1~10作品の批評
★1 異世界コント④ カルネアデスの板
タイトル:異世界コント④ カルネアデスの板
キャッチコピー:なお、その後の主人公はチートのおかげで無傷で生還できたようです。
作者:円 一
URL:https://kakuyomu.jp/works/16818093073698537159
評価:★1
【あらすじ】
女魔法使い「離しなさいよ!」
僕「絶対に離さないで!」
男戦士「離さないから!」
三者三様の叫び。
一体、何が起きたのか。
【拝読したストーリーの流れ】
本作は1話完結の短編です。
主人公が異世界に転移したかと思えば、そこは崖で、男戦士、女魔法使い、主人公の順で数珠つなぎに宙吊りになっていて、その理由と顛末を描いたお話です。
【タイトル・キャッチコピーの批評】
まずタイトルに④とナンバリングを振るのは、個人的にはあまり良くないと感じます。
なぜなら、その数字だけを見て「続きもの」と勘違いをする可能性があるからです。「前作を読まないと話が分からないなら見ない」と思われる方もいらっしゃるでしょう。少なくとも、私はそのように考えてしまいました。
キャッチコピーですが……、これだけを見ると意味不明ですね。
コピーとは、あくまで読者様に気付いてもらい、読んでもらう為のものと私は認識しています。
しかしこのコピーは、作品を読んだ後でないと意味が分からない。これでは役目を果たせません。変更を推奨します。
【キャラクターの批評】
本作は少し変わってて、キャラに固有名称が存在しません。
登場キャラは3名。「僕」「男戦士」「女魔法使い」です。これは短編という短い間の中で読者に理解のし易い、良い配慮だと思います。
ただ、詳しくは後述しますが、どのキャラも魅力的とは思えません。
なぜなら「僕」は巻き込まれただけであり、巻き込んだ2人はあまりにも身勝手だからです。
果たして彼らに好感を持つ読者はいるのでしょうか?
【文章・構成の批評】
文章はレベルが高く、読むのにつまづく所はありませんでした。
冒頭の、「セリフの後に空行を設けず地の文を書く」というセオリーを無視した書き方も、あえてそうしたテクニックだと感じました。
対して構成は少し厳しいですね。
いきなり宙吊りになっている所から物語が始まりますので、「起承転結」の「起」がありません。その後に「起」の説明が入るのですが、それまで読者は状況の認識が難しいと思います。
そして作中に「結」が無いのも問題と感じます。
この作品は、なんとキャッチコピーに「結」を持ってきています。そのアイディアは素晴らしいと思うのですが、この作品を読んだ読者の何人がそれに気付くと思いますか? 私は批評を書いている最中に気付きました。
【ストーリー・設定の批評】
ストーリーについては酷いと言わざるを得ません。
【キャラクターの批評】でも書きましたが、「戦士」は「僕」に興味が無く、「魔法使い」はあまりにも身勝手です。
では、主人公の「僕」に魅力があるのかと問われれば、ただ2人に巻き込まれただけで終わるので好感の持てるエピソードが存在しません。
何より酷いのは「ただ主人公が巻き込まれた」という、本当にそれだけで物語が終わってしまう事です。
ハッキリ申し上げて、読後感は悪いです。
設定についても厳しいですね。
タイトルにもある「カルネアデスの板」ですが、私には誤用をしているようにしか感じませんでした。
作中で「緊急避難」を持ち出す為に「カルネアデスの板」を引用されていましたが、「女魔法使い」がやっている事は「殺人」か「無理心中」と呼ぶべきものでしょう。それを無理に「男戦士」に当て嵌めるのも、発想が飛躍しているとしか思えません。
【総評まとめ】
文章力と、発想力は良いと思います。
ただ、思いついた発想を形にする事だけを考えて「読者を楽しませる」という事を忘れてしまっているように感じましたね。
タイトルに「コント」とありますが、この作品を読んで何が面白いのでしょう?私には面白いと思えるシーンは1つもありませんでした。
一人称で書かれていましたが、それは「読者=主人公」の図式を生みやすくなります。
主人公が「あのような」結末を迎える物語……。
はたして、この小説を読んで笑っているのは誰でしょうね?
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