★1 滅んだ世界の最後の皇帝、200年越しに現代へ君臨す〜ダンジョン配信を始めるも仲間が炎上します〜


タイトル:滅んだ世界の最後の皇帝、200年越しに現代へ君臨す〜ダンジョン配信を始めるも仲間が炎上します〜

キャッチコピー:今、最高に炎上してる最強ダンジョン配信者が往く——!

作者:宵空*

URL:https://kakuyomu.jp/works/16818093080040226330


評価:★1


【あらすじ】

ここは、地球……?


異世界に転生し、二度目の人生を皇族として生きていたユーリ・シルヴァローズ。数多くの戦争、魔物蔓延るダンジョン。争いの絶えない世界で、200年にも及ぶ死闘を繰り広げる。その末――仲間たちと共に地球に転移してしまう。


そこで主人公は宣言する。あの日滅びた帝国を、地球で再び建国すると。

飲み会で、ノリで、酔った勢いで、そう決意した。


そのためにもダンジョン配信でお金を稼ぎ、知名度を上げていく!


「最近の私の趣味は読書だ! マンガ国家というサイトはなんでも無料で読めてお得だな!」


――まてアリシア、それは違法サイトだ……!


……現代に馴染めない異世界人の仲間と元地球人の皇帝による、ダンジョン×配信=現代ファンタジー!



【拝読したストーリーの流れ】

 前世では40代後半で死んでしまった主人公。

 だが今世では「帝国シルヴァローズ」の第三皇子の「ユーリ・シルヴァローズ」として生を受けた。

 前世とは違い、恵まれた環境に「イージーな人生を送れそうだ」などと考えていたがとんでもなかった。

 この世界は魔物が蔓延り、国のために皇帝が剣を振るのは当たり前という世界だったのだ。


 皇族として、2人の兄と共に武技・勉学ともに厳しい教育を受ける「ユーリ」。

 強く逞しく成長した「ユーリ」は許嫁と結婚も果たし、近隣諸国との戦争も起こる中、仲間と共に国内の治安維持に務めていた。

 そして15年にも及ぶ戦いの末、ようやく戦争も収まる。

 だがその10年後、国境付近で起きたテロによる魔道兵器の爆発により国家戦略規模のダンジョンが現れた。


 ダンジョンからは魔物が溢れ、また新たなダンジョンが生まれる。

 その繰り返しにより人の生活圏は追いやられ、いつしか「ユーリ」と仲間以外は全てがダンジョンに呑み込まれた。

 だがそれでも「ユーリ」たちは戦う事を止めなかった。


 それから150年。

 魔法により老いが無くなっていた「ユーリ」たちは、とうとう最後のダンジョンを攻略した。

 だがその時、「ユーリ」たちは突然の光に呑み込まれ――。


 目を開けるとそこは、前世の世界「地球」だった……、といったお話でしょうか。



【タイトル・キャッチコピーの批評】

 タイトルはいわゆる「説明文タイトル」ですね。

 このスタイルの良い所は「本文を読まなくても内容が分かる」という事だと思うのですが、本作は少し分かりにくいと感じました。

 これは単純に「情報過多」ですね。


 特にこのタイトルからでは「主人公が君臨する」のと「仲間が炎上する」のどちらがメインであるのかが分かりません。(ついでに「君臨」が具体的に何を指すのかも分かりませんが)


 個人的にはですが、「必要な情報を伝えずに、必要のない情報を伝えている」ように感じてしまいました。



 次にキャッチコピーですが、こちらはシンプルですね。

 ただシンプル過ぎて見所がありません。

 「ダンジョン配信もの」は既に1つのジャンルとして認知されるほど溢れています。このコピーでは、他の「ダンジョン配信もの」との差別化は出来ていないように感じます。



【キャラクターの批評】

 キャラは悪くはないと思うのですが、第5話までの時点では判断が難しいですね。

 第5話まででは主人公以外は掘り下げてはおらず、仲間たち3人は人となり程度しか分かりませんでした。


 では主人公はというと、物語の主人公としては少しクセがありますね。

 その生い立ちからか第2話以降は自分の事を「我」と呼び、尊大な口調で話します。本作は地の文が一人称で語られていますので、ここに違和感や読みにくさを感じる読者もいるかも知れません。



 また、ここからは第6話以降の予想となりますので全く見当外れになる可能性もありますが、危惧する点がありましたので指摘させて頂きます。


 サブタイトルに「仲間が炎上します」とありますので、地球の常識を知らない仲間たちが「やらかす」という話があるのだと思います。

 ですが仲間たちは主人公と対等ではなく、皇帝とその配下という関係です。


 タイトルにあるくらいなのですから何度もやらかしを繰り返すのではないかと予想するのですが……。

 仲間たちは主人公の言う事を聞かないのですかね? それで100年以上も、自分たち以外が滅んだ世界を戦い続けてきたんですかね?


