51~60作品の批評

★1 深層心理の精神騎(スピリット)


タイトル:深層心理の精神騎(スピリット)

キャッチコピー:実体化した"心"が決闘!? 人間ドラマ×心理学バトルファンタジー!

作者:彁面ライターUFO

URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330651055634081


評価:★1


【あらすじ】

擬人化された"人の心"、精神騎(スピリット)たちが、踊ったり、痛がったり、ぶつかったり━━━━

 心理学をテーマに、新感覚の心理戦(物理)・レスバ(物理)が繰り広げられる学園青春ファンタジー!



 心理学オタクである藤鳥剣悟(ふじとり けんご)は、父のような偉大な心理学者になることを夢見て勉強に励んでいた。

 ある日、父が失踪してしまったことをきっかけに、彼は葉後高校へと転校することに。そこで不思議なペンダントを手にしたことで、彼は、擬人化された"心"のちびキャラ━━━━精神騎(スピリット)が視えるようになってしまう。

 物置部屋で出会った『ハナコ』という謎の少女と契約を交わし、『精神騎(スピリット)使い』となった彼は、心に問題を抱えた生徒たちを救う戦いに身を投じていくことに。果たして、彼の戦いの行く末に待ち受ける運命とは━━━━━!?



【拝読したストーリーの流れ】

 本作のエピソードタイトルは「第一章①」「第一章②」という風にナンバリングがされているのですが、本批評内では「第1話」という風に呼称させて頂きます。

 また本作にはプロローグがありましたので、第4話までを読んだ批評とさせて頂きます。



 第5話までの時点の本作のお話の流れは、作品に用意された【あらすじ】の通りです。

 追記するとすれば、人にはみんな自分の精神騎(スピリット)が居るが、普通の人には見えず、精神騎(スピリット)が見えるようになった主人公が生徒の問題を解決していく、という流れでしょうか。

 第5話までの時点では、生徒たちの問題の解決までは話が進みませんでしたが、コピーの内容と、タグに「バトル」がありましたので精神騎(スピリット)同士によるバトル展開があるものと思います。



【タイトル・キャッチコピーの批評】

 タイトルは個人的には嫌いではないのですが、あまり良くないと感じました。

 一発で目を惹くようなパワーワードがありませんし、「深層心理」という言葉と「精神騎(スピリット)」という言葉の組み合わせが悪い気がしますね。


 単純なバトルものを求める読者は「深層心理」という言葉を見て敬遠し、逆に深い人間ドラマやミステリーを期待する読者は「精神騎(スピリット)」という文字を見て読まないのでは、と考えてしまいました。



 そしてキャッチコピーですが、こちらもタイトルと同様の問題があるように感じます。

 そもそもとして心理学などを題材とした作品と、バトルものは好む読者層が全く違います。この2つを掛け合わせた作品を読みたいと思う読者は少ないのではないでしょうか。


 勘違いしないで頂きたいのは、私は本作のコンセプトやテーマを否定する気も、それが面白くないと言う気も無いという事です。むしろ、やり方次第で面白くなりそうだ、と感心しました。

 ただ、作品内容を知る前の読者にそれを知らせても「面白そうだ」とは思ってもらえないのではないかと感じたのです。



【キャラクターの批評】

 キャラクターについては「分かり易く王道」のデザインがされています。その為、登場キャラの数は多いのですが、キャラ被りも無い為に「誰が誰だか分からない」という事は起きませんでした。


 ただ、あまりにも王道すぎて心理学を扱う作品としては「薄っぺらく」感じてしまいました。

 本作は心理学が重要なテーマです。なのに登場キャラが「いかにも創作物的」な「お約束的」「ご都合主義的」な言動や反応をすれば非常に「薄っぺらく」感じてしまいます。

 このテーマを扱うなら、もっとキャラに「リアリティ」が欲しいと思いました。


 あとは【ストーリー・設定の批評】で詳しく後述しますが、プロローグでの「JPASSの研究員」との会話、その後の主人公に非常に大きな問題を感じました。



【文章・構成の批評】

 文章は十分にキレイで読み易かったですね。

 ただハイフンは「━」よりも「―」の方が良いと思います。……存在感と異物感がハンパないですよ?


 心理学用語などを合間合間に入れるのはテンポが悪くなるので賛否あると思いますが、私個人としては良かったですね。

 1つ1つは小ネタの域を出ていませんが、知らない事ばかりで面白かったですし、何より本作のテーマですからね。



 構成ですが、バトルものとして見たなら進行が遅いですね。

 プロローグで2800文字、第1話~第4話は約6~8000文字。これだけかけて、まだバトルが発生していません。(目次のタイトルを読むと、恐らく第6話でバトルですかね?)

 恐らく、バトルものを期待する読者はそこまで読んでくれないものと思います。


 そして人間ドラマとして見た場合も厳しいと思いますね。

 なぜなら、第4話までの話は主人公の境遇と描写、キャラの紹介と世界説明にほぼ全てを割かれ、まだドラマが始まっていないからです。

 こちらを好む読者は、バトル好きの読者よりは我慢強い印象はありますが、それでも27000文字以上も読んで、期待通りの展開にならなければ撤退する可能性が高いかと思います。



【ストーリー・設定の批評】

 まず前述したプロローグの件ですが、「JPASSの研究員」との会話、アレは何ですか?

 作品を読まれていない方の為に要約して説明いたします。


 念願の志望校に入学した主人公の元へ、父の職場である「JPASS」の研究員から電話がありました。

 その内容は「父が実験中に行方不明になった」「誘拐などではなく失踪した」「主人公の授業料は父からの支援だったが、父が居なくなったので転校して貰わなければならない」「最低限のバックアップはする」「転入先への話もついている」「新居も既に手配済み」です。


 これが数日に渡っての複数回のやり取りならまだしも、1度の会話でコレですよ?(複数回に分けても無理のある話だと思いますが)

 ……突っ込みたい気持ちで一杯ですが、キリが無いので先に進みます。


 そして、尊敬する父親が行方不明になったというのに、主人公は全くこの件を引き摺っていないんですよね。

 この電話が終わった次のシーンには、「立派な心理学者になる夢を諦めないぞ」などと決意しています。

 こういう所が非常に「薄っぺらい」ですね。


 総じて、ストーリーの進行の為にキャラの思考と行動が歪められていると感じました。(他にもいくつか、同様に感じた所はあります)

 ストーリーを円滑に進める為に、ある程度はしょうがないのは理解できますが、本作は「ある程度」では済みませんね。



 精神騎(スピリット)の設定は面白いと思います。

 ただ、上手く、面白く作品に活かすのは難しい設定だとも思いますが。

 現状ではまだ何とも言えませんが、上記のように「ストーリーに都合が良いだけ」の設定にならない事を願います。



【総評まとめ】

 アイディア自体は悪くないと思うのですが、非常に活かすのが難しい題材だと思いますね。

 そして私の感想としましては、本作は活かし切れているとは思いませんでした。


 ただ、それとは別にプロローグだけは書き直した方が良いと思いますね。

 作者さまが、この作品を改稿する気があるのなら、ですが。

※作者さまよりコメントを頂き、本作の改稿をなさるおつもりの様です。

 改稿前と改稿後を見比べるチャンスだと思いますので、興味のある方は本作を覗きに行ってみてはいかがでしょうか?

 プロローグだけでも見る価値はあると思います。

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