★1 カレンデュラの森


タイトル:カレンデュラの森

キャッチコピー:重い愛が好きな人へ。愛し合うはずの二人が殺しあうまでの運命の物語

作者:鉄 百合 (くろがね ゆり)

URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330657391735851


評価:★1


【あらすじ】



【拝読したストーリーの流れ】

 あらすじが空白ですが、ミスではありません。本作のあらすじには作品の内容を示す文章は無く、作者さまの挨拶と更新日のみが書かれていました。


 代わりに第1話の前に「資料」というタイトルのエピソードがあり、こちらで作品の設定や構成が説明されていました。

 こちらは本文では無いので、第5話までを読んだ批評とさせて頂きます。



 神様の住むと言われる「黒い森」。その近傍の村に住む主人公「クイート」。

 孤児の彼女は、「豊穣の儀式」で神様への生贄として捧げられた。

 1人森へと入り、神様の神殿に辿り着いた「クイート」。そこには神様「カンパニュラ」が居たのだが、「カンパニュラ」は生贄など欲してはいなかった。

 正体を隠す「カンパニュラ」は、神様の従者「カンラ」と偽名を名乗って「クイート」に接する。

 2人の物語はいずれ『孤独の森』と呼ばれる、足を踏み入れた者は2度と帰ってこない伝承となるのだった……、といったお話でしょうか。



【タイトル・キャッチコピーの批評】

 前述の「資料」に書いてあったのですが、カレンデュラとは花の名前(キンセンカの英名)で、どうやら花言葉の意味からタイトルをつけられたようです。(エピソードタイトルも同様の付け方をされているようです)


 深い意味があるのは察する事が出来るのですが、花言葉を知る読者は少ないでしょう。それどころか、花の名前だという事すら分からない可能性も高いです。(私は分かりませんでした)

 「分かる人にだけ伝わればいい」という考えでしたら何も言う事は無いのですが、いくら良いタイトルでも「読者に伝わらなければ意味は無い」と私は思います。



 キャッチコピーですが、こちらは完全に説明文ですね。

 一見して、センスを完全に放棄している様に感じましたが……、本作に限っては悪くないと思いました。


 その理由は本作と競合する作品が少ないからです。

 「恋愛」を全面に推しながら、「殺し合う運命」といストーリーはweb小説では中々見られないと思います。(商業でも少ないですかね?)

 ただ「重い作風」を説明する事で、「軽い作品」を読みたい読者は見向きもしないでしょうね。そしてweb読者の多くは「軽く読める作品」を好むと言われています。


 タイトル・キャッチコピーの両方とも、web小説において読者の獲得に貢献しているとは考え辛いですね。



【キャラクターの批評】

 キャラの描写自体は丁寧に、分かり易くされていると思います。造形も悪くないと思います。

 ただ、設定との違和感を強く感じました。


 主人公ですが、8歳の時に母を毒殺したという過去があります。作中では特に描写な無かったと思いますが「資料」によると、村でも「忌み子」として嫌われていたそうです。

 ですが作中の主人公は前向きで、明るい普通の子供のようにしか見えませんでした。


 「資料」の説明では「心が壊れる」「倫理観が欠如」「狂ってる」などと書かれてありますが、第5話までの時点ではそのような描写は一切ありません。

 同様の設定・キャラ造形で話を進めるのなら、「母を毒殺した」というエピソードは、主人公が1度「狂った姿を見せた後」に描写した方が良かったのでは、と思います。

 物語の最初で見せられると、設定と性格のギャップに戸惑うだけだと思います。



 神様については、少し都合が良すぎるキャラに感じましたね。

 物語の設定の殆どを担っているキャラだと思いますので、ある意味当然とも言えるのですが、その行動・性格が全て「ストーリーと主人公の為」に動いている様に感じてしまいました。


 あとは「資料」でも作者さま本人が仰っておられる通り、タイトルと名前が似すぎていて紛らわしいですね。



【文章・構成の批評】

 文章自体はギリギリ及第点、といった所だと思います。

 ただ、それ以外の所に多数の問題点がありましたので挙げさせて頂きます。


 まずは「空行を空けるまで、一切改行を行っていない」点です。

 その為、(私の環境で)4、5行の間を文字が隙間なく埋め尽くしています。

 適度に改行を行う事で、段違いに読み易くなる筈です。


 次に「予告なく視点がコロコロ入れ替わる」という点です。

 本作は主人公・神様の一人称と、三人称が頻繁に入れ替わるのですが、その際に視点が切り替わる予告は「2行の空行」だけです。それすらない箇所もあります。

 これは読む側にとって非常に大きなストレスです。

 出来れば視点は固定する。出来ないのであれば、視点が変わる事を読者に分かり易く伝える事が必要だと思います。


 あとは誤字がチラホラ見られる点ですかね。

 誤字も結構、読み手にはストレスになります。こちらもなるべく(出来れば完全に)無くした方が良いですね。

 同時に、言葉や表現がおかしい部分も少しだけありますね。

 こちらも同様に無くした方が良いと思います。



 構成はハッキリ言ってよろしくないですね。

 第1話が「主人公と神様が決別して対峙する話」。第2話が「それから遠く未来の、主人公たちが伝承となった時代の話」で、2話をかけてプロローグとしています。(本編は第3話からです)


