★1 Dragon App -ドラゴンアプリ-


タイトル:Dragon App -ドラゴンアプリ-

キャッチコピー:「実績が解除されました。報酬が与えられます」行動するたびに増えるチート

作者:坂条 伸

URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330665427622637


評価:★1


【あらすじ】

佐渡 丞(さわたり すすむ)はある日の仕事帰り、突然現れた穴に落ちて異世界に辿り着いた。世界を渡ったことで得た異能によって、丞のスマホはチート仕様に改造されたようだ。条件を達成するたびに新たな能力を次々と獲得していく。チーティング・ライフハック・ストーリー、ここに開幕。



【拝読したストーリーの流れ】

 仕事帰りにスマホを弄りながら帰宅していた主人公「佐渡 丞(さわたり すすむ)」。彼は、突如足元に現れた穴に落ちて異世界へと転移してしまった。

 目を覚ませば、そこには2体のドラゴンが争っている。身体を打ったようで、全く身動きが出来ない。このままでは巻き込まれて死んでしまう。

 その時、スマホの画面を見てみると……、といったお話でしょうか。



【タイトル・キャッチコピーの批評】

 タイトルは素晴らしいと思いました。

 特に何の説明も無いのですが、「ドラゴン」と「アプリ」の組み合わせが妄想を捗らせます。

 私はタイトルを見た時、「ドラゴンを使役して戦わせる、ポ〇モンみたいな設定」だと想像しました。(全くの見当違いでしたが)



 キャッチコピーですが、こちらは賛否別れそうですね。

 「実績解除」「報酬」という、いかにもゲームっぽい設定と、「増えるチート」という、どう考えても面白くなりそうにない設定を是とするか否かで評価は分かれると思います。

 個人的には「否」ですが、好きな人も多いので良いのではないでしょうか。



【キャラクターの批評】

 登場人物は2名。主人公「ススム」と、ヒロイン「アルマ」ですね。

 2人ともに共通する事ですが、ストーリーの為に人格と行動が歪められています。何なら、その設定までもがストーリーの為に作られたのだと透けて見えます。

 その為、2人に「実在するかのようなリアリティ」は一切ありません。


 主人公ですが、「ブラック企業に勤めるサラリーマン」「30歳、独身」「小説が趣味」「転移後はなぜか若返る」といった、見飽きた特徴で構成されています。


 そして先ほど【拝読したストーリーの流れ】で書きましたが、目の前でドラゴンが暴れているというのに、主人公はゲームのチュートリアルのような説明を長々と読んでいます。身体が動かなかったとしても、常人の思考とは思えません。


 当然、危機を脱するためにスマホアプリを使用するのですが、その内容はかなり複雑で、読んでいても分からない事や、書かれていない情報で溢れています。

 それを主人公は迷いなく、複雑な手順を「元々知っていたかのように」使いこなして危機を脱します。


 危機を脱した後は、元の世界に帰ろうとする事も無く、アプリを使って戦闘能力を強化し始めます。

 一応、ドラゴンを取り込んだせいで好戦的になったという理由付けはされていますが……。これでは主人公に共感するのはムリですね。



【文章・構成の批評】

 文章は非常にキレイで読み易かったですね。ここには一切、問題は感じられませんでした。普通にレベルは高いと思いましたね。



 次に構成ですが、こちらは第2話と第3話が問題に感じました。

 この2話はアプリの説明回となっているのですが、説明の形を成しておりません。


 どういう事かと申しますと、アプリの機能によって「魔法の創造」が出来ます。

 魔法には様々な種類がある事が説明されます。ところが、「どんな魔法が創れるのか」が、読者には一切分からないのです。

 読者に伝わらないまま、主人公が「試行錯誤ごっこ」をして正解を引き当てていくのを眺めているだけです。

 これに2話の大半を使うのは無駄に思えましたね。



【ストーリー・設定の批評】

 ストーリーは第5話まで読んだ感想を述べさせて頂きますと、「全てが主人公の都合の良いように世界が回っている」と強く感じました。


 どういう事か説明しますと「服がボロボロになれば、魔法の副次効果で解決し」「言葉が通じないと思ったら、実績解除で解決し」更には、よくある「アイテムボックス」や「調理機能」まで、「実績解除の報酬」とやらで取得します。

 これでは「問題が起きたから解決する」ではなく、「解決される為に問題が用意されている」か「問題が起きないように能力を与えられている」と感じてしまいます。


 きっと、この先もこの主人公は「努力や困難」とは無縁なのだと感じました。



 次に設定ですが……、細かく作り込まれているのは良い事だと思います。ただ、その作り込まれた設定の多くは「死んでいる」と感じました。


 先程も軽く申しましたが、本作には魔法を始め、多くの設定と用語が出てきます。しかし、それらの殆どは深く語られません。説明をされないまま、用語だけを出して「まるで説明済み」かのように話は進みます。

 完全に読者を置いてけぼりにしていると感じましたね。



【総評まとめ】

 こちらの作品ですが、作者さまの設定への作り込みは感じます。そして、それを生かそうと努力されたのも窺えます。

 ただその結果の末に書かれたものが「web読者に過剰に配慮した」「只のテンプレ作品」となったのなら、個人的には残念に思います。

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