 この設定が、作品の足を引っ張る事は無いかと少し不安です。



【文章・構成の批評】

 文章ですが、基本的にはキレイな文章で読みやすいと思います。

 特に目立った粗はなく、誤字脱字なども見受けられませんでした。


 問題は、先ほど申し上げた「主人公の喋り方のクセ」と「序盤(第4話まで)がダイジェストの為、分かりにくい」事ですね。


 本作は「第4話までが転生した異世界」で「第5話以降が転移した地球」の話となります。物語のメインは「地球」です。

 その為、作中時間で200年を4話で描いているのですが、やはり駆け足であり説明不足感は否めません。



 構成に移りますが、「異世界の話が中途半端」だと感じました。

 先ほど述べたように「第4話まではダイジェスト」です。その為、主人公以外はあまり語られませんし、話も駆け足で説明不足の為に、ここだけを見ても面白くはありません。


 「面白くない話」に、最初の4話を割くのは良くないと思いますね。

 もっと短く纏めるか、いっそもっと長く尺を取って「異世界の物語だけで面白い」と感じさせるような構成にした方が良いかも知れません。


 もちろん「面白くない」と感じたのは私の主観ですし、物語のメインが「ダンジョン配信もの」であるなら長尺を取るのは良くないでしょうね。



【ストーリー・設定の批評】

 ここはストーリーと設定で分けるのではなく「異世界と地球」で分けて批評を行いたいと思います。


 まずは異世界についてですが、こちらは設定が非常に作り込まれ、ストーリーも悪くないと思います。

 ただ先ほど述べたように、その多くは説明不足で設定の細かいディテールは分かりません。(スタンピードなど、よく使われる単語なので何となくは分かりますが)

 ストーリーについても主人公以外はあまり語られませんので、「流れ」は悪くなくても細部の人間関係などは曖昧です。


 基本は良いと思いましたので【構成】で述べたように「長尺を取れば異世界の物語だけで面白い」ものにも出来たと思います。

 作品のコンセプトからはズレるかとは思いますが、少し勿体ないと感じたくらいです。



 次に地球に戻ってからのお話ですが……。まずは第5話しか読まずに評価している事をご留意ください。

 こちらは1話しか読んでいないのでストーリーについては殆ど分かりませんが、設定に関しては残念に思いました。


 これは「現代日本を舞台にしたダンジョンもの」の殆どに言える事ですが、その設定にはムリがあるんですよね。

 「民間人の主人公がダンジョン攻略」「現代兵器は使えない」「ダンジョンから得られる産物が高価値」「魔法やスキル、レベルなどがある」「街の治安は維持しており、平和が保たれている」と、こんな所でしょうか?

 本作がどれだけ当て嵌まるかは分からない部分もありますが、大きくは外れていないと思います。


 最初から整合性を無視したような作品なら「そういう世界なんだ」と納得も出来るのですが、本作では頑張って整合性を取ろうとしているような節が見えます。

 残念ながら、それが却って違和感を浮き彫りにしているように感じてしまいました。



【総評まとめ】

 総評ですが「余計なものをつけ足した結果、作品が破綻している」と感じました。


 「日本の常識を知る主人公と、知らない仲間たちのドタバタコメディ」というコンセプトは良いと思います。(タグには「コメディ」があります)

 ただ、このコンセプトには「不要」なものが2つあると感じました。

 それは「異世界の崩壊というダークな設定」と「ダンジョン」です。


 序盤のダークな世界観は、後の「コメディ展開」に支障があるとすら思います。

 そして作者の宵空*さまは、非常に丁寧に世界観や設定を考えておられるように見受けられましたが、それでも「現代日本にダンジョン」という設定に整合性を取るのは至難の業です。


 私は「異世界の話だけで面白く出来そうだ」と感じましたし、「ダンジョン配信なんて無くても、常識知らずの仲間たちが日本で生活するだけで面白そうだ」とも感じました。

 ですが両方を合わせ、「ダンジョン配信」を足した結果「破綻している」と感じてしまいました。

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