 先ほど申し上げた「予告なく視点がコロコロ入れ替わる」という問題がここでも起きています。

 「資料」ではこの点の説明をされているのですが、本文だけで理解できるように構成するべきだと思います。

 キャラや世界の設定が書かれてある作品は時々見かけますが、全ての読者が読む訳では無いと思いますしね。

(実際、「資料」のPV数は第1話のPV数より少ないです)


 第4話と第5話で、前半を主人公視点、後半を神様視点とするのは良いですね。

 今後このスタイルでずっと進めていくのかは分かりませんが、重要キャラである2人のそれぞれの考えや行動が、同じ時間軸を通して別々に語られるのは面白いと思います。

 ただこの手法は1人のキャラの描写にかける文字数を制限したり、物語のテンポを悪くするという弊害もあります。

 何より、先ほど指摘したように「視点が切り替わった」事をもっと分かり易くするべきだと思いますね。



【ストーリー・設定の批評】

 ストーリーは良いと思います。

 女主人公と男の神様との恋愛といえば、定番とも言える王道ですが、そこにいずれ決別して殺し合うという運命が悲恋を想像させ、興味を惹きつけると思います。

 主人公と神様の描写を細かく描き、2人が惹かれ合う姿を丁寧に描いていけばいく程、結末の想像を掻き立てて、読者を切ない気持ちにさせる事が出来ると思います。



 ただし設定と、その見せ方はあまり上手くないと思いました。


 まずは、この世界の雰囲気が和洋折衷となっているのが作中描写をイメージし難く感じました。

 キャラは洋風の名前ですが、「妓女」「襦袢じゅばん」「振袖」など和風の単語や表現が出てきます。同様に洋風の単語もあります。


 この結果、最もイメージが困難だったのは「神様の住む神殿」ですね。

 まず洋風か和風かも想像できず、第3話では「埃の匂いが鼻をついた」と言いながら第4話では「神聖で荘厳な美しさだった」とあります。

 森の中にあるという事なので、小さなやしろの様な建物を想像していれば、「廊下」があり、最低でも7つ以上の部屋があるというような描写まであります。

 私の中では、未だに神殿のイメージは全くできていません。



 そして最後に、何度も本批評内で触れている「資料」ですが、こちらの書き方・説明の仕方が上手くありません。非常に見にくく、やや理解のしづらい文章で、作者のメモ書きの様な印象さえ受けました。

 なのに、この「資料」を読まなければ本文、特にプロローグとなる第1話と第2話が分かり難いのが問題です。

 「資料」を分かり易く整理するのもそうですが、「あらすじ」に少しでも説明を入れた方が良いと感じました。

 もちろん、本文も分かり易くした方が良いですね。



【総評まとめ】

 「資料」を読めば、作者さまが「ストーリー作り・設定作り」に力を入れていらっしゃるのは分かります。そしてそれらは、十分に面白い作品となり得る土台になっているとも感じました。


 ただ、タグに「万人向け」とあったのですが、個人的には「万人向け」とは程遠いと思いました。

 「資料」には「最終章」にもついて書かれていましたので、作者さまはラストシーンまでを既に考えておられるものと思います。

 もし「最後まで読めば、誰でも感動する筈だ」と考えて「万人向け」と仰られたなら改められた方が宜しいかと思います。最後は「誰でも感動する」かも知れませんが、本作の初期設定は「多くの人は敬遠する」設定ではないかと思いました。


 ストーリーと設定の、見せ方・説明にもこの問題があるように感じました。

 本作と本作者さまに限った話ではありませんが、「作者は作品を書く前から、物語を知っています」。ですが読者は、「作品を読んで、初めて物語を理解する」のです。

 だから作者は「作品を読むだけで、物語を理解できる」ものを作らなければならないのだと思っております。


 【タイトルの批評】でも同じような事を書かせて頂きましたが、いくら良い作品でも「読者に伝わらなければ意味は無い」と私は思います。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る