★1 クリスマスケーキとクリスマスツリー
タイトル:クリスマスケーキとクリスマスツリー
キャッチコピー:あたしも、私も、忘れられないクリスマスの夜になるはずだった。
作者:大田康湖
URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330669012147907
評価:★1
【あらすじ】
渋谷でそれぞれの彼氏とデートする約束をした女子高生、夏夜と星未。しかし、彼氏は途中で帰ってしまった。2人のクリスマスの夜の物語。
【拝読したストーリーの流れ】
本作は全2話の短編です。
また本作の作者である大田康湖さまは、以前に批評させて頂いた『令和二年、それぞれの秋』の作者でもあります。
クリスマス……。それは恋人たちが一夜を過ごす日。
主人公「夏夜」も、恋人と共にホテルで過ごす予定だった。しかし「夏夜」がシャワーから出ると、そこに恋人の姿はない……。残されていたのは彼からのクリスマスプレゼントと、「娘が熱を出したから帰る」というスマホへのメールだけだった。
同日、もう一人の主人公「星未」もまた、彼氏とホテルで過ごす予定だったのだが、電話を終えて戻って来た彼のセリフは「妻が急に帰ってくると連絡があったから、今日は帰る」というものだった。
不倫をしていた女子高生2人はその後……、といったお話でしょうか。
【タイトル・キャッチコピーの批評】
タイトルは決して悪いという訳ではないのですが、良い部分も見当たりませんでした。
恐らく「ケーキを夏夜」「ツリーを星未」に見立てて「2つの物語」である事を示しているのだと思われますが、初見の読者には伝わりません。
ケーキもツリーも、クリスマスには付き物のアイテムなのですから意外性も無く、ただ「普通に連想する単語を繋げただけ」のように見えてしまいました。
対してキャッチコピーは良いですね。
「あたしも、私も、」が、2人の人物が主役である事を連想できますし、「はずだった」の一文が「予想外の不幸」を連想します。
本文の内容と作中のストーリーを、直接的な説明を行わずに伝えているのは美しいですね。
【キャラクターの批評】
キャラクターですが、「魅力のある、特徴的なキャラクター」は描けてはいないと思いました。
というのも、本作は1話1000文字ほどしかありません。これで2人の主人公のキャラを描き切るのは尺不足ですね。
ただ、2人とも「不倫をしていて、クリスマスに別れる」という状況は同じなのですが、少ない描写からでも2人に差別化が出来ていたのは良かったと思います。
1人目の「夏夜」は最初から不倫を自覚しており、彼とはマッチングアプリで知り合ったという事から「パパ活女子」のような雰囲気を匂わせます。
プレゼントにブランド品をねだり、別れた後はそれを質屋に売ろうとしていた事からもそう思わせるのに十分ですね。
対して「星未」は不倫だとは気付いておらず、彼からの「妻」という言葉で初めて認識します。
彼とはバイト先で知り合い、彼から「プレゼントは食べ物がいい」と言われて手作りのクッキーを用意してきた事からも「夏夜」とはずいぶん印象が違いますね。
状況が似通っている為に、一見すると「似た者同士」にも見える主人公たちですが、よく見ると「全然違う2人」に見えたのは面白いですね。
【文章・構成の批評】
文章は非常にキレイですね。ここは前回の批評と変わりありません。
問題点も同じですね。空行が殆ど無いので読み難いです。
web小説では行間が短いので、適度に空行を設けないと文字が詰まって見えます。
モニターに文字がびっしりと埋まっていると非常に読み難いので、適度に空行を設ける事をお勧めします。
構成ですが、ここは良いですね。
第1話で「夏夜」を描き、第2話で「星未」を描いた末に、2人が合流する。良いと思います。
また先ほど申し上げたように、2人に変化をつけているのも良いと感じました。
全く同じ話を2度繰り返されても読者は退屈ですからね。
ただ、もう少し分かり易く変化をつけても良いかな、とは思いました。
これも先ほど申し上げた通り、「一見すると同じ」にも見えます。一部の読者からは「同じ話を2度繰り返してるだけ」のように見えるかも知れません。
【ストーリー・設定の批評】
ストーリーと設定についてはまとめて批評させて頂きます。
2人の主人公が同じ日に、同じような境遇で彼氏と別れる。そして別れた2人は街中で偶然会って……。という流れは良いと思います。
ですが、「ドラマ」が足りないように感じてしまいました。短編なので仕方のない部分もあるとは思いますが「もう一押し」の何かが欲しかったですね。
何と言うか、「オチの無い話」を読んだ気分になってしまいました。
また、「ようやく前に進めそうな気がした」という言葉で本作は締めくくられているのですが「ようやく」の意味が分かりません。
本作は一人称で描かれ、第2話の主役は「星未」です。彼女は「さっき、彼が既婚者だったという事を知ったばかり」であり、そこから数時間も経ってはいないと思われます。
「ようやく」と呼ぶには時間が短すぎませんかね?
最後にですが、「不倫」をテーマにする必然性は感じませんでしたね。
勝手ながら応援コメントを拝見しましたが、そこでは作者の大田康湖さまが「元々のお題に入っていた」と仰っておられたので、何かの「お題企画」で作られた作品なのだと思います。
しかし残念ながら、「不倫」というお題を本作に有効的に活用したとは見えませんでしたね。
私はコメントを見て「ただ、お題通りに作っただけの作品」のように感じてしまいました。
【総評まとめ】
以前に批評させて頂いた作品『令和二年、それぞれの秋』でもそうでしたが、大田康湖さまは「リアルな人物描写」を好んで描かれる作家さまのようです。
『令和二年、それぞれの秋』での描写は凄かったですね。本当に実在の人物かのようでした。(「リアルであれば面白い」という訳ではありませんが)
しかし残念ながら、本作では大田康湖さまの持ち味は活かし切れていない様に感じました。原因は尺不足だと思います。
また「リアルに寄り過ぎて、分かり易いオチが無い」という傾向もあるように感じました。(2作品しか読んでいないので見当違いかもしれませんが)
綺麗にオチが付かないと、読後感がモヤモヤしてしまいます。
決してそういった作品を否定するつもりはありませんが、綺麗なオチの付いた作品の方が多くの読者に好まれるとは思います。
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