★2 元おばあちゃん令嬢は怪物伯爵に野菜を食べさせた〜孫の持ってきた乙女?げぇむ?でまさかの再会をしました〜
タイトル:元おばあちゃん令嬢は怪物伯爵に野菜を食べさせた〜孫の持ってきた乙女?げぇむ?でまさかの再会をしました〜
キャッチコピー:おばあちゃん(83歳)、乙女ゲームのプチ悪役モブ令嬢に転生する
作者:秋色mai
URL:https://kakuyomu.jp/works/16818023213277709731
評価:★2
【あらすじ】
エミリー・カーレス男爵令嬢は、前世の記憶……戸田恵美子(83歳)だったことを思い出した。
孫の持ってきた乙女ゲームに転生したことに気付いたが、しかし流石はおばあちゃん、細かいことは気にしない。前世も今世も変わらず趣味の畑仕事。乙女ゲームが何かわからないし覚えてないからイベントも何も起きるはずがなく……。
と思ったらお見合い相手はデブの根暗で野菜嫌い!? 食わず嫌いの不健康なんて、おばあちゃんは許しません……。
ってあれ、痩せたら……まさか……!?!?
【拝読したストーリーの流れ】
ある日、主人公「戸田恵美子」の元へやって来た孫が、主人公に乙女ゲームを必死に勧めてきた。当然、ゲームなどに興味のない「恵美子」だったが、気が付くとそこは乙女ゲームの世界で、自分は男爵令嬢「エミリー・カーソン」となっている事に気付く。
「恵美子」も「エミリー」も、趣味は同じく畑仕事。だからか、記憶が混じっても違和感を感じない。
とりあえず畑の様子を、と作業をしていた所で思い出したが、今日はお見合いの日だった。見合い相手は「怪物伯爵」と蔑称される、太った不健康そうな青年。彼は大の野菜嫌いで……、といったお話でしょうか。
【タイトル・キャッチコピーの批評】
タイトルは説明文スタイルですね。大筋は悪くないと思います。
ただ、少し読み難く感じてしまいました。「元おばあちゃん令嬢」の「元」がどこに掛かっているのかとか、読点や空白が無く文字が詰まっている所ですね。
あくまで参考程度ですが、少しだけタイトルを弄らせて頂きたいと思います。
元
『元おばあちゃん令嬢は怪物伯爵に野菜を食べさせた〜孫の持ってきた乙女?げぇむ?でまさかの再会をしました〜』
変更
『男爵令嬢に転生したおばあちゃん、怪物伯爵に野菜を食べさせる 〜孫の持ってきた乙女?げぇむ?でまさかの再会をしました〜』
好みはあると思いますが、個人的には私が弄った方が読み易いのでは? と思って書かせて頂きました。(余計なお世話でしたら申し訳ありません)
ただ、メインタイトルとサブタイトルの間に「空白」は入れた方が良いと思います。
あとは、最後の「まさかの再会をしました」が第5話までの時点では不明な点ですね。
どの辺りでこの文章のエピソードが回収されるかにもよりますが、説明文タイトルの伏線回収はなるべく早い方が良いと思います。
キャッチコピーですが、こちらはタイトルの補強となってますね。
「おばあちゃん(83歳)」は良いと思います。「(83歳)」が良い味を出していると思いますね。
ただ「プチ悪役モブ令嬢」という言葉は何を表したいのかよく分かりませんでした。第5話までの時点では、この設定が出る事は無かったですし、少し語呂も悪く感じます。
こちらも作品内での重要な設定なのならば、早めに回収した方が良いと思います。
【キャラクターの批評】
主人公の造形は素晴らしいですね。
絵に描いたような穏やかなおばあちゃん。そんな彼女だからこそ、格上貴族にも物怖じしないのが説得力を増しています。
基本は穏やかながらも、少し気が強いというか「肝っ玉が据わった」性格なのも良い味を出しています。
ただ「怪物伯爵」の方は少し扱いが雑に感じました。
まず、彼はまだ父親から伯爵位を継いでいません。なのに「怪物伯爵」という名前が本人にも知られるほど周知されています。これは私のイメージする貴族社会なら十分に「不敬」になるのでは? と思ってしまいました。
