★1 散り際の月光:Fading Moonlight ―祟りの果てに聖剣を―
タイトル:散り際の月光:Fading Moonlight ―祟りの果てに聖剣を―
キャッチコピー:夜空に月が昇る。それこそが彼らにとって剣を手に取る合図だ
作者:幸さん
URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330666673190003
評価:★1
【あらすじ】
19世紀ヨーロッパをモチーフとした世界のある孤島が舞台。古代遺跡と超常的な資源が発見され、一時は栄華を極めたものの、正体不明の病が蔓延してしまった。感染者は狼人間化して、夜な夜な他の人間を喰い殺す。今では、島は諸外国から封鎖されている。
そんな中、病を根絶するために狼人間を狩り続ける戦士たちが主役だ。
【拝読したストーリーの流れ】
本作は第1話と第2話が、それぞれ前後編に別れています。また第0話もあったのですが、こちらは雰囲気を伝える詩のようなものでしたので、第3話までを読んだ批評となります。
非常にダークな雰囲気の、近代ヨーロッパ風の異世界ファンタジーです。
「ドリフト諸島」と呼ばれる舞台で、「祟り」に侵された「憑き物」と呼ばれるバケモノと戦う戦士たち。
そんなある時、倒した「憑き物」の胎に生命が宿っている事に気付く。
「憑き物」の胎から出てきたのは、銀髪の少女だった、といったお話です。
【タイトル・キャッチコピーの批評】
タイトルはあまり良くないと感じます。
このタイトルからでは、作品内容はもちろん、作風であるダークな雰囲気も感じられません。キャッチーなタイトルでも無く、これでは読者の獲得は難しいでしょう。
キャッチコピーにも同様の事が言えます。
こちらでは少しだけダークな雰囲気は感じるものの、それでも弱いです。
そもそもダークファンタジー自体が、ややニッチなジャンルですので、そこをアピールするのなら「ダークファンタジー好きなら絶対に見てしまう」というような、強烈なコピーが必要だと思います。
こだわりが無いのでしたら、タイトル・キャッチコピー、両方とも根本的な変更を勧めます。
【キャラクターの批評】
3話までの主な登場人物は、戦士「アシュレイ」、アシュレイの師匠「ローレンス」、そして「憑き物」から生まれた少女の3人です。
「アシュレイ」のキャラは良いですね。
師匠に振り回されながらも付き合う、人の好さが出ています。「このキャラが主人公でよいのでは?」と考えてしまうくらいです。(主人公ではないらしいです)
「ローレンス」も基本的には良いキャラだと思います。
ぶっきらぼうで、口数少なく、淡々と任務を遂行する雰囲気でしょうか。
ただ3話という序盤で既に、精神的な脆さなどが表現されてしまっています。こちらは、もっと話が進んでキャラを深堀してからでも良かったのでは、と考えてしまいます。
「少女」に関しては、何とも言えません。
生まれたばかりの筈なのに、外見は14、5歳で、ハッキリとした自我があり、言葉も話す。これらには当然、違和感を覚えましたが、何かしらの伏線なんでしょうかね。
【文章・構成の批評】
文章は基準値以上だと思います。が、空行が少なく読みにくいです。
また「思わせぶり」な表現が多く、伏線なのか、何かの暗喩なのか、ただの雰囲気作りなのかが分からない箇所が、全編通じて書かれます。
また、本作は一人称で書かれているのですが、作風には合っていないと感じました。丁寧な描写でダークな雰囲気を出しており、一人称にした所であまり読み易くも感じませんでした。
それに視点がコロコロ変わるのも読みにくくしている要因です。特に序盤は、あまり視点を変えない方が良いでしょう。
ここからは構成となりますが、まず1話の前書きにある「空行説明」ですが、要りません。というか、そんなものが無くても読者に分かるように書きましょう。
読者は、「空行が、2行か3行か」なんて気にして読みませんし、読者にストレス無く物語を楽しんでもらえるように書くのが作家の仕事だと思っています。(素人ですが)
同様に、読者に「無暗に考えさせる」ような表現は避けましょう。
先程「思わせぶり」な表現が多いと書きましたが、私はその度に読む手が止まってしまいました。少し読む度にこれでは、読む事自体がストレスになってしまいます。
最後に、第1話の戦闘シーンはキチンと描写しましょう。
ストーリーでは戦闘があったのに、そのシーンが描写されていませんでした。
読者全員が、とは言いませんが、多くの読者は「戦闘シーンの見ごたえ」を楽しみにしている方が多いと思います。
せっかくの最初の見せ場なのですから、ここでカッコ良く、あるいは凄惨なシーンで読者を惹きつけないでどうするんですか?
【ストーリー・設定の批評】
何度も書いていますが、ダークな雰囲気が凄いです。
ストーリーも、序盤を読んだだけで「安易なハッピーエンドにはならないぞ」という作者さまからのメッセージが聞こえてくるようです。
設定も作り込まれていて、ダークファンタジーのお手本のような世界観だと思います。
ただ、ここまで作り込まれているのですから、「戦士」には何か、固有名称が欲しかったですね。
※作者さまよりご指摘のコメントがあり、戦士には「弔い」という名の固有名称がありました。
完全に私の見落としです。人様の作品を批評させて頂く上であってはならない失態をしてしまいました。
作者さまと本作には深くお詫び申し上げると共に、私自身は猛省して参りたい所存です。
あと、用語解説のようなものが話の最後に入れられているのですが、個人的にはストーリーの中で説明して欲しいですね。
きっと解説を読んだだけで把握して下さる読者はいませんし、解説を読んだ後に、上にスクロールして再確認する必要が出てきますから。
【総評まとめ】
非常にレベルの高いダークファンタジーだと思いました。
ただ、
「読者の気を惹くタイトル・コピーではない」
「いちいち読む度にストレスのかかる、思わせぶりな表現」
「折角の見せ場である、戦闘シーンのスキップ」
この3点が特に問題に感じました。
これら以外の問題にも共通して言えるのは、「読者を意識して作れていない」事ですね。
作者さまには今後、「読み手」を意識して執筆してもらえればと思います。
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