★1 楽楽狗─ららぐ─
タイトル:楽楽狗─ららぐ─
キャッチコピー:それは〝常識〟か〝偏見〟か。胡乱な市場へようこそ。
作者:松山なえぎ
URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330662800461996
評価:★1
【あらすじ】
あらゆる世界と繋がる市場、「夜市」に迷い込んだ女子高生、風架。人間の常識が通用しない場所で、夜市の権力者である貴族から課せられたのは、家族の命と引き換えの、多額の借金を返済をすることだった。
借金返済の日々の中で起こる、異種族同士の衝突や貴族間の問題。面妖で奇怪な生き物たちが闊歩する危険な市場に、〝最弱種族〟の人間たちが立ち向かう。
【拝読したストーリーの流れ】
本作の第4話は前後編に別れていました。
その為、本批評は第4話までを読んだ批評とさせて頂きます。
様々な異世界と繋がり、異種族が闊歩する不思議な市場「夜市」。
そこに迷い込んでしまった主人公「風架」と友人の「佳流」。だが「佳流」は運悪く、「夜市」の商人に捕まってしまう。弱く、珍しいだけの人間に人権は無い。
「風架」を助けた3人のお面をつけた男女が言うには、「佳流」を助ける為には売られる彼女を買うしかない。だが「風架」には、そんな金は無く……。
困り果てた「風架」を助けたのは、4人目のお面の人物だった。しかし当然、無償ではなく……、といったお話でしょうか。
【タイトル・キャッチコピーの批評】
タイトルは、作品内の固有名称ですね。
第4話までの時点では「楽楽狗」が一体何なのかはハッキリとは語られませんでした。
ただやはり、初見の読者にはこのタイトルをみても「どんな作品か」が分かりません。ジャンルも世界観も、作風も想像できないと思います。
次にキャッチコピーですが、こちらもあまり良いとは思いませんでした。
何とか雰囲気だけは伝わりますが、それだけです。
タイトル・コピーのどちらを見ても、作品の情報が殆どありません。
恐らく、第1話を実際に読んでくれる読者はかなり少ないものと思います。
【キャラクターの批評】
キャラの造形自体はさほど問題無いと思います。
それぞれの言動に大きな矛盾は無いと思いますし、雰囲気もよく作れているのではと思います。
序盤の主人公の行動が少しだけ「物語の都合で動いている」ようにも映りましたが、切迫した状況と考えれば辻褄が合わなくもありません。
ただ、友人を買って助ける際に41万の所を、更に700万の価値のある髪飾りを付けたという話は疑問しか湧きませんでした。
それで741万の貸しだ、というのは「まるで詐欺のようだ」とすら感じましたね。
そして、登場人物が多すぎると思いましたね。
特に第3話でいきなり12人も出たのは驚きました。(実際にセリフがあったり、名前が出てきたりしたのは6、7人くらいだと思います)流石に多すぎますね。
設定や状況を「リアルに」考えれば、人数が多くなるのは自然ですし、仕方の無い事とは思います。
しかし「読み物として」考えれば、ストーリー進行の重要な役でも無く、雰囲気作りに大きな貢献も出来ていないキャラは、読者の妨げでしかありません。
もう少しだけ、少なく出来ればよかったと思いますね。
【文章・構成の批評】
文章は全体的に読み易く、雰囲気も上手く作れていました。
ただ小さな難点ですが、2つ気になる点がありましたので指摘させて頂きます。
1つは空行が少ない事ですね。
もう少し、多くした方が読み易くなると思います。特にセリフの前後は空行があった方が読み易いと思いますね。
もう1つは、難解な単語です。
特に感じたのは「小尉の面」ですね。作者さま以外の本批評を御覧の方は何と読みましたか? 「しょうい」ではないんです。「こじょう」なんです。(能楽のお面ですね。分からないので調べました)
たぶん、読める方はかなり少ないと思います。これは極端にしても、読み難い単語にはルビを振った方が良いと思います。
続いて構成に移ります。
まず、冒頭の始まり方が唐突で、理解が追い付くのが大変でした。
物語が始まった時、すでに主人公たちは「夜市」に迷い込んでおり、友人は檻に入れられている状態でした。できれば、「夜市」に迷い込んで、捕まる経緯を書いて貰った方が読者としては理解し易いですね。
それでなくても独特な世界観で理解が難しいのですから、不要なストレスを読者に与えるべきでは無いと感じました。
もう1つ。第1話の文字数が多すぎます。(約12000文字)
第2話以降は少し、少なくなるのですが(約5000~9000文字)、第1話で1万文字超を見せられては、それだけで離れる読者もいると思います。
【ストーリー・設定の批評】
ストーリーと設定は、個別に見れば良いと思います。
話の流れは丁寧に描写されていますし、目的も分かり易く示されています。
設定も作り込まれて、魅力のある世界だと思います。
ただ、2つの嚙み合わせが上手く出来ていないと感じてしまいました。
先程も述べたように、冒頭で主人公の友人が捕まり、商品とされてしまいます。しかしこの「夜市」には「掟」があり、治安部隊もあります。なのに、友人を捕えた商人(?)は「合法のように」扱われています。
「掟」の詳細が不明な為、ハッキリとは申し上げられないのですが「治安が守られている」とは到底感じられませんでした。
そして、売買をするなら当然「お金」の話が出てくるのですが、なぜか「円」で語られます。一応、「換金所」で「異世界のお金と両替できる」という一文はあるのですが、話の流れでは「円」で進められているようです。(作者さまによる引っかけの可能性もありますが)
ついでに、お金が流通しているのなら、先の商人(?)の行為が余計に無法行為にしか思えませんね。
先に述べた、友人を買い取る際の700万の髪飾りを付けた話も設定との齟齬を感じます。
「夜市」では41万以下の安い商品を売る「我楽多市」と、42万以上の高い商品を売る「奇貨市」があるそうです。友人は「我楽多市」の最高値の41万がつけられていましたが、更に700万の髪飾りを取引に使われています。「市」のルール、破られてますよね? お金では無いから問題無いのでしょうか?
ついでに41万5000はどうするのか? も、一応付け加えておきます。
【総評まとめ】
「どれも基準値以上、しかし纏まりが悪い」というのが、私の感想です。
特に設定面は、作り込まれているだけに矛盾などが起きやすくなっているように感じました。
あとは「一般読者ウケしない」という事ですね。
作品のテーマやストーリーなどは、作者さまのこだわりなのだと思いますが、キャッチコピーや文字数などは、多くの読者に受け入れられやすいように工夫をしてみる余地は十分にあると思いました。
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