★0 抜刀ナトラ
タイトル:抜刀ナトラ
キャッチコピー:六大国の思惑が交差する魔導具バトルファンタジーッ
作者:白牟田茅乃
URL:https://kakuyomu.jp/works/1177354054892298645
評価:★0
【あらすじ】
孤児だったナトラは、クノと出会うことで、戦闘用魔導師の育成機関である天龍院に連れてこられた。
それから六年後のある日、クノは国別対抗戦という、戦闘用魔導師の大会に出場することになるが、そこで命を落としてしまう。
さらに四年後、クノの仇を討つため、ナトラもまた国別対抗戦に挑むのだった。
特別試験では、天真爛漫娘アナスタシアと戦い辛勝を収め、その甲斐あって無事にオヴリウス帝国から国別対抗戦の参戦が決まる。
しかし同時に、国務長官であるケイネスの陰謀が動き出すのだった。
【拝読したストーリーの流れ】
本作にはエピソードにナンバリングがありませんでしたが、本批評内では1話目を第1話という風に呼称させて頂きます。
孤児として犯罪者まがいの事をして幼少を過ごしてきた主人公。だが役人に捕まり、引き取り手を待つ施設で日々を過ごす事となる。次々に貰い手の見つかる仲間たちを横目に主人公はこの世を呪っていた。
そんなある日、主人公を引き取ろうとした女「クノ」が現れる。「クノ」に引き取られる事となった主人公は「ナトラ」という名前を貰い、「天龍院」という名の修練施設で過ごす事となった。
それから6年。
すっかり「天龍院」での生活にも慣れた頃、六大国の代理戦争とも言える国別対抗戦の選手として「クノ」が参加する事になった。
だが「クノ」は帰ってくる事は無く、帰ってきたのは彼女の遺品だけだった。
更に4年後。
「ナトラ」は国別対抗戦に参加する為、その前哨戦とも言える特別試験の会場に居た……、といったお話でしょうか。
【タイトル・キャッチコピーの批評】
タイトルは語呂が良くていいですね。
「抜刀」という言葉から「主人公が刀を持って戦う」という事が分かります。
ただ「ナトラ」という名前は珍しいので、読者に「主人公の名前だ」と気付いて貰えるかは微妙だとは思いますが。
キャッチコピーは作品内容の説明となっていますね。
タイトルではストーリーなどが分からないので、ここで説明するというのは良いとは思います。
ただ問題も多いように感じました。
まず「六大国の思惑が交差する」ですが、この文面からは「重厚な戦記もの」や「政争もの」が連想されます。
ですがその後に続く言葉と、第5話までを読んだ時点では「戦記もの」としても「政争もの」としても、期待は出来ませんでした。
次に文末の「ッ」は特徴的ではありますが、個人的にはあまり良いとは思えませんね。普通に「!」の方が良いのではと思います。
そして先ほど挙げた、前半部分と後半部分のギャップが激しすぎると感じました。
タイトルやコピーでは、読者に「この作品がどういう物語なのか」を正確に伝える事が重要だと思います。
そこには「明確なターゲット」、つまり想定している読者に対しての「一貫したメッセージ」が必要です。作品にそぐわない表現の言葉や、複数のジャンルやテーマを匂わすような言葉の組み合わせは避けた方が良いと思います。
【キャラクターの批評】
キャラクターですが、全体的に良くないですね。
そう思った点を1つずつ挙げていきます。
まずは全体的に「作者の思う、格好いいセリフ」を喋っているだけで、そのキャラクター性が定まっていないように感じる事ですね。
セリフの1つ1つが「格好つけ」「ウケ狙い」を意識してしまっているように感じ、その為かキャラがブレて見えて、その正確な造形が分かりません。これは主人公が特に顕著に感じました。
次は説明不足だという事ですね。
本作はあらゆる物事の説明が不足しています。これについてはまた後に語りますが、キャラにおいても説明不足が多発しています。
その最たる例は「主人公の名前」ですね。主人公の名前は「キラミヤ・ナトラ」ですが第2話のヒロインのセリフで突然「キラミヤ」と呼ばれます。名乗っていないのに名前を知られていた主人公が何か考えを膨らませていましたが、読者も初耳ですよ?
