★0 Alone ~元特殊部隊所属、ジャック・カミンスキー~


タイトル:Alone ~元特殊部隊所属、ジャック・カミンスキー~

キャッチコピー:お前ら全員ブチ殺してやる

作者:Yujin23Duo

URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330655789977885


評価:★0


【あらすじ】

 とある異世界。ここでは多くの転生者によって車、銃、人権、メディア等が私達の世界と変わらない程に発展していった。

 だが急速な発展によって、一瞬で大きな格差が広がり、テロリストやギャング等の犯罪組織は増加、銃撃事件も多発し、麻薬が横行するなど世界の治安が悪くなっていた。

 そんな世界のアメリカみたいな国、ユニティア合衆国と、メキシコみたいな国エル・パッソの国境に位置する町に一人の男が住んでいた。

 元々軍隊上がりの彼は心に深い傷を抱えながら、細々と暴力紛いの仕事で食いつないでいた。

 だがある日、彼の事を知る男からケースを渡された。内容は数日間このケースを管理するだけ。一見すると簡単な任務かに思われたが……。



【拝読したストーリーの流れ】

 本作のジャンルは【異世界ファンタジー】となっておりますが、銃や麻薬、ネオンにタクシーなど、私たちと同じくらいの文明……、少なくとも1900年代後半以上の技術水準をもった世界観となっております。

 五話までの時点での「異世界要素」としては、「亜人」と呼ばれる人間以外の種族、警棒に電気を流す魔法、毒の魔石製の銃弾の3つが出てきたくらいでしょうか。



 申し訳ありませんが、ストーリーについては「よく分かりません」でした。

 どうやら説明を後回しにして物語を動かすスタイルのようでして、作者さまの書かれた「あらすじ」以外では、主人公は探偵事務所の職員であり、所長と同僚の2名がいる、という事くらいでしょうか。


 一話、二話で戦闘もあったのですが、「仕事で、人身売買を行っている組織に突入した」事しか分かりませんでした。

 「なぜ探偵が?」とか「依頼人は?」などの疑問も浮かびましたが、一切の説明はありませんでした。



【タイトル・キャッチコピーの批評】

 主人公の名前を前面に持ってくるスタイルのタイトルは、web小説では……というより、昨今の作品では珍しいですね。

 主人公の名前も語呂が良く、覚えやすくて良いと思います。


 ただ、主人公の名前以外の部分が弱いのが気になりました。特に「Alone」の部分ですね。

 文頭に持ってくるという事は、これが主題なのではないでしょうか? もしそうなら、存在感が無さ過ぎます。主題でないとするのなら、存在意義そのものが疑問に感じてしまいます。


 そして「元特殊部隊所属」の部分で、主人公の「過去」と「強さの理由」が説明されているのは良いと思います。

 しかし「過去」を説明していながら、「現在」の説明がなされていません。

 これはタイトルだけでなく、コピーでもなされておらず、あらすじでも探偵業などは出てきません。

 初めて物語を読む読者に、「現在の主人公」をどこかで紹介した方が良いと感じました。(作中の四話、五話になってようやく少し分かってきます)


 コピーの方は悪くないですね。

 短いですが、力強いワードで興味をそそられます。

 ただ、少しだけでも作品内容に踏み込んだコピーだったなら、もっと良かったと思いますね。



【キャラクターの批評】

 正直、キャラについてもよく分からないんですよね。

 本作は三人称で書かれているのですが、セリフが少なく、また心理描写も殆どありません。先に書いたように説明も無いので、「どういったキャラクターなのか」が分かりませんでした。



【文章・構成の批評】

 ハードボイルドな雰囲気の作品で、地の文の殆どは「雰囲気作りの描写」です。

 実際、「雰囲気だけ」は良く出ていると思います。が、文章は非常に拙いです。


 違和感のある表現、間違った表現、紛らわしい表現が散見され、せっかくの良い雰囲気もそれらが気になって浸る事が出来ません。

 これらは1話ごとに数カ所はあるので、作者さまは「おかしな表現」を探して修正なさる事をお勧めします。


 構成についてなんですが、恐らく作者さまは「洋画のような小説」を書きたかったのではないでしょうか? 序盤の、説明も無く唐突にアクションシーンから入る構成がまるで「アクション映画」のように感じました。