この「怪物伯爵」ですが、恐らく今後は主人公の野菜を食べて、痩せて健康的になり、美男子になるのではと予想できますが、少しだけ「記号的だな」と感じてしまいましたね。
そう思ったのは、あっという間に主人公の野菜の虜となってしまうからです。
「食べる」「食べない」の問答をダラダラ描いても面白くはならないのかも知れませんが、あまりにあっけない姿は「物語のご都合」を感じてしまいますね。
【文章・構成の批評】
基本的に読み易く、また意味も理解し易いキレイな文章です。普通に文章力のある作者さまだと感じました。
ただ、たまに意味の理解し難い文章も混じっていました。例えば第1話での、転生した主人公の独白ですが「恵美子の記憶がなくても、好きなことはやめられなかったのよねぇ」という文章ありました。
恐らく「転生前の記憶がない頃から、周囲の制止を聞かずに好きに生きてきた」という事なのだと思いますが、私はこの事を瞬時には理解できませんでした。
問題だと思うのは「なくても」の一文ですね。
「なくても」という事は「あったら」より容易である事が想像出来ます。しかし作中では、その比較の描写や説明はありません。その疑問から違和感を感じ、読み難くさせていると感じました。
このような、「間違っている訳ではないが、もっと相応しい言い回しがあるのでは」と思われる文章が、たまにですが他にも存在しました。
次に構成ですが、基本的には良いと思います。
1話、1500文字前後にも関わらずサクサク物語が進みますし、読者がストレスを感じるような話もありません。非常に読み易い構成でしょう。
ただその分、丁寧な描写はされていませんね。
これは、ただの私の好みになるのですが、もう少し描写が細かい方が良かったとは思います。
特に転生前の描写が少なすぎるように思いました。私の読んでいる環境で、たった10行ですからね。
【ストーリー・設定の批評】
大筋は非常に良いと思います。
おばあちゃんが男爵令嬢に転生し、野菜嫌いの婚約者に美味しい野菜を食べさせる。これだけで「面白いラブコメ」が期待できます。
ただ、いくつか良くないと思う点がありましたので【設定】も交えて指摘させて頂きます。
まずは「乙女ゲーム」要素が全く感じられない点ですね。
主人公は、孫からゲームを受け取っただけでプレイしたかどうかも不明です。ゲームのタイトルすら明かされていません。転生後も、主人公がゲーム世界を疑っただけで本当にゲーム世界なのかも不明です。
少なくとも第5話までの時点では、完全に死んでいる設定です。
次に似たような話となりますが、「主人公を転生者とする必要がない」点です。
何を言いたいかと申しますと、第3話で野菜嫌いの「怪物伯爵」に主人公の作った野菜を食べさせ、美味しいと思わせます。この作品なら当然の流れですよね?
問題なのは「これは主人公が前世を思い出した当日の話であり、「怪物伯爵」に食べさせた野菜は「転生前の主人公」が作ったもの」だという事です。
これなら前世の記憶がなくても、同じ展開になると思いませんか?
あとは細かいですが、野菜嫌いの相手に食べさせるものが「トマト・キュウリ・オクラ」と、トマトはともかく「他2つは少し難易度が高くないかな」と思った事とか、転生前の年齢が83歳、転生後が19歳。なのに「前世も含めて百八年」って計算が合わないとかはありましたね。
【総評まとめ】
色々と指摘させて頂きましたが、「普通に面白い作品」でした。
特に主人公のキャラが本当に良かったですね。文章も非常に読み易かったです。ストーリーも分かり易く、面白いと思いました。
「全体的にレベルの高い良作」です。
ただ、悪い所も見えやすい作品でしたね。
特に設定周りは作り込みが甘く感じました。
中でも「乙女ゲーム要素」と「転生要素」がうまく機能していないのは、結構致命的だと思います。タイトルやコピーにもなっていますからね。
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