★1 Re:LIFE 〜屠所ノ少女ガ願イシハ〜


タイトル:Re:LIFE 〜屠所ノ少女ガ願イシハ〜

キャッチコピー:終わり無き転生に、少女はただ『生きたい』と願う

作者:如月笛風

URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330668532672425


評価:★1


【あらすじ】

『異世界転生』――それは、幸せな言葉だ。

剣技や魔法の腕を磨いて冒険の旅に出かけたい。

親切な村人が住まう村でスローライフを送りたい。

そんな願いが叶う素敵な言葉。

辛い前世から目を背け、自分の『新たな人生』を歩むことができる、そんな幸せな世界。

――果たしてそれは本当だろうか?

五十州瑞香、この少女もまた、そんな妄想を繰り広げてしまう愚かな人間だった。

どこからともなく響いた無機質な声に導かれるまま、軽い気持ちで、しかし固い決意で、少女は『異世界転生』をすることとなる。

……少女は最後まで耐えられるのかな?

終わることの無い『新たな人生』に。



【拝読したストーリーの流れ】

 本作にはプロローグがありましたので第4話までを読んだ批評とさせて頂きます。

 また、本作のエピソードタイトルは「第一章1」「第一章2」と言った風にナンバリングされているのですが、本批評内では「第〇話」と表記させて頂きます。



 家の外ではイジメに遭い、家の中では両親の不和に晒される主人公「五十州瑞香」。いつも通りの毎日に絶望しながら、唯一の心安らぐ自室へと籠った主人公だったが、その日は様子が違った。

 砂嵐を映すディスプレイに、幻聴……。そして突然、紅く濡れた刃物を持った母親が、主人公の部屋へと侵入しようと暴れ出す。

 生命の危機を感じた主人公の耳には《異世界転生を開始します》と、幻聴が鳴り響いたのだった……、といったお話でしょうか。



【タイトル・キャッチコピーの批評】

 タイトルセンスは素晴らしいと思います。

 「Re:LIFE」から始まり、「屠所」という不穏な単語が「LIFE」に対して、より一層不安感を掻き立てます。

 「ひらがな」を使わず「カタカナ」で書いているのも雰囲気作りに一役買っていますね。


 ただやはりweb小説向きのタイトルとは言えませんね。

 作品の方向性が分かりづらく、その雰囲気すらも単語の意味を精査しなければ分からない可能性すらあります。



 キャッチコピーは、「作品内容を伝える」という意味では良いと思います。

 「転生もの」である事、「女性主人公」である事。それ以外にも作品の暗い雰囲気が、こちらは精査しなくてもよく伝わると思います。


 ただ「キャッチ」という意味では難しいと思います。

 タイトルもそうですが、このコピーを見ても「面白そう」と直感的に感じられないからです。



【キャラクターの批評】

 登場キャラは主人公の「五十州瑞香」と、異世界人の「キーラ」くらいですが、特に主人公は造形や描写が細かく、素晴らしく良く出来ています。

 思考や行動に突飛な部分や矛盾も特に見当たらず、感情移入しやすいキャラクターをしていると思いました。


 ただ「ディスプレイに砂嵐が映る」という描写に「故障を疑う」のは疑問に感じましたね。

 現代ではディスプレイが故障しても砂嵐は映らないでしょう。ましてや制服を着ていた事から学生であると推察できる主人公は、砂嵐を実際見た事すら無いのでは? と感じてしまいました。



【文章・構成の批評】

 文章は非常にレベルが高く感じました。

 心理描写、情景描写もさる事ながら、緊迫感、恐怖感なども上手く表現されています。

 ただ、難点も2つほど気付きましたので書かせて頂きます。


 1つ目は難解な漢字や単語を多用している点です。

 プロローグだけで「困憊」「艱苦」「悉く」「漸く」「嘗て」など、難しい単語が散見されます。

 多くの読者に読んで貰えるように簡単な言葉に置き換えるか、せめてルビを振った方が良いでしょう。


 2つ目は、主人公の名前が判明した後も、地の文でひたすら主人公を「少女」と記述している事です。

 これは何らかの意図があるのかも知れませんが、主人公を読者に印象付けないだけでデメリットしかないと感じます。


 最後に難点とは言い切れないないのですが、全体的に読み難い文章だなと感じました。

 レベルは高いのですが迂遠な表現が多く、難しい単語が多用されるのも相まって「読む人を選ぶ」と感じてしまいましたね。



 構成については、悪くないとは思うのですがテンポが遅いですね。

 作風が暗く(タグに「ダークファンタジー」とあります)、少し「ホラー」にも近い描写なのでサクサク進む話ではないのですが、第4話までの時点では「読者への掴み」としては弱く感じました。


