31~40作品の批評

★1 血塗られた白羽は愛を知らない


タイトル:血塗られた白羽は愛を知らない

キャッチコピー:生き神と呼ばれた巫女とトラブルメーカーな神様による妖怪退治コメディ

作者:白鳥座の司書

URL:https://kakuyomu.jp/works/16818023212359722154


評価:★1


【あらすじ】

 今は昔。

 まだ日の本がヤマトと呼ばれていた頃。生き神と呼ばれる巫女がいました。生き神は神託を聞き、過去と未来全てを見通し、すなわち全知でした。

 それから巫女の一族には代々『生き神』が産まれるようになりました。始まりの巫女と同じ容姿。同じ声。似た性格。歴代の生き神は皆始祖の生き写しです。

 生き神が産まれる呪われた一族。

 名をば橘樹という。


 時は経ち、怪異は忘れられ化学が覇権を握るこの時代。四十代生き神として産まれた橘樹梓(たちばなあずさ)も生き神としての運命を全う……する気は無かった。



――私は私のやりたい事の為に生きたい。



 生き神としての生き方に嫌気が刺した梓は実家から逃走。京都で怪異退治のバイトをしながら大学に通う。そんな日常の中出会ったのは、謎の美青年。

 明らかに『ひとならざるもの』である青年は記憶喪失な上、何故か梓の夫を名乗る。


コウは何者か? 何故梓の夫を名乗るのか?

橘樹家が隠してきた秘密とは?



【拝読したストーリーの流れ】

 本作にはプロローグのような話がありましたので4話まで読んだ批評となります。(作中では数字のみでしたが、分かり難いので本批評では〇話と表記させて頂きます)



 生まれながらに『生き神』として育った主人公「橘樹梓」。

 そんな生活に嫌気がさした主人公は実家から離れ、京都の大学へと進学した。

 学校が休みの日は、家を間借りしている家主で叔父の「怪異退治」を手伝う日々。

 そんなある日、「怪異退治」の現場で知り合った青年「コウ」は主人公の事を「妻」と呼ぶのだった……、といったお話でしょうか。



【タイトル・キャッチコピーの批評】

 タイトルは、あまりよろしくないですね。

 このタイトルからは作品のジャンルが全く分かりません。ただ、なんとなくシリアスな作品なのだろうな、というイメージしか湧きません。


 そしてキャッチコピーは、明確に良くないと思います。

 文末にコメディとありますが、タイトルのイメージとの乖離が大きすぎます。

 タイトルと作風に合わせた内容に変更するべきだと思います。


 そして「主人公」と「コウ」を表した「2つの単語」を「と」で結んでいますが、これが分かり難いです。

 私の言葉も分かり難いですね……。コピーを使って例を挙げます。


生き神と呼ばれた巫女とトラブルメーカーな神様による妖怪退治コメディ

「生き神と呼ばれた巫女」と「トラブルメーカーな神様」による妖怪退治コメディ


 どちらが良いでしょうか?

 私は下の方が良いと思います。



【キャラクターの批評】

 キャラの言動に違和感を感じる部分が多く、「リアルな人間の反応」が出来ていません。これは「どこが」という話ではなく、「全て」です。


 そして、1話の時点で主人公の心の葛藤や迷いを見せるのは良くないと感じました。一番最初の段階でそれをされると、読者は主人公像が掴めません。

 まず最初は「主人公はこういうキャラだ」という事を「分かり易く」読者に伝えた方が良いでしょう。



【文章・構成の批評】

 文章は非常にキレイで、雰囲気が出ています。ここは素晴らしいと素直に思いました。ただ、問題点も多く感じました。


 まず読点が少ないですね。

 もう少し増やせば、格段に読み易くなると思います。


 そして、雰囲気の描写は素晴らしいのですが、戦闘などの描写が淡白で迫力や緊張感に欠けます。

 こちらはキャラのセリフに違和感を感じるのもあって、非常に残念な出来でした。


 あとは細かい部分に気になる所が多かったですね。

 1話での、電車の中で雨音が聞こえるとは、どんなどしゃ降りなんだ? とか、2話での「コウ」の初登場時、なぜ地の文での呼び方が「少年」「男性」「青年」とコロコロ変わるのか? などですね。


 そして構成なんですが……、この作品で「一番見せたいもの」って何なんですかね?

 プロローグで前世の様な夢を描写され、1話で主人公の回想と意味深な老婆。2話で妖怪退治と「コウ」との出会い。3話で叔父の家に帰り、4話でラブコメのような話を交えつつ次の依頼へ。


 流れ自体は悪くないと思います。

 しかし作風のせいか構成のせいか、作者が見せたいものが「とっ散らかっている」様に見えます。

 コピーの一文の事もあり、「この作者はラブコメを書きたいのでは?」とも思ってしまいました。

 しかし文章から受けるイメージは、シリアスなホラーか伝奇ものです。

 でも妖怪退治のバトルシーンなんかもあり、4話の流れを見るとバトルメインのようにも感じてしまい……。


 私には、この作品の作者さまが「あれもやりたい」「これもやりたい」を、1作に無理矢理詰め込んでしまったように感じました。



【ストーリー・設定の批評】

 ここは結構考えられていて、良く出来ているのではと思います。

 そもそも出てくる妖怪が、現実の妖怪をモチーフにしていますので、元々好きなのか、本作の為に調べられたのかは分かりませんが、1エピソードを作るのにもかなりの労力がかかっているものと思われます。


 主人公と「コウ」の設定も、恐らくかなり作り込まれているのでは、と感じます。

 恐らくこれが、本作のキモなのだと思われます。

 ただ4話の時点では当然ですが謎は分からず、その謎が「恋愛」「伝奇」「バトル」の、どの要素に大きく結びつくのかも分かりませんでした。



【総評まとめ】

 この作品を一言でまとめると「言葉の雰囲気と設定だけは良い」ですね。

 そして、この作品に足りないものは「ジャンルの明確化」と、「キャラのリアリティ」ですね。


 恐らく作者さまは、地の文にかなり気を使っていらっしゃると思います。実際、そのおかげで「雰囲気だけ」は素晴らしいものになっております。

 ただ、コメディの雰囲気とはかけ離れていますし、戦闘描写もお粗末でしたので、コメディ路線とバトル路線は諦めた方が良くないですかね?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る