 これは決して褒めてはいません。当然ですが、「映画」と「小説」は別物です。表現方法が違うのですから、見せ方も変えるべきです。

(ここについては私の推測です。間違っていたらゴメンナサイ)


 そして、その最初の魚人たちとの戦闘ですが、良いとは思えませんでした。

 まず二話の殆どが戦闘シーンなのですが(4000文字弱)、常に「こうなった」「次はこうした」「それでこうなった」の繰り返しで、緩急がありません。途中で主人公がピンチにもなるのですが、それも「えっ? いつの間に?」と後で気付いたくらいです。


 特に、「主人公の強さの描写」が描かれていないのが問題だと感じます。ただ無事に生き残っただけで、「強いから勝った」のか「運が良くて勝った」かの区別がつきませんでした。

 これは「主人公の魅力」に関わる、大きな問題だと思います。



【ストーリー・設定の批評】

 ストーリーに関しては全く語れる事がありません。理由は【拝読したストーリーの流れ】で説明した通りです。


 設定ですが、作者さまの頭の中では、細かな設定が作られているのだと思います。その事自体は感じ取れました。

 しかし残念ながら、読者にはその設定が伝わりません。

 いくつか気になるワードも出てきましたが、説明も無く「当たり前にあるもの」として流される為、それが物語の伏線なのかどうかすら判別がつきませんでした。



【総評まとめ】

 雰囲気だけは素晴らしいと思います。しかし、それ以外の全てが「よく分からない作品」でした。そして唯一良かった雰囲気も、拙い文章のお陰で台無しです。


 問題点は、「文章力」と「読者に伝える説明」ですね。キャラの魅力を引き出す為の「心理描写」も重要だと思います。

 もし、この3点が高水準でなされていれば面白い作品に化けていたかも知れません。



【追記】

 本作は作者様の要望により9話までを読んで追記します。


 まず結果から申し上げますと、本作への評価は変わりませんでした。

 私が書いた3つの問題点は解消されておりませんので当然とも言えます。



 とはいえ、それで終わっては【追記】の意味もありませんので、ここからはいくつか気になった点を「こうした方が良い」「これは止めた方が良い」という私見を述べさせて頂きたいと思います。


 まず人や車などを、実在する人物や車の名称で例えるのはあまり良くないと思います。

 異世界であるという設定に疑問を抱いてしまいますし、そもそも知らない読者には何の事か分かりません。


 そして六話~八話までにかけてアクションシーンが続くのですが、敵役に魔法を使う中ボス的なキャラが出てきます。

 しかし特に主人公たちと会話する訳でも無く、問答無用で襲い掛かってきます。

 そもそも「なぜ襲われているのか読者にも分からない」状態なのですが、ここで中ボスが主人公たちに「ケースを渡せ」とでも話しかければ、スムーズに「ケースが理由で襲われた」事が読者に伝わりますし、敵味方双方のキャラの表現にも繋がったと思います。


 次は九話でのお話なんですが……、こちらは少し笑ってしまいました。

 黒幕的なキャラが、襲撃部隊の全滅報告を部下の通信士から報告される、というシーンなのですが、報告を聞いた黒幕は「……少し席を外す」と言って退出します。

 その後は部下たちの会話でシーンが続くのですが、僅か2~30行くらいで戻ってきてしまいます。作中時間も数分しか経っていないと思います。


 恐らくは文中では表現していない、何かの伏線なのだと思われるのですが、私が最初に思ってしまった事は「早いなっ⁉ 小便かよっ⁉」でした。

 まぁこの様な事を思うのは私くらいでしょうが、それでも退出した人間がすぐに帰ってくるというのは少し間抜けに映ると思います。



 最後に趣旨が少し違うのですが、九話での主人公のフラッシュバックのシーンは素晴らしかったですね。

 フラバの切っ掛けとなる唾が血に変わり、場所も現在の酒場から過去の戦場へ――。

 あまりにも素晴らしい導入だったので取り上げさせて貰いました。



 こんなところでしょうか。

 やはり問題点は「おかしな文章が散見される」「状況描写以外のあらゆる説明が足りない」「心理描写が足りない」の3つですね。

 「心理描写」については好みもあるでしょうが、他の2点については最重要課題だと思います。


 頂いたコメントの返信でも書きましたが、「読者が理解できるように、読者目線になって文章を書く」というのが1番だと思います。

 どうか作者さまが良い文章、良い作品を作られる事を心から応援しております。

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