(第1話の序盤で、名前を貰う前に「ナトラ」という記述が出てきましたが、こちらは単なる間違いだと思います)
とりあえずはこれで最後としますが、「主人公とヒロインのセリフの区別がつかない」事は問題だと思いますね。
ヒロインは「男勝りな性格」だというキャラ付けだとは分かりますが、主人公とセリフの区別がつかないというのは大問題と思いますね。
私は読んでいても、どちらのセリフか分からない事が頻発しました。
【文章・構成の批評】
こちらの問題ですが、まずは先ほど述べましたが説明不足が多いです。
中には(今は)説明する必要が無い、説明よりもテンポを重視したというものもあると思います。
ですが第2話から始まる特別試験のルールや、腕を斬り落とされても軽傷扱いとされるような世界の常識には説明が必要だったと思います。
特別試験のルールが分からない為「ヒロインが一試合目を棄権したのに、二試合目で主人公と対戦する」となった時、訳が分からなくなりました。
また、戦闘中に主人公の腕が斬り落とされたとあった時も、その後「致命傷は回避している」などの記述があったり、落とされた左腕に対する言及が無かった為、「ただ斬り付けられただけ」だと誤認し、試合終了後に改めて演出される事でようやく「やっぱり落とされたのだ」と再確認しました。
これら以外にも「説明不足」と感じた点は多々ありました。
次に誤った文章や表現が多い事ですね。
「背中にのしかかる彼女が抱きしめられていた」「呆気に飲まれ」「ただ黙って全身の暴れるのをやめた」「師匠が六人いる師範代たちが全員を集める」
これらは全て第1話の文章です。この第1話を読んだ読者は、続きへの期待を持てないと思います。
また、特にキャラのセリフに感じたのですが「前後の文脈が繋がらず唐突」だと感じましたね。
正直、非常に読み難かったです。
構成についても問題がありますね。
まず本作のエピソードにナンバリングがされていないのは先に述べた通りですが、本作のエピソードタイトルは「ナトラ Ⅰ」「ナトラ Ⅱ」「アナスタシア Ⅰ」という風に「そのエピソードの主観となるキャラ名と番号」で書かれています。
これは読者からすれば「以前のエピソードをもう1度読みたい」と思った時に非常に分かり難いですし、作者さまも改稿などをする時には分かり難いでしょう。
あとは第1話と第2話で説明が多すぎると思いましたね。
もちろん話を理解するために最低限の説明は必要ですが、いきなり大量の説明をされても読者は理解できませんし面白くありません。
そして何より問題なのは「説明が多いのに説明不足過ぎて全く理解できない」事ですね。このおかげで、ただでさえ面白くない説明文が更につまらないものへとなっています。
【ストーリー・設定の批評】
やりたい事は分かるのですが、駆け足で進み過ぎ・詰め込み過ぎだと感じました。
そのせいでキャラの掘り下げが出来ず、説明はおざなりになっていると思います。
話をテンポよく進める事を優先した結果か、主人公の行動理由だと思われる「恩人の死」もあっさりと表現されてしまいましたしね。
これでは「話は理解できても、感情移入する事はできない」と思いますね。
設定に関しては、大変色々と考えられています。
六大国や国別対抗戦、この世界における魔法など、様々な「本作特有の用語」が作られ、特に魔法関連に関しては全てルビを振り、比較的分かり易くされていると思います。魔法関連用語の名称はカッコイイと思いましたね。
ただ先程から述べている様に、本作は圧倒的に「説明不足」です。
恐らく、「作者の頭にはあるが、文章に起こしていないので読者には分からない」設定が大量にあります。
問題なのは、その「読者に分からない設定」が「分かっている前提」で話が進んでいる事です。
【総評まとめ】
本作の感想を述べますと「作者さまの、面白い作品を作ろうという気持ちは伝わるが、一切面白さが伝わらない作品」ですね。
作者である白牟田茅乃さまには、何よりも「読者目線に立つ」能力が必要かと思います。
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