★2 カルペ・ディエム 空の空


タイトル:カルペ・ディエム 空の空

キャッチコピー:異世界に転生♂したら、美少女♀と間違えられ男の娘として生きています

作者:少尉

URL:https://kakuyomu.jp/works/1177354054917336750


評価:★2


【あらすじ】

気づけば不思議な空間にいた。

中央には、巨大な青いクリスタル


ゲームのキャラクター作成のような映像を進む。


そして、次に目が覚めた時、美少女♂の外見のまま、見知らぬ草原へと立っていた。


——異世界の冒険が、幕を開ける



【拝読したストーリーの流れ】

 気付けば主人公は、クリスタルが存在する不思議な空間に居た。

 いきなりゲームのキャラメイクの様な画面が浮き上がり、主人公は思うままにキャラを作成する。

 性別・男。年齢・12。外見は美少女のように。そしてステータスを振り分ける。


 次に目覚めた時、そこは見知らぬ草原だった。

 人の住む街まで辿り着くが、文字が読めず、言葉も通じない。

 それから半年、物乞いや窃盗を行い何とか糊口をしのいでいた主人公は人攫いに遭い、奴隷となってしまった……、といったお話でしょうか。



【タイトル・キャッチコピーの批評】

 タイトルの「カルペ・ディエム」はラテン語ですね。有名な「メメント・モリ」とも類似した意味合いで比較される事もあるようですが、こちらは知名度も低く、事前に知っている読者は少ないと思います。


 そしてその後に続く「空の空」ですが、第5話までの時点では意味が分かりませんでした。軽く調べてみた所「コヘレトの言葉」というものが出てきたのですが、それでしょうか?

 こちらは「カルペ・ディエム」とは違い日本語で書かれているのが、余計に難解に感じました。


 タイトルはどちらの言葉も、読者に優しくないと感じました。

 深い意味があるのは分かるのですが、それは多くの読者には伝わらないと思います。


 そしてキャッチコピーですが、こちらは「単体で見れば」非常に良いと思います。というか、説明文タイトルですね。

 主人公の境遇が分かり易く説明され、「男の娘」というワードは多くの読者を惹きつけると思います。


 ただタイトルと、作品内容の雰囲気、この2つとノリが違い過ぎるのが少し気になります。

 あくまで個人的にはですが、統一感を持って欲しかったとは思いました。



【キャラクターの批評】

 キャラの1つ1つの表現は素晴らしかったと思います。

 細かな心理描写、にじみ出る性格などが上手く表現されています。


 ただ、主人公のキャラクター像がボヤけているように感じてしまいました。

 というのも、本作はいわゆる「異世界転生」もしくは「ゲーム世界転生」にあたるのですが、転生前の主人公は一切描かれておりません。(キャラメイクの様子はありましたが、主人公の個性は殆ど描かれておりません)


 「異世界での自由な生活に夢を抱き」「貧民街の孤児として、絶望し地を這い」「自由の無い奴隷生活に心を閉ざし」「明るい奴隷の少女に、少しだけ心を開き」「脱走しようとする奴隷を、冷徹に観察する」という様々な面を見せてくれます。

 ですが、主人公のバックボーンが無いままに物語の序盤からこの様に見せられては、読者が「主人公のキャラクター像」をイメージできません。


 主人公はまず「こういうキャラなんだ」という所を見せた方が良いと思いましたね。



【文章・構成の批評】

 文章はキレイで読み易く、また雰囲気も素晴らしかったです。

 殆ど非の打ちどころがありませんでしたが、2点だけ気になった所があります。


 1つは改行が多い事です。

 全てを確認した訳ではありませんが、恐らく句点の後はほぼ全て改行されております。

 ここは見やすくもありますが、人によっては減点要素と見る人も居るでしょう。


 2つ目は、たまに読点が非常に多い文が見られた事です。

 他の文が読み易かっただけに、かなり目立ってしまいました。第3話から、一文を抜粋させて頂きます。

「確かに、あそこにいても、のたれ死んでいたから、強引な救済と言えば、救済なのかもしれない」

 キレイな文章の中にこの様な文が紛れ込むと、違和感で読む手が止まってしまいます。


 そして構成ですが、こちらはイマイチですね。

 まず先ほど述べたように、転生前の主人公の情報が一切描かれておりません。

 個人的には「それなら何故、転生ものにしたのか?」とすら思ってしまいます。


 そして貧民街時代の描写が殆ど無い事です。

 第1話で転生し、ある種の期待感を持った主人公がどん底に落ちる重要なターニングポイントの筈なのだと思うのですが、あまりにあっさりと流されてしまいます。

 ここを省いてしまったのが、「主人公のキャラクター像」が掴めない大きな理由の一つだと思います。


 最後に「あくまで第5話まで」で考えるのならばですが、大きな見せ場が全く無い事が問題ですね。

 ただしこちらの作品は既に400話以上も投稿されていますし、1話の長さも2000字前後と短いので、それほど問題ではないのかも知れません。



【ストーリー・設定の批評】

 ストーリーは第5話までの時点では面白い要素はあまりないですね。

 ただ作風がダーク寄りな為、奴隷となった主人公がご都合展開的に自由にはならないだろう、と期待できるのは良い点ですね。


 次に設定ですが、こちらも特筆すべきものはありません。

 転生時のキャラメイクもよくある話ですし、言葉が通じないというのは珍しいですが、主人公は勉強してすぐに喋れるようになります。奴隷紋というのも定番ですね。

 本作のウリだと思われる「男の娘」設定ですが、こちらも第5話時点では作品の面白さには繋がってはおりません。



【総評まとめ】

 「雰囲気と描写が素晴らしい作品」ですね。それ以外の要素も、概ね及第点ではないかと感じました。


 ただ、主人公の描写はもっと構成段階で練った方が良かったと思います。

 その場その場の心理描写は出来ているのですが、「そこに至るまで」の描写がありません。

 明確な「キャラクター像」が無ければ、読者は共感しづらいと思います。

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