 ただ、目次を見てみると第7話で第一章が終了するようなので、そこまで読めば強いヒキが用意されているのかも知れませんね。



【ストーリー・設定の批評】

 本作のストーリーに関しては、かなりスローな進行ですのでハッキリした事は明言できません。

 ただプロローグの内容を見るに、恐らく主人公は何度も死んで、いくつもの異世界を渡り歩くストーリーになるのだと推測できます。


 正解している自信はありませんが、本作は「異世界転生テンプレ作品へのアンチテーゼ」だと感じました。

 安易なご都合主義を排し、リアルな描写に努め、主人公を追い詰めようとしている様に感じます。


 ただこの推測が正しいなら、主人公が転生した際に靴を履いていたのは都合が良すぎるように感じてしまいましたね。

 主人公自身も疑問に思っている記述がありますが、もし作者さまが「裸足で森を歩くのは無理だろう」という配慮からこうしたのなら、そもそも靴の存在を文章に起こさない方がマシだったのでは、と思います。



【総評まとめ】

 「レベルは高いが、読み手を選ぶ作品」ですね。

 文章は読む難易度がやや高く、気楽に読める文体だとも思えません。

 ストーリーや設定も重苦しく、ライトな転生ものを期待した読者はプロローグで読むのを止めると思います。


 ただ、これらの問題をクリアした読者には面白い作品だと映るのではと思います。

 私的には、読み難さが勝ってしまいました。



【追記】

 本作は作者様の要望により第一章終了(8話+登場人物紹介と裏設定)までを読んで追記します。



 まず、ストーリーが一段落はつきました。

 ですが、作者さまの狙い通りではあるのでしょうが「スッキリとした終わり方」ではありません。むしろ「胸糞系」だと言えるのではないでしょうか。


 恐らく、本作を受け入れて「面白い」と思う読者と、そもそも受け入れられない読者とは、完全に分かれるものと思います。

 「ホラー」「グロ」「胸糞」「バッドエンド(ビターやメリーバッド含む)」、この辺りに抵抗がない、もしくは好む方なら面白く感じるのではないかと思います。



 続いて描写ですが、分かり易い喩えが無い「もの」の表現って難しいですね。

 主人公がピンチの時に、主人公の内から「何か」が顕れ、主人公の命を救うのですが、その「何か」がよく分かりませんでした。

 設定や立ち位置が分からないという話ではなく、「どのような形状で」「どのような力が働いているのか」が分からなかったのです。


 主人公自身も「よく分からない」という描写でしたので仕方ないのかも知れませんが、「気が付いたら、みんな死んでた」という感想でしたね。

 ここは作者さまの表現力が低いのではなく、むしろ「狙い通り」なのだと思います。


 主人公の中に潜む「何か」。これを「よく分からないもの」と表現して、読者の不安を煽っているのだと感じました。

 ただ個人的には、本作はテンポの遅い作品ですし、「よく分からない状態」が続くのは読むのに疲れてしまいます。もう少しだけ、造形や描写をハッキリさせても良いのでは、と考えてしまいました。(個人的な好みです)



 最後に、本批評に作者さまからコメントを頂きました。

 やはり「読み手を選ぶ」というのは作者さまも理解しておられるようで、その上で「ダークファンタジー好きには間違いなくハマってくれると信じている」と執筆への想いを述べて下さりました。

 個人的には、こういう「こだわり」を持って執筆なさっている作者さまは応援したくなりますね。


 私が本作を評価する際に一番問題視したのは「読み手を選ぶ」という点です。

 第一章を全て読んでも、当然それは変わりません。ですので評価も変わりなく、★1のままとさせて頂きます。

 しかし好みが合致した読者には、間違いなく★3の面白さがある作品だと思います。

 作者さまは、私の様な外野の声に惑わされず、今後も「こだわり」を持って執筆して頂ければと願います。(参考程度に思って頂ければ嬉しいですが)

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