★2 大魔王の孫娘×老いた剣豪の下剋上 ~ 居合の神は、魔族の姫君の王配(保護者)となる


タイトル:大魔王の孫娘×老いた剣豪の下剋上 ~ 居合の神は、魔族の姫君の王配(保護者)となる

キャッチコピー:仇討ちの標的は、裏切り者の魔族と人間の勇者か……よし、手を貸してやろう

作者:鈴ノ村

URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330655019464186


評価:★2


【あらすじ】

 最後の大魔王ルシウスが、勇者によって討たれ、魔族の脅威のない世界となった。

 勇者の生まれ故郷である聖王国の都にて、一人のダークエルフが剣闘奴隷として活躍していた。


 彼女の名はルシア。彼女の正体は、大魔王の孫娘だった。

 勇者や裏切り者たちを憎悪しつつも、奴隷の首輪に囚われた彼女のもとに、一人の老人が現れる。


「お前さんは、その生き方で満足なのか?」


 そう諭す老人の前世は、戦国時代において『居合』の始祖となった侍。


 奴隷としてくすぶった大魔王の孫娘のもとに、下剋上の時代に生きた侍が手を差し伸べ、彼ら二人の『下剋上』が開幕するーーー!



【拝読したストーリーの流れ】

 大魔王「ルシウス」が勇者一行に倒されてから4年後。「ルシウス」の孫娘「ルシア」は聖王国の奴隷となり、闘技場で戦う日々を過ごしていた。

 そんなある日、「ルシア」は自分と同じ剣闘奴隷の老人と出会う。

 「ジン」と名乗るその老人は、異世界からやって来た剣豪「林崎甚助」だった……、といったお話でしょうか。



【タイトル・キャッチコピーの批評】

 タイトルは基本的には良く出来ていると思います。

 作品の特徴をよく表しながら、目を惹くようなワードも入っていると思います。

 ただ、気になった点が2つほどありました。


 1つは、間の「~」に違和感を感じました。

 恐らく、サブタイトルとの区分けだとは思うのですが、それならば「下剋上」のあとに空白を設け、最後の「となる」の後にも「~」をつけた方が、よりハッキリと区分けされます。


 もう1つが、この作品の主題が分からなくなってしまっている事ですね。

 主題と書きましたが、この作品の場合は「主人公」です。

 メインタイトルでは「ルシア」「ジン」の順ですが、サブタイトルでは「ジン」「ルシア」の順で書かれています。


 恐らく「2人とも主人公」のつもりなのだと思われますが(人物紹介では2人とも主人公と紹介されてました)、読む前の読者にはそれは分かりません。

 この作品の「核」が一体どこにあるのかを表現した方が良いと考えました。


 キャッチコピーは、恐らく劇中のセリフですね。(5話ではそこまで進行しませんでした)こちらは、かなり良いと思います。

 短いコピーの間で、主人公の人となり、仇討ちという目的、更に魔族と人間の両方を敵にする、と様々な情報が示唆されています。



【キャラクターの批評】

 序盤から結構な人数のキャラクターが登場するのですが、どのキャラも良く個性が表現されて、ゴチャつく事は全くありませんでした。

 どのキャラも、よく作り込まれています。


 特にですが、主人公の1人「ジン」こと「林崎甚助」は実在の人物なんですよね。(私はこの作品を読むまで知りませんでしたが)

 恐らく、「林崎甚助」の歴史や逸話を調べられたのだと思います。非常に感服しました。


 ただ、こういった逸話が実在するのかどうか分かりませんが(そこまで調べきれませんでした)、150cmほどの「林崎甚助」の愛刀の刃渡りが100cmもあるって本当ですかね?(こちらは作中で書かれてました)

 それでは抜く事すら至難でしょうし、ましてや居合なんて……、と思わずにはいられませんでしたね。

※こちらの件、読者さまからコメントで指摘を頂きました。

 大太刀での抜刀術なんてあるんですね。勉強になりました。

 作者の鈴ノ村さまと、本作にはご迷惑をお掛けした事をお詫び申し上げます。



【文章・構成の批評】

 文章も非常に読み易く書かれています。

 細かい所では気になる点もいくつかあったのですが、概ね問題無かったと思います。


 構成も良かったと思います。

 1話で「林崎甚助」という剣豪がいた事をモノローグ調で語り、2、3話で「ルシア」の現状と、世界の説明。4話で「ジン」と出会い、5話で「ジン」が異世界にやって来た理由を描写。

 しっかりと見せるべきものを見せ、しかもテンポも良かったです。1話の文字数も多くありません。



【ストーリー・設定の批評】

 ここに本作の最大の欠点があります。

 主人公である「林崎甚助」が異世界へとやって来た理由、それが雑すぎます。


 「ルシア」の祖先「ルシファー」が「林崎甚助」を異世界に転移させたのですが、私には「ルシファー」の考えが全く理解できません。(6話以降で「実は……」という話があるかも知れませんが)


 物語のキモといえる、「実在した人物が異世界転生した」理由がこんなに雑では、ハッキリ言って萎えてしまいます。

 個人的には「トラック転生」よりもヒドイと感じました。


 設定は非常によく作り込まれています。

 エピソードの最初に、地名や登場人物のエピソードが作られている辺り、設定には凝って作っているのだろうと思われます。


 ただ人名や地名が、実在の神話や地名からとられている事が多いようなのですが、主人公が実在の人物である事がノイズにならないかが、少しだけ疑問ですね。

 とはいえ、5話時点では登場していませんので言及はしませんが。



【総評まとめ】

 全体通してハイレベルでしたね。

 ただ1点、「林崎甚助」の転移理由だけが非常に残念ですね。

 ここさえマトモなら、★3でした。

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