのが非常に口惜しく感じます。
なお、本作を★3と評価致しましたが、作者のだいこん様のご意向により作品への★は付与いたしません。
きっと、何かしらの強い「こだわり」があるのだと思われます。真意までは分かりかねますが、その姿勢には尊敬の気持ちを送りたいと思います。
本作は全25話で完結済みですし、気軽に読めると思いますので皆さまも一度、読んでみてはいかがでしょうか?
(★が送れませんので、せめて宣伝を)
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