★- 証明できない君と世界


タイトル:証明できない君と世界

キャッチコピー:何者でもない俺と、何者にもなれない君。

作者:こまどり

URL:https://kakuyomu.jp/works/16818093073161007018


評価:★-


【あらすじ】

多くの犠牲者を出した鳥取地震から十年。

両親を亡くし、古びた一軒家で妹と二人で暮らす無気力高校生の間宮律は、一人夜の海を見に行く。すると、律は浜辺で凪沙(なぎさ)と名乗る記憶喪失の少女と出会う。



凪沙の記憶を取り戻すため律は力を貸すことになるが、そもそも凪沙という人間が存在するかどうかも疑わしくなるのだった。


十年前の震災、凪沙が現れてから起こる不思議現象、謎のデジャブ、そして凪沙の正体。


果たしてこの世界は、二人にどんな結末をもたらすのか-。


夏、青春、SFの三拍子で送る、今を生きる高校生たちの物語。



【拝読したストーリーの流れ】

 本作はプロローグがありましたので第4話までを読んだ批評とさせて頂きます。

 また、本作のジャンルは「SF」です。第4話までを読んだ限りでは「SF」要素は全く無く「現代ドラマ」のような雰囲気でしたが、【あらすじ】や「タグ」にも書いてありますので間違いでは無いと思います。

 ですので、隔離部屋に置く事にさせて頂きます。



 10年前に起きた鳥取地震。この災害で両親を失った主人公「間宮律」は妹と2人暮らしで、学校でも親しい友人を作る事は無かった。

 そんなある日、砂浜で記憶喪失の行き倒れ少女「凪沙」と出会う。

 行く当てのない「凪沙」を住まわせる事になり……、といったお話でしょうか。


 また本作に出てくる「鳥取地震」ですが、実在の災害では無いようです。

 軽く調べてみましたが、同名の地震はありましたが本作の地震とは時期などが異なります。



【タイトル・キャッチコピーの批評】

 タイトルは、一昔前の「セカイ系」の作品のような雰囲気を感じますね。個人的には嫌いではありません。

 ただし、やはりweb小説では「分かり易さ」が求められます。こういった「文学」を押し出したようなタイトルは敬遠されるように思います。



 キャッチコピーも、全く同様ですね。

 非常に深そうな、文学性を感じるコピーです。ですがやはり、「分かり易さ」とは遠いですね。



 タイトル・コピーの共に、良いセンスを感じます。

 ですが残念ながらweb小説に向いているとは言い難いように思います。



【キャラクターの批評】

 本作はキャラクターも「分かり易い」特徴はありません。特徴だけで判断するなら「良くも悪くも普通」といった所でしょうか。

 一応、ヒロインは「ハラペコ」といった特徴はありましたし、妹や委員長、主人公に絡んでくる不良なども「それらしい」と言えます。ですがそこ止まりで、このキャラの特徴はコレだ、と言えるような特徴は無いと感じました。


 ですが、キャラの描写やセリフなどは非常に丁寧で、その造形がしっかりと創られている事が分かります。

 主人公は特に無個性だと感じましたが、その心理描写などが細かく、また無理のない思考回路から、しっかりと「生きたキャラ」だと思えました。



【文章・構成の批評】

 文章は非常に読み易く、また描写も細かくて素晴らしいと思います。

 ケンカのシーンなどもあったのですが、その描写も的確で「今、キャラがどのように動いているのか」が、文章を読んだだけで伝わってきます。

 非常に、お上手な作者さまですね。


 ただ1点、空行が多すぎるのだけは気になりました。

 文章が優れているので、読むのにストレスは感じなかったのですが、スクロールの回数が増え、そこは手間に感じます。

 あと、エピソードの最後に大量の空行を入れているのは何故でしょう?(20行以上の空行が最後にあります)

 これだけは意図が理解できませんでした。


 最後に細かいですが、主人公が警察に連絡するかどうかを悩む際のシーン、漢字で「百十番」と書くよりも「110番」の方が良いと思います。



 続いて構成に移りますが……、正直「地味」ですね。

 プロローグは10年前の出来事で、第4話までの時点ではまだ繋がらないので伏線だと思います。しかしその後、第1話~第4話までの間で盛り上がりが少ないと感じました。

 記憶喪失のヒロインが、本作の「SF」要素を担うのだと思いますが、第4話までの時点では「SF」要素は皆無です。人物描写を含め、文章が優れていらっしゃるので「人間ドラマ」としてなら読めますが……、やはり「地味」である事は否めないと思います。


 また、エピソードの最後が「ヒキ」として弱いと思いますね。

 話としてはキレイに纏まってはいるのですが、そこで終わってしまっていて、次回への繋がりも薄いです。

 これでは読者に「続きが気になる」とは思っては貰えないのでは、と思います。



【ストーリー・設定の批評】

 本作は描写が非常に丁寧で、しかしそのせいでテンポが悪いです。ストーリーと設定は、第4話までの時点では殆ど掴めません。

 ここの評価は、まだ出来ませんね。


 ただ、主人公が妹と2人暮らしだという理由の説明は「作者の作為」を感じました。その件について説明させて頂きます。

 主人公たちの両親は10年前の地震で亡くなり、2人は母方の親戚に引き取られました。しかし、その親戚とは折り合いが悪く、主人公たちの面倒を見切れなくなります。

 そこで主人公は父方の祖父母を頼ります。彼らは医者で、金持ちで、人格者でした。主人公たちの受け入れも快諾します。

 ただし、その条件として主人公と妹の2人暮らしをする事が決まります。その理由は「夜遅くまで医院で働いているから、子供たちの生活の世話をする体力がない」との事です。


 ……少し無理がありませんかね?

 もちろん実際の話なら「最初からこうすれば良かった」というような、後から考えれば、もしくは他人から見れば「無駄な回り道」や「不可解な行動」を取る事もあると思います。

 しかし創作物ならば、「不可解な行動」を取らせるのなら「なぜそうなったのか」を説明する必要があると思います。

 それをしなければ、読者からは「意味不明」だと思われてしまうからです。


 この件で私が「意味不明」だと感じたのは「なぜ最初から、父方の祖父母が引き取らなかったのか」という事と、「なぜ世話が出来ないのに引き取ったのか」という事、「未成年の2人暮らしをさせるくらいなら、世話を焼く事が出来なくても同居した方が面倒は少ないだろう」という事の3点です。


 この疑問に対する答えが作中に無い為、「妹と2人暮らし」という状況を作る為の「作者の都合」だと感じましたね。



【総評まとめ】

 まとめますと「非常に良い文章を書かれているが、地味でテンポが悪い」と感じました。

 特にストーリー面は殆ど動いてはいなかったので、この作品を正当に評価するのなら、もう少し読まなければ無理ですね。

 ……ジャンル違いの作品であり、作者さまからの連絡もございませんでしたので、評価はしませんが。

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