★3 悠々と 絃鳴る心 命の葉 霧中に小さな 葵が八つ


タイトル:悠々と 絃鳴る心 命の葉 霧中に小さな 葵が八つ

キャッチコピー:四捨五入すると非日常。四と五の間を攻めてゆけ──

作者:とまそぼろ

URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330668071170427


評価:★3


【あらすじ】

あっさりしてて小っちゃい悠心(ゆうみ)。

大っきくて感情豊かな絃葉(いとは)。

優しさカンスト、いつでも穏やかな命(めい)。

奔放で自分のペースを乱さない小霧(さぎり)。

好奇心が尽きない、オモロを求めて生きる八葵(やつき)。


これはそんな5人の女の子が過ごす、なんでもない日常の1~2,3ページ。

5人で一緒に過ごせれば、プチ非日常も日常に──。



【拝読したストーリーの流れ】

 本作は、かなり特殊な構成の作品となっております。

 個性的な、5人の仲良し女子高生が日常をワイワイイチャイチャする話で、1話完結型のストーリーで描かれます。(1話はお寿司を食べる話、2話は夜にグループ通話での会話など)

 また、タグには「百合」とありますが、百合要素はそれほど強くはありません。むしろ、それを期待すると肩透かしを食らうかも?



【タイトル・キャッチコピーの批評】

 タイトルは、よく考えられたものだと思います。

 5人の主人公たちの名前を入れた短歌になっていて、オシャレだと思います。

 ただ、初見の読者にはそれは分からず、タイトルからは作品内容が全く想像できないのは大きなマイナスポイントだと感じました。

 個人的には「これ以上は無い」と思える程、良いタイトルだとは思うのですが、残念ながらweb小説では見向きもされないでしょうね。


 キャッチコピーも、作中の5人を表した深い言葉に感じるのですが、その意味に気付く読者は少ないと思います。(同時に作風を読み取る事も困難に思いました)

 こちらも個人的には素晴らしいと感じるのですが、web小説においては厳しいですね。


 正直、私はこのタイトルとコピーを見て、失礼ですが「地雷臭がする」と感じてしまいました。(本当に申し訳ございませんっ)

 作品に合った、素晴らしいタイトルとコピーなのですが「面白そう」と感じさせる要素が無い、というのが問題ですね。



【キャラクターの批評】

 キャラクターは5人ともが非常に個性的で、ただの日常を非常に面白おかしく展開してくれます。


 ただ個性的ではあるのですが、1話の時点で既にグループは出来上がっており、最初から5人ものキャラを把握する事は読者には困難だと感じました。

 一応、人物紹介も1話の前に書かれてあるのですが、それを読んでもキャラの名前を把握する事から、出来る読者は少ないと思います。


 作品のテーマやスタイルとは異なるのだとは思いますが、最初は2人か3人で、少しずつキャラを増やしていく展開の方が読者には理解し易かったと思います。



【文章・構成の批評】

 この作品は本当に特殊で、まず最初に「話のお題」に合わせたキャラ紹介から始まります。(1話の寿司の話なら、このキャラはどんな寿司が好きか、など)

 そして地の文が無く、ほぼ全てキャラのセリフだけで話が進行します。


 私は以前に「ほぼセリフだけ」の作品を目にする機会がありましたが、その作品は、ただ地の文が無いだけで何が起きているのかが全く分からない作品となっておりました。

 しかし本作は日常系というジャンルも手伝ってか、そこまで細かい描写を必要とせず(上記の作品はバトルファンタジーでした)、個性的なキャラの掛け合いだけで十分に楽しめるものとなっています。


 ただやはり描写が無いという事で、特に読み始めは「誰が誰だか分からない」という状態にはなりました。(セリフの前にキャラ名は書かれているのですが、頭には入りません)

 しかしそれでも、キャラの区別がつかなくても読み進められる程にキャラ同士の掛け合いが面白く、また読んでいく内にキャラの区別もつくようにはなりました。


 ただ、所々で寸劇が入り突然キャラの口調が変わったり、そもそもキャラによって他キャラへの呼び方が違うなど、キャラの把握への障害を無闇に増やしているのは良くないと感じましたね。

 それが作品のリアリティを上げているのは理解できますが、それに対するデメリットも大きいと思います。



【ストーリー・設定の批評】

 こちらは1話完結型の話が続く作品なのですが、その1話1話が良いですね。

 日常系なので、それほど大した事件は起きないのですが、それも1話ごとに設定された「お題」に沿って5人がお喋りしているだけで楽しい物語となっています。

 適度にファンタジー要素があるのも良かったと思います。


 ただ……、「百合要素」は要らなかったんじゃないですかね?

 作中でも「それがあるから面白い」とは感じませんでしたし、そもそも百合要素は殆ど感じませんでしたから。

 一定需要があるのは確かですが、それ以上に「敬遠される」可能性の方が高いように感じます。



【総評まとめ】

 本作をまとめると「作者とキャラの個性が凄いっ! でも作品の見せ方が良くない」ですね。


 私は先に述べた通り、タイトルとコピーを見て「地雷臭」を感じました。

 本批評内の「あらすじ」では載せておりませんが、作品紹介や注意文として「タイトルは‪”‬悠絃命霧葵‪”‬とお憶えください」や、「本作の書き方の性質上文字数が多くなる場合が多くなると思いますが、読む分には読みやすい文字数となっております。お気軽にお読みください」などの言葉がありました。


 タイトル以上に覚えにくい略称を推奨したり、「文字数が多いのに、読み易い文字数」という言葉には、本編への不安感が募りました。


 「百合要素」と合わせて、これらの事から本作を「見てみよう」という気にならない読者は少なくないと思います。


 私は評価に★3をつけた通り「本作は面白い」と思いましたが、今回のような機会が無ければ「絶対に読む事は無かった」でしょう。

 一度、この辺りを見直してみてはいかがでしょうか?

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